魔法迷宮 七章後半
魔神伝説の真実(一旦)だけでなく、月の民の歴史含めた失われた古代魔導文明の記録や星暦の始まりについての記載情報を解析した。、
イクサムは復元と解析に時間が掛かりすぎ、丸二日間封印区画に篭り続けた。
十三日の早朝に都市へと帰り、ユイヅキに記録された情報の記録が現代にも残っているか調べ始めた。
・福音戦士と呼称された黒い機動兵器が月面都市勢力の切り札的防衛兵器のひとつだった事実。
・魔導戦争時にはまだ残っていた月勢力が管理していたフランベルなる宇宙港含めた軌道施設。
・魔王軍所属の魔導生物と協力して復活した福音戦士修理施設と、魔神なる連合側が生み出した別の魔導生物の最終情報。
・魔導戦争時代最終局面にて復活した神兵なる古の惑星生物浄化兵器と、当時月の民が管理していた軌道掃討砲なる遺跡。
イクサムは行政区の南端の行政区南横断道路沿いにある放送資料記念館と南大陸文化保全協会の資料(図書)室で記録を漁り、中央記念公園内の東側に在るセフィーナ歴史図書館と西側の博物史資料館へと足を運んで調べた。
セフィーナ塔に近い場所を中心に魔導端末ユイヅキを主に活用して調べたが、一般に認知されている情報以外に目ぼしい情報は無かった。
イクサムは午後に過激座へと移動し、雑務を終わらせると再び中央記念公園に移動し、閉館時間の午後八時まで資料を漁った。
翌日の十四日。朝からイクサムはやはり人柱達と共に機械島へ移動し、午前中の間に人柱達がオートムの遺跡を探索する様子を観察。人柱がそれぞれの魔法演舞を習得する第三段階の「演舞開花」に移行した事を確認。光の槍を発動する時が近いと知って、迷宮核の位置特定を急ぐと決めた。
同日の夜。イクサムは借り部屋が在る船場通りで唯一、十五日。イクサムはセフィーナの西の六十キロ地点に在る自然保護区内の旧防衛都市の「ナーヴァ遺跡都市」のナーヴァ天文台に電話をかけ。ナーヴァ天文台の木下所長に落下物監視稼動中の電子式ナーヴァ望遠鏡でゼノン星海管理局施設の観測を依頼した。しかし所長は対象空間が軍管理空間だと指摘し、望遠鏡で見るには許可が必要だと応えた。イクサムは軍が管理する理由を聞き、今もセフィーナ含めた北部沿海地方の西側大半が軌道落下物迎撃用の迎撃誘導弾上昇軌道に含まれている事実を教えた。そしてセフィーナ上空の超高度を漂っている衛生施設の残骸が多く、望遠鏡でも星海管理局駅が在った場所は見えないと伝えた。
イクサムはザガートの様子を見る為に機械島へ上陸。事実上放棄された封鎖区画に侵入して、監視機改の監視網を抜けて封印区画に作った扉を開けた。生体結晶と構造が似ているザガートの制御核に残された情報を参照しながら、復活した神兵なる人型の敵や月の民が管理していた軌道掃討砲が落下した予測位置を割り出していると、ユイヅキが機密指定された極秘情報の鍵を解く事に成功する。
ザガート制御核に構築された隔離回路には、かつてこの機体に搭乗して魔導戦争を戦った黒の神官の音声記録が残されていた。黒の神官は自らをザガートと名乗り、魔導戦争勃発前までフランベル要塞の守護に就いていたと回想を話し始めた。
回想の始まりは自らの紹介とこの記録を残す理由から始まり、魔導戦争での戦闘記録や共に戦い散った魔法騎士達の映像記録等を残す目的。後世に再び魔導戦争が勃発しないように戦争が勃発した経緯と、自称魔族が掘り起こした遺跡が、月の民が三千年七百年前に滅ぼした本物の魔族の本拠地だった事を告白。神兵を討つ為に戦った魔神の捜索が始まる事と、戦後に黒の守護者(福音戦士)を地上に配置して残った文明を魔導生物の成り損ないから守る為の結界発生装置とする計画が始まったと告げる内容だった。
イクサムはユイヅキにこのメッセージが以前にも開示されたかどうか聞いたが、音声情報以外の破損が激しく解析が困難だと、復元に時間を要すると回答する。
イクサムは日付が変わってからも修復作業に魔素を注いだが、制御核の修復率は半分までしか回復できなかった。
そのまま十六日の正午前まで踏ん張り何とか生体維持機構だけ復活させて劣化魔素の放出を止める事に成功し、都市に帰還し過激座で雑務をこなし小時間休憩した。
休憩が終わって干した洗濯物(自分のも)を回収してから誇りや汗を流そうと風呂の準備をし始めたとき、探索街独特の様々な方言や訛りが組み合わさった言葉を話すアカネ・ミクジラと話し、最近忙しくて会ってない妹の活動調査を三千Gで頼まれた。
イクサムは変わりに雑務の一部をアカネに代理させ翌日から三日間、人柱達の集中観察と並行してザガートの修復に励もうと決めた。
十七日。イクサムはユイヅキ用の備品を背嚢や旅行鞄に詰めて人柱達と共に卵島に上陸。虚構世界のアゼットに侵入した人柱をユイヅキに追跡させ、人柱達が周囲の浮遊岩礁や離れ小島を探索する様子を観察する。結局同日の午後四時まで迷宮端末部屋に篭り続けたイクサムは、ザガートを復活させて封印区画を破壊して星海へ上がる前に人柱達が覚醒すると判断。魔法乱舞の多重処理を逆手に取った対虚構世界用浸食魔法の「光の槍」が発現するのを遅らせようと決めた。
イクサムは人柱達が決めた帰還時刻より三十分早くセフィーナ漁港へ帰還し、干渉型信号陣に「解析処理機能操作機能」を追加した。
十八日は人柱と共に機械島し、人柱が虚構世界に入ったのを確認してユイヅキをザガートの下へ置いてから予備の携帯式魔導端末で三人を追跡した。同日三人が虚構世界から出たのを確認してユイヅキを取りに要塞深部に戻り、ザガートの神経回路が制御核と繋がった事を確認して人柱達より遅れて都市に帰還した。
十九日は月輪島からホーライへ入り、魔法騎士達は迷いの森内に有る地下遺跡の入り口が有る遺跡を探索し始めた。順調に探索は進み、魔物の死骸や露出した地層に出来た魔石を回収していると、突如遺跡内に白い靄のような霧が入って来た。三人はすぐさま迷いの森が彷徨いの森へと変化したと判断。遺跡から出ず探索して遺跡内の魔法の輪か転移装置から街に出ようと考えた。
三人は霧によって変化した魔物に苦戦し何度も個人技最強技の魔法乱舞を使い消耗する。ホーライ大地の地下に有る遺跡迷宮は島外と繋がっているので、転移門を諦めて外へ続く水路から岩礁帯に出ようと画策した。
三人は水路を塞ぐ霧の使徒を撃破する際、それぞれの魔法乱舞を合わせて狭い水路ごと吹き飛ばした。その結果一時的に最終奥義の光の槍が顕現し、三人は迷宮保護措置によって隔離空間に飛ばされてしまった。
