ダンジョンへ行こう
安静させていたので、流石にポンコツの体調は良くなっていた。
「ダンジョン行こうよ。近くにあるんだって」
「もう一日ゆっくりさせてよ」
「財布が空になっちゃうよ」
ウソですけどね。
まぁもう一日ぐらいゆっくりしてもいいかと思っていたら、昼食後冒険者らしくない格好でショッピングに連れ出された。
コレ卍で財政ソコつくよ。
その夜、説教タイムをしっかり取ったことは言うまでもないだろう。
のれんに腕押し、糠に釘なのは推して知るべし。
次の朝、装備を付けてギルドに来ています。早朝組の集団が退いた頃をねらっての時間、改めて常時依頼を確認しておくのだ。 それと常時依頼で町の外に出るって証明書作ってもらわないとね。
町の北西門を出るとギルドの案内係に訊いた小高い丘が見えた。山かな。まぁいいや。
中腹ぐらいにあるらしい。
道らしいモノはなく、途中途中に人為的な目印があってソレを目標にして進んでいく。
わしもナニか残しとこう。立木などに掌をペチペチして進む。
うん、街を出た当たりから連けられているのかな。わしのサーチの端っこにマーカーを持ったのが植えたり減ったりしている。 距離も近づかず離れずってトコだけどわしのサーチレンヂだ。
出方を見るためにAFCには不審者がいても十分に離れて手出ししないように言ってある。
それは昨夜、しこたまニンニク増量のキョーザを太良枠喰わせながらだ。
キノコとか植物とかの常時依頼品を見つけると収集し進んでいると、石組みの地下入口が見えてきた。
「ママ、アレだね」
「・・・そうね」
肩でも息をして、脚にも来ているのだろ。下りのほうが大変だけど登りも疲れるのは認めます。
「おしっこする」
入口の手前でパンツを下して開放感を味わう。
流れていく水音に木々の間から聞こえる小鳥の声。
うーん、わしは今ここに生きてるんだぞーっと、叫びたい気分だ。
ダンジョン前でヲタ村ダンジョンで手に入れたカードを握り他人には見えないバーチャルコンソールを開いて、設定を変えた。
あっ力が入りすぎた。ウンチも出そうだ。えーい、やっちゃえー。
右手で水魔術と左手で風魔術を使いポータブル洗浄・乾燥機だ。ウンチに土をかけるのを忘れない。でもわし、犬じゃねーし。
手の雫を飛ばしながらさっとパンツを上げた。
「ママ、行こうよ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ。も少し休んでからにしようよ」
「ダーメッ」
追跡者に中まで追いかけられたくはないからね。2人指定のIDに指定しておいたから、3人目は弾かれて別空間になるけど気づかれたくないんだ。
それともう一つ、町を出る前から気になる点があったので、AFCには約束の時間が来るまで別なところに離れていてもらうことにしている。
このダンジョンは、自然に出来た洞窟を利用して作られたみたいで、モンスターもムシとかは虫類、コウモリとかが多く大きなモンスターは少ない。IDを選択するときに、貯まっていたダンジョンポイントを支払ってエンカウントを極力少なくしておいたからポンコツでも採取場所まで到達できた。
まぁ多少の悲鳴とかは許すが、涙、鼻水は勘弁してくれ。わしの服で拭くんじゃないぞゴルアっ。
なんせ灯りもなく、自前のランタンで足下と進行方向を照らしながら進んでいかねばならなくて、ちょっとしたキモ試しやお化け屋敷の雰囲気だ。すがりつかれるのはわし。何度も絞め殺されたことやら。
コイツ、本気で脅かすと簡単にお漏らしするからなぁ。
途中の照明で明るいセーフティゾーンでは、数体のレプラコーンが売店の売り子をしていた。体の小ささを数で補ってんだね。
キーキーと耳に優しくない高音でやりとりして、目的地までの道順確認と一休みすることにした。
だってポンコツがおねだりするように、すがりついてくるんだよ。地上でのあのママっぷりはドコいったんだよ。
椅子とテーブルがあり、簡単な軽食と飲み物をクズ魔石で支払った。
到着した採取場は小学校の運動場ぐらいの広さがあって、片側には地下湖から流れてくる川に繋がり釣もできる。今日はしないけどね。
ここでは水回りも良く嫌光性の植物などが多く育っている。最大目標には届かないけど、最低ラインは越えたから、採取と休憩を繰り返して時間をつぶしセーフティーゾーンへ戻ると町には、早朝に着くように仮眠テントを借りて未明にそこに出発した。
出口までの帰り道もまだIDが活きているようで、追跡者と鉢合わせになることもなく、外の空気を感じられるところまでやってきた。
あー、お出迎えがいるようだ。
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