イクサムは予期せぬ槍の発現によって姿を消した人柱を探し、時間が経過してからユイヅキが隔離場所を割り出した。映像画面に映ったのは真珠貝の貝殻らしき玉座に座った金髪の少女と人柱達で、音声を拾えず会話内容が解らない。
金髪の少女が管理存在だと推測したイクサムは、予定より早いが三種の神器に仕組んだ「干渉型信号陣」に追加した解析処理優先命令を実行させる。
映像画面に映っていた少女が一人づつ転送されたのを最後に、擬似魔核から送られて来た映像が途絶えた。イクサムは少女達が管理者と何かしらの取引を行ったと判断し、少女達が戻って来るまでにザガートの修復を完了させようと機械島へ向かった。
二十日の正午頃に食料や資材調達の為に都市へ帰還。通信端末からアカネに妹がホーライ内で発生した霧によって消息を絶った事実のみを伝え、捜索の為に端末から遠隔支援をすると約束した。
アカネは遠心加速器の製作を中断し、イクサムの支援の下で数人の探索者と共に虚構世界に入った。イクサムから三人が地下迷宮から露出した岩石層側の出入り口へ向かったと聞いているので、飛行船で地表下船着場へと降りた。
アカネはイクサムから聞いた爆発地点に辿り着いたが、修復が始まった地下水路の破壊痕には何も無く、霧の使徒から出る戦利品すら落ちてなかった。一行は周囲を探索して三人を探したが、遺留品が見付からず三人が雲海に落ちて自動的に地上に飛ばされたのだと判断して現実に帰還した。その矢先空から浮遊島三島の中心海域へ降り立った大型飛行物体の存在をユイヅキが察知する。イクサムは急ぎ端末室からでて木の上に登ると、十数キロ先の海上空で人型の何かが滞空している。
第十七話「浮遊島」
第十四話「呪いは福音」第十五話「楽園を継ぐもの」が前半。
第十六話「そして偽る者」第十七話「浮遊島」第十八話「軌道要塞のシャンデリア」第十九話「管理存在と覚醒者」第二十話「緑の守護者」が後半。一話三万文字。
【魔導騎士物語】
浮遊島に迷宮核なんて無かった。迷宮核は高度三百キロメートルの静止衛星軌道上に位置する偽装司令塔に有り、司令塔とセフィーナ塔と浮遊島の結界装置を利用した大規模魔導干渉結界が迷宮と魔導通信網を担っていた。月輪島の亀裂を封印するために建てられた神殿。機械島の奥底に封印された福音天使から漏れる不活性魔素を封じる為(これで海獣を誘き寄せるのが目的)の要塞。そして卵島に封印されたフランベル動力機関。
海獣の生体結晶を魔法騎士が偽装司令塔のフランベルへと集めた結果。浮遊石が完成して墜ちた浮遊島が浮上した。浮遊島は上昇を続けながら合体し、宇宙空間で軌道要塞フランベルが完成する。
エメロードの目的は地上に蔓延した魔素の完全浄化。軌道要塞フランベルは元々宇宙港の防衛施設だったので、反属性中性子の浄化装置を有している。そして魔素を浄化すると地上生物の大半が死滅してしまうので、エメロードには現代人と適合した魔神の魔導因子情報が必用だ。これを得るためにエメロードは収穫と言い三人を拘束する。
エメロードは宿願を果す為に魔導騎士を捕えるが、イクサムが操る福音天使ザガートによって救助される。魔素浄化の為に必要な魔導因子情報を入手したエメロードは軌道要塞フランベルを高度五百キロメートル地点へと上げ、デブリ軌道内に隠れて対宇宙ミサイル群から要塞を守った。
イクサムに救助され気絶したまま夜の浜辺に運ばれた魔導騎士達。自分達がどうして此処に戻れたか知る手掛かりが無く、魔神を読んでも来ないのでシャングリラ城(軌道要塞の中心)に捕えられたままだと理解した。つかの間の平穏を得た魔法騎士達だったが、魔法迷宮が閉ざされ虚構探索が出来ないと知り、自力で空
(宇宙)へ上がろうと魔神水晶を融合させる禁断の技を発動させる。魔法騎士の最終奥義であるその力は魔神の存在あって初めて成功するものだったが、エグザムが仕組んだ「光の槍」の魔導因子消滅魔法が干渉してザガートを呼び寄せてしまう。
三人は黒の福音天使に搭乗して宇宙へと上がった。宇宙では各国がフランベル対策に秘密裏に隠して来た破壊衛星とフランベルの戦闘が始まっており、夥しい数の宇宙ゴミの中をつい気抜け要塞へ魔神を取り返しに向かった。
三種の神器。迷宮に吸収させ居るであろう死神を誘き寄せる為の死の罠。同時にこの神器に死神を吸収させユイヅキを強化する為の素材候補。
適応第一段階「最適化」第二段階「能力発現」第三「演舞開花」第四「光の槍」
魔神伝説の真実。
星暦5013年に勃発した魔族独立戦争により連合諸侯軍が各地で敗退。勃発から一年と半年後に南大陸が魔族の侵略を受ける。
戦争は魔族側の戦線拡大で長期化するが、十五年の冬に東大陸の半分が魔族勢力に支配されたのを皮切りに侵攻速度が速まり、魔導生物に対抗する数々の試作兵器が投入され始めた。
当時生還していた月の民達は、魔導生物兵器エグザムが封印された古代技術により甦った災厄だと知り、連合側諸勢力へと福音天使を派遣した。
全部で五機の福音天使はエグザムと同じく禁じられた(銀河文明時代の)古代技術によって造られた守護兵器だった。圧倒的な戦力を得た連合軍は三つの大陸を跨る戦線で勝利を重ね、十六年の秋ごろに魔族軍を侵入拠点へ押し返す事に成功する。
魔族側は度重なる敗北で再び国家存亡の憂き目に遇い、頼りの魔導生物エグザムを強化する為に賛否が飛び交っていたとある細胞の移植実験を行った。
細胞を捕食し驚異的な進化現象を引き起こす死神の魔導細胞。この細胞技術の元となった正体不明の肉片から錬金術師達や研究者は強化細胞を完成させる。注射型の即効強化薬として優秀な戦績を挙げた個体になりふり構わず投与した結果、投与された個体は姿形を大きく変えて生物から兵器体系へと進化。福音天使程ではないが疲弊した魔族軍を立て直す切り札に成った。
戦争勃発から丁度四年後の十七年。連合側は多くの戦場に次々現れる強化型魔導生物の兵器獣等に大苦戦している最中、ようやく魔導細胞を細胞崩壊させる魔導細胞崩壊砲(光の槍)を完成させた。この兵器を運用する福音天使や各兵器により魔導生物は一方的に駆除されていき、魔族側の生物資源減少も重なり死神達は絶滅に瀕する。
この頃、東大陸の西武で戦っていたある魔導生物が光の槍に対する抵抗能力を獲得。ほぼ同時に同じ魔導生物を捕食しながら巨大化し、東大陸西武と西大陸東部を壊滅させた。巨大化した個体は暴走していて魔族側の司令を無視し暴走、眷属が敵味方関係無く襲う様になり、十八年の春には戦争状態が終結していた。
星暦のある時代に歴史から抹消された惑星内最終兵器が目覚め、世界は厄災の始まりを体験する。他の大陸と同様に南大陸の連合側に寝返った魔導生物の生き残りはとっくの昔に戦意を喪失していて、福音天使修復の為に自らの体を差し出した。
多くの犠牲の上に甦った五つの福音天使と眷属によって災いの巨獣たる神兵は倒され、以降各文明は自らの生存領域を確保する為に都を放棄した月の民達と共に楽園の建設に着手した。
浮遊島の虚構探索。
旧探索街跡地から発展した文化指定都市セフィーナ。総人口はおよそ八から十二万人でゼノン唯一の学園都市。
北西のエメロード半島西岸に在る港湾都市エメロ-ド。東にはキノコ川下流の北部沿海地方に在る首都「シャングリラ」。南はアゾット州との境である山岳地帯北部の鉱山都市デサードを含むシャングリア州の中心に位置している。
古くから迷宮探索と東大陸との海上交易で栄えた地域なので、セフィーナには多くの歴史的建造物や文化遺産が在る都市で有名。季節によって人口の推移が激しく、夏場の長期休暇で国中から探索者や旅行客が集まってくる一大観光都市。
「浮遊島探索」の中心は、エメロギア湾内に浮かぶ三島の「機械島」「月輪島」「卵島」。かつて海底火山上空を滞空していた浮遊島の伝承から名付けられたこれ等の島は人工島で、災厄後に建造された浄化都市だった場所と認知されている。
現在三つの島では、船で渡った探索者や旅行客相手の商売が主流。セフィーナの港区に在る探索組合で探索券を買い所定期間の探索活動が認められており、探索者以外でも虚構世界に入れる。
イクサムの魔導細胞はかの死神の変異体であるので、虚構世界へ入ると高い確率で生き残りの魔導生物の核だった迷宮核に取り込まれてしまう。(魔導細胞同士の補完結合機能により、文字どうり融合する。)
直接虚構世界に入れないイクサムは、自らとユイヅキの分身として人格機能(観測思念もしくわ命)を持たない魔核に擬態した魔導水晶体を製作。これを填め込んだ三つの魔導具を第三者に渡し、島内各所に設けられた虚構世界と接続された世界窓信端末と同じ原理の迷宮用魔導端末から、ユイヅキを介し間接的に魔導具から送られた情報を解析する予定。
浮遊島にはそれぞれの迷宮核が一つずつ有り、制限区域内に在る中央制御装置の役割を果している。迷宮核の名は公に認知されているが、具体的な機能や形状とその場所含め、維持管理する関係者しか知らない極秘扱いの機密指定処理が施されている。
迷宮核の正体が何なのか一般には知らされてなく、死神の生き残りであるイクサムの推測が正しいかも解らない。イクサムの目的は死神の駆除と魔導細胞の奪取。そして魔導細胞に封じられた記憶の断片を集めて昔を魔導細胞や魔導物質の起源を探る事だ。
浮遊島での探索は、指定区域内なら誰でも探索や往来が可能。制度上探索者階級制度は残っているが形式だけの物で、船に乗る際に切符の「探索券」を見せれば浮遊島に誰でも行ける。
浮遊島の探索組合の特徴。
オートム。面積は二番目に大きい。白い堆積層と結晶に覆われた島。植物や魔物含め独特で、機械獣型の魔物が多い。
機械獣型の魔物は各種結晶と鉱物を主食とする物と、機械獣の金属細胞を捕食する種の二種類に分類されている。食物連鎖は常に二等辺三角形を維持指していて、機械獣型の魔物を総称して探索者を含めた活動組みは「奇獣」と呼称している。
「奇獣」は主に多脚種と四脚、二脚種の三種類に区分けされ、飛行型も脚の数によって分類されている。一般生物の形状に近い種とそうでない種に別れていて、伝説の魔導生物によく似ているので死神だとか巨大神の眷族とも言われている。
オートムが瘴気(霧)に包まれた時のみ出没する魔物も機械獣型の「奇獣」で
収集品目は鉱石類が圧倒的に多く、鉱石系植物もこれに含まれている。ただし虚構世界なので現実に持ち帰る事はできない。浮遊島の探索組合が発行している形状を記憶した
アゼット。最も小さい大陸。綺麗な半球状の岩上部が殆ど砂砂漠の島。遺跡周辺のオアシスに幾つかの宿場街が有る。遺跡と砂漠に多くの魔物が住んでいて、霧の代わりに砂嵐が発生する。
主な収集品は砂漠や遺跡内で採れる魔石で、稀に希少金属が出土するので争奪戦が起き易い。
【登場人物】
「イクサム(エグザム)」星暦9986年1月1日(規定誕生日)生まれの16歳。身長171センチ。体は細身でしなやか。泳ぎは苦手。一人称は「俺」「こちら」。いつも大人用の複合弓を背負っているが、本物はハルゼイから貰った灰色の複合弓の方が力を発揮し易い。
表向きは古都ベルス出身の魔笛吹き魔獣討伐者。死神の生き残りを探しながら魔獣を討伐し日銭を稼ぎながら南大陸各地を放浪していた。
容姿や声を変える能力を活かして定期的に姿や顔を変えている。狩人時代に染み付いた短い髪ざわりが気に入っているので、基本的に短髪の少年の姿で活動している。
普段から素肌を露出させないよう長袖長ズボンを着用していて、熱いのに汗を掻かないのを不思議がられる。もっとも顔も含め体系を自由に変えられるので、手配書にある古い似顔絵とはまるで別人だ。
迷宮管理機構が重要人物として自身を探していると考えており、放浪しながら魔神伝説の手掛かりとなる存在をユイヅキと共に探している。
「ユイヅキ」複合弓の紫水晶に宿った新しい集合意識の知性体。正体はセフィロト内の浄化都市の管理中枢が融合した新しい精霊族たる【魔導精霊】だと当人は言っている。
イクサムを目的地に導くのを使命としており、名を与えた主に絶対の忠誠を誓う物。独自に魔法を行使する能力があり、同じく独自の理力たる【精霊術】勝手に命名した技を使う。
「セラ・ラノイ」年の割に大柄(179)な女の子(18)。引き上げ兼台船業をしている実家の看板娘で倉庫管理と経理担当で料理から掃除まで任されている。海獣のぬいぐるみや模型を集めたり、死骸の一部などを集めるのが趣味。
「セラム・ラノイ」大柄な壮年男性(188)、もしくは筋肉達磨のはげ親父(坊主頭)。河川及び沿岸用小型台船を操る熟練の船主。漁師達から「海坊主」と呼ばれている。母親とは死別しており、いつもグラサンをしているので黒髭と合わせいかめしい表情をしている。娘を育てながら仕事をしている事務と操船管理が担当。
「ヒカル・シーライオ」8月8日セフィーナ生まれセフィーナ育ちの十六歳(女)。身長は163センチ。セフィーナ第四高等学校に通う一年生。元気で活発な性格、一人称は「僕」。剣術道場の師範であり「開祖辻斬り」師範代でもある会社役員の父から辻斬りを中心とした剣術を習っていた。三人の兄が居て両親と共に下町の道場で暮らしている。運動神経は抜群で動物との意思疎通も慣れている。お菓子好きで三つ編みの赤い髪が特徴。
幼少の頃に兄達の付き添いで探索者登録をしたが、目だった活動実績が無い初級探索者(黒)。未だに魔物との戦闘では思考より先に手が出易いので、現在用事無しで虚構世界に入るのを親や兄弟から止められている。炎と光属性に適した魔法剣士。
夏休みの研究課題として、歴史学科の補修を兼ねた迷宮魔物レポートの提出を命じられたヒカル。兄達と迷宮へ入る口実が出来たものの肝心な兄達に忙しくて相手にされず、迷宮に入る相手を探している。
ヒカルは幼少の頃に遭遇した魔物によって口が聞けぬ後遺症を患った経験が有り、兄以外で素直に話せる友人は居ない。学生は特例を除いて単独での迷宮探索が禁じられているので、共に長期探索を手伝ってくれる相手を探していた。
「アオイ・ミクジラ」3月3日シャングリラ生まれの十六歳(女)。身長は166cm。倍率が高いセフィーナ第二高校に通う一年生。学校の成績は平均的だが所属している庭剣部で優秀な成績を残している。
性格は変化が激しく興奮し易い。一人称は表向き「私」もしくは「うち(うちら)」で他人を呼び捨てにする事が多いが、姉だけは「お姉ちゃん」と呼ぶ。本人曰く繊細で優しい反面も有るそうだ。趣味は料理だが海の幸を入れたがり味にバラつきが有る。家族は双子の姉のみで、下町の賃貸住宅で同棲生活を送っている。特徴は長い青い髪と姉と共通の髪飾り付きヘヤバンド。
学費や生活費などの一部と小遣いを稼ぐ為に双子で探索者登録した下級探索者(銅)。姉とは違い水属性に特化した魔法従士(新米)。
夏休みの期間中。学費や生活費を稼ごうと浮遊島で探索稼業に励もうとしていたが、夏休みに入る直前に姉から共同探索を断られる。アオイはプライドが高いが想定外の状況に弱く、共同探索相手を見つけれずに困っている。
「カザリィ・ナミカゼ」12月12日生まれの十六歳(女)。身長は164センチ。セフィーナ女学院(超お嬢様学校)に通う器量が優れた一年生。好きな食べ物は貴重な魚介類。普段は学院寮で暮らしている。一人称は「私」
勤勉で眼鏡を掛けていて洞察力が鋭いが、体が細いので泳げない。陸上での運動神経は普通で弓術が得意。いつも緑の髪結いを着けており、大きな丸眼鏡と首元まで達するふくよかな小麦髪が特徴。両親と姉の4人暮らしで家は代々続く果実酒農家でアゾット州東部の裕福な家庭の出身。
探索者として多種多様な風属性の魔法を習得した珍しい魔法使いだが、使い辛い技と総合的な攻撃力に乏しいのが欠点。学校では迷宮探索部に所属している下級探索者(銅)。迷宮探索部に入った理由は学外で弓が撃てるからと、姉と同じ上級探索者(金)になりたいから。
夏休み前から実家へと帰ろうと準備していたが、両親が姉の結婚準備の為に忙しいと告げられ里帰りを遅らせると決断。更に両親から姉の結婚祝いにと浮遊島探索で縁起が良いとされている「虹色真珠貝の紅真珠」を調達するよう冗談紛いに命じられ、殆ど空になった学院寮からでて街で共同探索者を探し始めたばかり。
紅真珠は貴重な真珠なので一定数しか出回ってない。金で買うには競売人含めて多額の金が掛かるので、カザリイは探索者の業績や貢献点を溜めて入手しようと決めた。
「ミズハ・オクタビアヌス」ケンスケの兄。復興で忙しい弟と天空樹探索街を助ける為に国に戻っている。
「スーラン」58歳。定年前に引退した元船大工の漁師。現在は過激座に住んでいて、イクサムに自らの世話を兼ねた施設の雑務を任せている。
「ヨウソーロ/役者名ゾロ」シャングリラでフリーターをしていた「過激座」の劇団員。漁師家業を掛け持ちする謎多き男。容姿は無償髭と黒い眺めの髪が目立つ30代だが、正体は何かしらの理由で本名を隠している迷宮専門の情報屋。昔は船乗りをしていたらしく【船頭協会】に顔が利く。
「アカネ・ミクジラ」アオイの長女。妹とは正反対な性格と髪色で冷静さと訛りの有る口調が特徴。セフィーナ第三高等学校に通っている機械工学科の生徒。好物は「紅茶」で趣味は機械系展示品等の観賞と製作。銃使いだが奇怪な装備を好む奇人。妹を「アオイ」「妹よ」と呼ぶ。一人称は「うち」
学費や生活費を稼ぐ為に「過激座」の道具係として働いている。容姿が良く独特の口調から役者だと何度も間違えられている。
夏休み期間中に妹と探索家業で金を稼ぐ予定だったが、学科課題で製作した回転式加速器「パンジャン」で製作した綿菓子の「爆裂風船」が学園祭と過激座で好評を博したので、現在そのれ量産依頼を完遂する為に学校と工場を行き来している。
【国家】ゼノン。南大陸西側半分を占める国家。人口は七千二百万人。南大陸の経済と産業中枢。貧富の差が世界一高く、世界第二位の経済国家。同国を流れる二台河川の【キノコ】と【タケノコ】を中心に栄えた大河文明圏。
全部で十一州、四群、三都の行政区分に分られた18地方政府が管轄している。
北部沿海地方
中央砂漠地方
西海岸流域
【主要都市】
首都「シャングリラ」北部沿海地方に位置する大都市で、大陸一人口と面積が多い五百万都市。事実上「群島海」の経済中心地。「キノコ」の下流域にあり、石造りの古い城や城塞跡が残っている。
【南大陸文化保全委員会】の本部ビルが在り、国家議事堂を中心とする市政区を中心に都市が広がっている。
工業都市「オートマグ」西海岸流域のタケノコ川上流沿いに分散している複合都市。造船業が盛んでそれらを製造・解体する造船設備が川沿いに密集している。元々造船業で栄えた都市だったが、タケノコ川下流の平野に分布する森没林が近く、樹海に棲息する魔物や魔獣が都市郊外を跋扈している危険な地方でもある。
他の工業都市と同様に飛行船や導力車の部品を製造していて、ゼノン西部の一大工業都市として有名。
総人口は百八十万にあと少しで届くか届かない程度。現在は世界中から入国して来た移民や難民の方が多い地域でもあり、低賃金で各労働作業に従事している。
州都「ソドム」。人口三万人弱の高原都市。ゼノン中央高原地帯のほぼ中心に在る事から、よく地理教本に同国の中央地に近い都市として名前が登場する。州の面積が95,231㎡と比較的広いので州に指定されているが、基本的に経済規模は群と殆ど変わらないレベル。年間の降水量が少ない乾燥気候に属していて、鉱業が盛ん。
州都「アトランタ」。種族人口486290人。陸地面積は153909㎡。ゼノン西海岸中央からアトラ平原一帯を占める州の政令都市。海洋気候帯に属していて年中温暖で降水量も多い。農産物と水産物の生産が主産業。
歴代の南北戦争で何度も戦場になったほど重要な地域で、二大河川の南たいが「タケノコ」の沿岸に在る水運の要。
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群都「」「」「」「」
【特色】
東大陸との交易やセフィロトとの交流が盛んで、古くから北部沿海地方を中心に文明が発展した歴史が有る。基本的に食糧需給は満たされているが基準品目と栄養基準が合致してないので、肥満者や発達障害者の多さが問題となっている。
都市間とその近辺で経済格差が顕著で、慢性的な失業者問題と不足気味なエネルギー問題が足かせと成っているが、基本的に貧困救済措置や免税制度などが普及しているので、社会福祉や公共投資規模は高い。
北部地域は治安も良好で犯罪率が低いことから開発が進んでおり、自然破壊が問題化されている。
そして古くから建築物資の不足による部分改築技術が発達し、今も昔も歪な建築物が多い。
【政治】
国民選挙により輩出される統一議会制民主主義。議員は【地方選挙】で選ばれた地方議員と連合議員に別れており、全180人の中から【国政選挙】で選ばれた六十名の国会議員が国政に関わる権利を有す。
自主独立を謳う【ゼノン憲章】が国の最高法であり、それを独自に行使する権限を有すのが【ゼノン大統領資格者】。従って大統領は【国民議会】の議長であり国の統治者である。この大統領を決める選挙を【大統領選挙】と言い、【地方】【国政】【大統領】選挙は三年ごとの選挙期間中の同時期に実施される。
【経済】
生産業は海(水)産物が主流。西大陸から移植された「大陸麦」と固有種の「沿岸米」の各品種改良種も生産している。基本的に主要農産物は輸入品が多く、食料自給率は85%とここ二十年横ばい。GDP非で四割
製造業は造船や航空機製造が盛ん、特に大陸間を結ぶ飛行船(大型飛行機)航路の中継都市はこの分野で栄えている。GDP非で三割
探索業は鉱業系分野に分類されていて、同国唯一の迷宮である「浮遊島」の周辺地域に分散している。業界人数はのべ二万五千人で経済規模は十五億~十八億G。これは同国の国内総生産の十分の一。
サービス業や【公共公益業】と呼ばれており、公共事業が中心。基本的に税収の対象とされている。
【法・宗教】
歴史的経緯により東大陸や隣国の思想や文化が交じり合っている。セフィロトの「魔導聖典」の規範の一部が地方の風習に根付いている事から、地方によって経済と文化様式が異なる。
【ゼノン大法典】と呼ばれる歴史学問の人気が根強い。この法典を国家制度化した【ゼノン憲章】の元で「国政法」「条約」「地方令」の三区分により成り立っている。今は法治国家としての色合いが強い。
【文化】
古い時代の都市跡や古戦場が多く、それらを題材とした文化作品が豊富。土地により大きく気候風土が違い生活習慣が違うので、環境だけでなく地方独特の訛りが強い。
そして意味不明な木造建築物が多く、外見から何の建物か判らない物も在る。意図的に変わった者を生み出す芸術文化が浸透していて、平和の象徴とも揶揄されている。
【歴史】
厄際の時代に活躍した「魔神」を後世に伝える「魔神伝説」がこの国の起源であり国家の正当性を担保している。「魔神伝説」は古くから救世の存在として親しまれ、群雄時代の政治事情によって色々な派生話や新しい設定が創られた。この叙事詩に登場する三人の主人公は時代によって違い、同国の有力民族の勢力図を代弁している。
探索転換期初頭より影響が出始めた同国東部の中央山間部の砂漠化による水不足により、二大河川を中心に栄えた古代都市の「シャングリラ」「オートマグ」の間で俗に言う「大河戦争」が勃発。争いはキノコ周辺勢力に加担した謎多き魔導兵を主力としたグリコール部族の活躍により終結し、それから砂漠の拡大で同古代都市が機能停止。別の地に同名の都市を遷都し新しい国づくりが始まったとされている。
「第一次から三次南北戦争」。導力及び探索転換期から革新魔導時代までに三度勃発した内紛。銃砲が普及した事で各地の街道沿いが戦場になった。
ゼノンは古くから魔獣や魔物が多く古代都市以外で住める土地が限られていた。文明圏の交流が群雄時代まで途絶えていた事も在り、人々は古い歴史について興味が薄い。
【民族】
【伝説・伝承】
「浮遊島伝説」北の海に在る火山性造山帯に昔浮遊する島が在った話。伝説ではそれ等の島は意思の力だ浮いてたそうで、今も虚構世界では啓示や経験を意思の力を図る目安にされている。
【魔神伝説】とは厄災の時代に南大陸で福音戦士と共に死神と戦った本物の魔法騎士達の活躍を記した叙事詩。何度も再編や改訂を繰り返すうちに、大衆への認知を広める為いつしか巨大な人型兵器に登場する美少女の青春模様に様変わりしたが、本物は造反した魔導生物が三人の若者と協力して魔導生物駆除に当たった話とされている。
【用語】
「炎の剣レクサム」都市のシンボルであるセフィーヌ塔でヒカルが貰った照明具の景品。
「水の槍セレス」同遺跡でアオイが貰った海中用漁具の景品。
「風の弓ウィンダム」同じくカザリィが貰った工芸品。
【海没都市アトラ】都市とは名ばかりで、事実上様々な時代の船の墓場と化している。沖合いに沈没した船は大きく、厄災の前に造られたと地元で語られている。
炎→闇→光→氷→雷→土→風→水→炎
炎水風土雷氷光闇
水風土雷氷光闇炎
【セフィーナ学園都市】十六人の学園運営委員会により管理された自治都市。面積は通常都市区画の六つ分に相当する三キロ平方メートルと少々だが、この狭い区画にはおよそ一万人の学校関係者と千人未満の研究者が活動している。
学園都市は西と中央と東区の三区に区分けされており、東西に並んだ三つの区画の一列を南北で二列に合わせ六つの区画を三つに別けている。この三区は北と中央と南横断道路によって結ばれており、南北横断道路の内側に都市が収まるよう配置された構図だ。
都市内には全部で五十の教育関連施設と二十二の研究関連施設が在る。ただし満十六歳未満の学生を扱う初頭と中等教育施設は八箇所しかなく、学園都市の住人の過半数がセフィーナ都市外の出身者で構成されている。
盤上に区画整備されてはあるが、基本的に狭い土地に建物が密集している事にかわりない。なので敷地面積を多く要す運動場や学生寮等の設備は多くが公共用設備として他の学校と共同使用されていて、学校敷地外の場所に在る場合が多い。なので授業時間の合間に少しでも移動が遅れれば遅刻してしまう。学校敷地外に在る関係施設を目指し道端を走る生徒達の姿が頻繁に目撃されている。
学園都市が建設される以前、新興開発区時代には士官学校や軍教練施設等が多数建設されていた軍用区画だった。なので現在教育施設に通う学生の制服には、仕官服や予備役招要員の制服を参考に製作された制服が多い。都市自体がまったく別の造りなので、魔導端末や魔導通信器が使えないのを知らずに迷う転校生が後を絶たないらしい。
【月輪島】エメロギア湾の南浅瀬に土砂が堆積した事によって形成された島。直径五.二キロの島だが中心部に浅い湖が在り、世間一般では数千年前に漁礁開発の為に改造された岩礁遺跡だと認知されている。勿論この情報は厄災直後の時代に建てられた地下遺跡を隠す為の措置だろう。とっくの昔に封印された都市遺跡を発掘して迷宮核を設置したのだから、都市跡を調査した記録が組合に残っている筈だ。
現在この島に来る者は探索者より観光客や釣り人の方が多い。元々三つの島で最も大きく、同時にセフィーナから近い事から船での往来が年中活発だ。
【卵島】海岸線の輪郭が卵に似た楕円状の島に見える事から名付けられた島。本物の卵に例えると細い頂点側がほぼ真西を向いているので、昔の漁師や船頭達は島の先端部に在った大岩を目印に使っていたらしい。
島の最大全長は4.2キロ程度。三島の中で最も西側にあり、海岸線の崖を含めて全部で六段にも及ぶ階段状の地形が特徴。
島内には虚構世界フランベル大陸の砂漠と遺跡の島であるアゼットと繋がった魔法の輪が有るが、漁港から向かう探索者の多くが月輪島から虚構世界のホーライに入り探索船でアゼットに上陸する手段を利用している。なので崖昇りが目的の特殊な観光客や登山客以外は殆ど来ず、数少ない探索者も崖内部に掘られた倉庫跡の宿泊施設から出ない者が多い。
千年程前までは古き時代に掘られた地下通路や坑道を釣った魚含め非常食や飲み水を保管する場所として活用していた。昔から嵐で湾内が荒れ始めると収まるまで時間を要すので、古くから漁師達は長期間滞在出来るように卵島と機械島に避難設備を築いたのだ。現在では導力技術や魔導技術の発達により嵐で船が漂流する事は無くなった。各地の気象観測所によって集計された情報から瞬時に嵐を予測する事が可能になったので、使われなくなった卵島の地下坑道や地下倉庫街跡の幾つかを探索組合が管理している。
【機械島】最大全長が4.8キロの元岩礁島。湾内北側に有る事から幾度となく海獣の襲撃を受けており、およそ九百年前に現在の要塞区画に最初の迎撃要塞が建設された。
約二百三十年前のサンジラ系巨大海獣襲来以来海獣が湾内に入って来ておらず、現在の要塞区画は半壊した基地が再建されぬまま老朽化名目で閉鎖されている。主に崩壊の危険性により閉鎖された要塞区画と古い遺跡深部には入れない。
島は周囲が高い岩礁で囲まれていて砂浜も無く、埠頭以外だと大型の船でも近づけない程海流が速い場所に在る。その為浮遊島三島の内で最も海の侵食による影響が健著だが、同時に最も豊かな漁場でもある。
機械島内に点在する魔法の輪たる暗黒鏡からオータムに入れるが、虚構世界に入る探索者や観光客は基本的に月輪島を出入りに活用している。当然封鎖された地区が多い機械島に好んで踏み入ろうとする者は限られる。
【虚構世界フランベル大陸】浮遊島の虚構空間内に構築された浮遊群島。大陸とは名ばかりで百を超える大小の島々で構成されており、四方を雲海に囲まれた巨大空間の空に浮かぶ三つの巨大な島を中心に構成された世界である。
その三つの島は現在の浮遊島と同じ位置に在り、それぞれが浮遊島三島の古い名で呼ばれている。
空船や探索船とも呼ばれる帆船に近い飛行船で島間を行き来できる。探索者は自前の飛行手段や探索組合が運営する飛行船で島々を行き来し、得た戦利品や採取品を独自に加工。新たに生み出した何等かの消費財や魔道具素材を持ち帰り生活や娯楽手段の道具としている。
探索者以外にも積極的に解放された唯一の虚構世界なので、虚構世界内で開催される各種競技や雲海に浮かぶ島々を巡る船旅目当てに多くの観光客が訪れている。
【ホーライ】虚構世界フランベル大陸内で最も大きな島。上部が丸く下側は岩石層がむき出しの逆三角形構造になっている。地表面積はおよそ千六百五十平方キロメートルで大半が迷いの森と呼ばれる樹海に覆われている。
中心には満月湖の二倍の面積に匹敵する鏡面湖が在り、四方に定期的に噴火を繰りかえす四つの山と岩場が島の周囲を囲っている。山の麓や裾野の高原辺りまで樹海に覆われているので、山から湖に流れる川や樹海内に在る複数の遺跡の位置を覚えておかないと遭難してしまう。
湖周辺はなだらかな擂り鉢状なので水捌けが良く、基本的にこの満月湖周辺の街が探索活動の拠点として機能している。セフィーナ探索組合が宣伝を兼ねた探索啓発活動で迷い易い場所だと注意喚起を行っており、世間知らずでないなら地図情報と方位機能を魔導端末に読み込ませてから探索に挑むべき。
ホーライの代名詞とも言える樹海では豊富な植物と多用な魔物が生息している。天空樹の蜜の花世界でも植獣系の魔物が多かったが、こちらの樹海では群を成して襲ってくる小型魔獣の方が圧倒的に多く危険だ。
探索は基本的にこの樹海を中心に行われている。数少ない草原で魔物を狩ったり捕獲し、点在する遺跡に潜って貴重な魔石や素材を探す冒険者が多い。この者達は収集品や戦利品を鏡面湖の湖畔に在る拠点市場で消費財や貴重品と交換するのが大好きなので、闘技はおろか外周の山岳部で不定期開催される空間騎乗競走や飛行船競技等に殆ど参加してない。
鏡面湖周辺の拠点に出入りするには遺跡周辺の満月湖畔に点在する魔法の輪を通るか、他の島から定期飛行船に乗って街に入れる。
【新生孤児】物心付く前に孤児院や養育施設に捨てられた者を手意義付ける言葉。名前や生年月日を記した証拠がない場合が多く書類整備に手間取る事から、生年月日をその年の元日に設定し名だけがつけられる。
【魔素】五千年前の厄災以前から仮説として存在が定義された不可視の物質。目に見えず高精度な顕微鏡でも確認出来ない特定の分子と同様、様々な魔導反応を形成する大いなる存在として語り継がれている。
大気中や無機物と有機物に独自に干渉する媒体と認知されていて、厄災以前に栄えた多くの魔導技術が復活してからも様々な理論実証に活用されているエネルギー源。その変換効率は技術し次第で化石燃料の百倍以上、自然エネルギーの三百倍に匹敵する。
【携帯式魔導通信器(通信端末)】魔素と言われる存在が実証されてからおよそ七百年。人々の生活は魔導理論から導き出された導力機関によって生活基盤を支えられている。その基盤を更に発展させる道具として電磁干渉技術を使い発展させた究極の形がこの小型通信器。元は船舶用の小型通信器だった。
巷では電話と呼ばれている魔導通信装置と違い、中継局と端末を結ぶ専用網が不要な点と利便性が優秀だ。およそ三百年前に隣国のゼノンで開発されてから爆発的に世界中へ普及した経緯がよく知られている。
【迷宮式魔導端末】魔導端末とは、各種魔導反応によって発せられた魔導波長を送受信する情報通信端末。魔導波長の性質上短距離間での多くの情報取り扱いに優れているので、主に都市内での主要施設や政府機関の独自通信手段として活用されている。
迷宮式は迷宮遺跡の迷宮核から放出された魔素を含む魔導波によって稼動する魔導具。何れも持ち運びに不向きな大型だが、通信圏内なら設置にかかる時間は少ないのが利点。
【魔導(回路)路】一般的に魔物や鉱物生命体等の魔導細胞を多く有する生物から、導力機関を制御する各種装置端末に実装されている制御回路等に用いられている俗称。
エグザムの場合、細胞内の魔導因子が異常発達し魔物に近い高活性率の魔導細胞に変異した独自の生体魔導回路をそう自称している。
【刻植】水晶体や結晶体に生体回路を構築する行為(技)。技師・魔導技師
【福音戦士】星暦九千六百年代初頭から世界中で巻き起こった「魔導創世記」を見直す風潮により、当時まで厄災の時代を沈めたとされていた神兵につけられた比較的新しい名前。勿論公式記録では神兵や光の槍の本物が発見された事実は無く、福音戦士の名の起源も定かではない。
【集合意識体】群体を形成した鉱物生命体が特有の液体鉱脈を介し一つの形を成すのと同じで、菌類や海洋生物にも見られる体中に張り巡らした神経回路内の電気信号の集まり。
厳密に言えば量子力学を魔導反応によって再現する事で機能する巨大な思考装置。その正体は星暦以前に星海を渡って来た精神生命体と謳われている伝説上の知性体。まさしく虚構世界の魔物と似て非なる存在だ。
【魔法】失われた超技術を虚構世界限定で再現した力。「偽りの神と信仰」
【魔導】数千年の科学技術を用途用途に最適化した汎用技術。崩壊した過去の文明や失われた伝説上の業を再現する為に生み出された知恵の結晶。
【錬金術】魔導技術のうち、金を生み出す術全般。
【理力】星暦が始まる切っ掛けとなった宇宙世界改造により加わった新たな物理法則。通常の物理法則では有り得ない(困難)現象を一切の仮定をふっ飛ばし発現させる本物の魔法。仮定が一切不明なので通常物理法則を用いた解明は殆ど期待できない。本来なら銀河文明崩壊時に失われたが、封印された一部が残っていた「正統な神の力」。
【魔石】大気や地中の魔素が何かの分子と結合し固まった結晶を含む鉱物(宝石)や有機物の総称。凝縮時の触媒となる物質によって大まかに属性別けされている。
【青炭石。琥珀石。赤銅玉。虹真珠。】
【魔水晶】迷宮でのみ産出する高純度な魔素を含む希少な魔導物質。これを人為的に製造したのが人工魔水晶で、今日の素材工学に欠かせない加工材料だ。
【魔晶石と魔結晶】複数の属性を化合させた合成魔石の総称。魔導結晶とは違うが、知らず混同される。
【魔導因子】魔素の吸収と放出を行う特殊な細胞核、もしくは血中に精製される物質。基本的に【魔導細胞】内にある魔素により発達した特殊能力器官と認知されている。
もしくは、魔素に直接干渉もしくは操作する特殊な細胞核の基となった分子結合体とも定義されている
【生体核】魔獣の心臓部にしかない魔石。通常生物から魔獣に進化した経緯で、癌細胞の塊だとか第二の脳だとか言われている。固体により固有の生体核があり、平均して一固体から四つ獲れる。
【生体結晶】魔物の体内で脳機能や心配機能などを補助している中枢器官にある結晶石。【魔導結晶】でもあるので重宝されるが、残念ながら魔獣同様直に劣化してしまう。
【魔核】探索者が虚構世界で活用する魔法の発動と制御媒体。魔晶石や魔結晶を迷宮内(虚構世界の迷宮街)で加工して造られる。簡単な演算と動作に特化しており、演算能力では水晶体と結晶体の劣化下位互換製品に過ぎない。人工品と天然のものでは性質が異なる魔石なので、迷宮業界で扱う魔物の魔石として定着している。
【魔導結晶】水晶体と結晶体の材料になる魔導物質の塊。形状は様々で、使用した原料により顆粒状から結石の類と形状が変わりやすい。基本的に結合が不安定な物が多く、迷宮で産出する物は専用の容器に保管されている。
【水晶体と結晶体】魔石系原料を合成した基石に迷宮にて演算回路を埋め込まれた制御用結晶半導体。迷宮からしか産出しない。よって金や特定の宝石の様に管理通貨として取引されている。
【天空樹、緑黄結晶(神の実)。浮遊島、飛行石(青真珠)。大墳墓、鉱物骨子(白理石)。迷宮都市、血色体(賢者の石)。巨神像、反応溶媒(有機燃料)。】
有機(液)結晶体。迷宮を用いずに製作された制御用結晶体。
【死滅灰】汚染物質により分解された有機物の残骸で、火山灰より粒が細かく大地の栄養と成らない死の灰。微量でも粉塵を吸入すると数分で肺が炎症を起し、一時間以内に心臓が止まるかショック死する。
故に一般的には忌むべき存在として認知されているが、分厚い死滅灰の地層奥深くから多くの魔石が採れるので、鉱業に精通する者なら誰もが知ってる白い金鉱脈とも言われている。
【分解路・融合炉・合成炉】第一次産業革命から魔導技術の粋を設計された主体性。長い歴史の間、文明の製造業を担った。
【機改】 魔導技術により製作された魔核を用いて自立稼動する多用途機械の総称。特定の地方や現場では無人機とも呼ばれており、星暦九千三百年代から四百五十年代の革新魔導時代に発明された高性能な演算型学習装置の魔核が本体とも言われている。
およそ六百年前とは言え魔導学の歴史においては比較的新しい部類の機械製品だ。自立回路を埋め込まれた魔核は迷宮産業を中心に製造されている。しかし希少金属や宝石と同等の価値がある水晶体や結晶体の潜在容量の前には、所謂いわゆる下位互換にあたる消耗品にしか過ぎない。
よってセフィロトでは職人や労働者を大量に失業させる機改の使用や保有を全面的に禁止されている。
【機動兵と強化外骨格】機動兵とは有人式の人型兵器の略称。足の数や関節構造が人と異なる装備も含めて、有力な都市の防衛や特定の紛争と係争地域で活躍する様々な戦闘兵器を指している。
そして強化外骨格は本来、汚染された環境や極寒・酷暑地域で活動を支援する作業支援防護装備だ。しかし技術の発達による小型化が進み、機動兵器に搭乗する際の搭乗者保護を兼ねた戦闘用強化外骨格も存在する。なお歩兵用に製造された強化外骨格は戦場の主流とは言えず、機動兵器が荒野を駆け回る競技が普及しつつある現代では脇役に追いやられている。
【庭剣と辻斬り】どちらも探索街時代のセフィーナで発祥した対魔獣用剣術。記録資料ではおよそ千五百年前後辺りの時代に活躍した幾つかの魔獣狩猟団が採用していた戦闘技法と訓練術を元に体系化された剣術。どちらも古き時代から多くの武芸者が習得した有名な剣術で、現在ではゼノン内外で十万を超える剣術会員と武芸者を擁す二大派閥を形成している。
現在の庭剣は刺突技を競う武芸競技を指しており、重量のみ規定がある擬似突剣を先に相手に接触させ勝敗を競う先取勝敗制が主流だ。
一方の辻斬りは、競技体系から外れた開祖辻斬り武術と集団競技の辻斬り合戦に別れている。競技種目として競技者が多い辻斬り合戦が主流だが、武芸者協会として独自の地位を築いた改新辻斬り協会指定道場で開祖辻斬り武術を教えている。
【虚構世界法式迷宮探索】研究主体だった迷宮管理機構が公表する資料によると。星暦9300年代初頭、ゼントランの巨神像で巨大な生体結晶(当時は魔導結晶)が発見される。結晶は周囲に魔導因子を有する物体を吸収し同化させてしまうので、伝説の強大化した死神の心臓だと推定され研究が始まった。
魔導細胞や魔導物質内の魔導因子共鳴作用を利用し、巨大な生体結晶(魔導結晶)から莫大な魔素(当時は魔導力)を引き出し蓄積する事に成功した。研究組織は巨大な生体結晶を、古き都市や遺産を意味する迷宮核(迷宮の核)と呼称。魔素循環技術を導入し迷宮核の安定化させ、迷宮核の生体結晶(魔導結晶)を用いた導力炉研究が始まる。
発見から三十年近く経過した頃。実験的に接合したとても古い魔導水晶体の魔水晶が共鳴し、不明瞭なままだった生体結晶の類似魔石が偶然生まれた。この類似魔石を構築している結晶構造や結合構造の解明が行われた結果。巨大な生体結晶である「迷宮の核」が半導体集積電子回路を上回る演算能力を秘めた巨大魔導水晶体であると断定された。
魔導物質や目に見えない魔導力(魔素)を操り独自の生体回路を構築した迷宮の核。文献のみに記載された光の槍で死滅しなかった魔導生物の一部だと推定されていたが、この推論がようやく誤まりだと認識され巨大魔導生物の生体核の名から「生体結晶」と「生体核」の分類用語が生まれた。
星暦9300年代中盤。高い魔導親和性と同調性を備え、圧倒的な演算能力を有す迷宮の核を用いた【量子界理論】が提唱され、これに基づいた研究が始動。およそ十年の歳月を経て最初の虚構世界である「原子の海」完成する。
「原子の海」は魔導物質のみで構成された溶媒を溜めた貯水槽で、魔導因子の結合分離機能を操り魔導物質と通常物質の合成から分離を含めた成型装置だった。
当初はこの装置で大量の魔石を製造する計画だったが、魔導物質の転送技術をそのまま流用して、貯水槽内で結晶化を伴わない魔導回路の精製研究が始まる。結果数年後に魔導物質同士を繋ぐ第三の不可視物質が確認され、伝承の名をそのまま宛がい魔導力を「魔素」と改めた。
「迷宮核」の名が出たのはこの頃からで、魔素を電波や放射性物質の様に使用する研究が始まっていた。魔素たる魔導力を利用した技術は既に存在していたが、出力と規模や安定性が低く寿命が短いので衰退していた。研究者たちは古い研究資料や調査資料を基に、厄災前の時代に存在していたとされている機械獣を操っていた「精霊族」や肉体を持たぬ「亡者の民」から着想を得て、魔導因子の共鳴作用を利用した魔素による精神世界の構築研究が始まった。
研究は結晶化を伴わない魔導回路の精製研究と並行して行われ、直に魔導回路内に特定の魔素を封じ込める事に成功する。この魔導回路を一時的に「迷宮回路」と呼称し、魔素保存容量の膨大化や魔素活性化研究が進むにつれ「迷宮回路」が各段に進化する。
結果星暦9369年。「迷宮の核」に迷宮回路を刻植する実験を経て、巨神像の迷宮核が誕生した。この最初の迷宮核を利用した魔素変換方により今日の虚構世界が誕生。安定化させながら構築された仮想空間を少しずつ広げていき、星暦9382年に最初の虚構法式迷宮探索事業の商業化実験が始まり、以後迷宮核により構築された世界を「虚構世界」とし、「魔法迷宮」の名で呼ばれる様になった。
【迷宮管理機構】世界中の魔法迷宮を管理する世界組織。
【世界窓信「端末」】地中光速ケーブル等の普及で実現した都市間情報通信網。世界中で様々な分野の情報を発信し蓄積する為の文明機器。
【魔導端末】各種魔導反応によって発せられる独特な魔導波長によって送受信される情報通信端末。短距離での多くの情報取り扱いに優れているので、主に都市内での主要施設や政府機関の独自通信手段として活用されている。
【南大陸文化財保全委員会】壁画の修復から旧式魔導機関の管理運営、資産化された文化財の管理が目的で結成された組織。別命「資産保全委員会」
【星海開発事業】現在この単語は死語として認知されている。九十六年前の衛星網崩壊によりばら撒かれた破片と残骸がロケットの打ち上げ軌道を塞いでいるからだ。
この事件を契機に新型の往還機計画も頓挫してしまい、現在では赤道近辺で流れ星が頻繁に目撃される原因として語り継がれている。かつて世界中の国が総力を挙げて星海に新しい覇権構造を求めた代償として、現在でも通信機器は海中や地底に敷設された汎用ケーブルや通信用塔台(電波塔)が担っている。
【光の槍】とは約五千年前の災厄を題材にした論文を元に製作された叙事詩「死神伝説」に登場する武器。およそ七百年前に再編纂された伝記だが、現座でもセフィロト政府公認の歴史資料として国内のみならず世界中で読まれている。
【光の槍は世界中を不活性魔素で汚染した魔導生物の魔導細胞を死滅させる為に造られた(詳細不明)。】
魔導因子とは魔素に直接干渉もしくは操作する特殊な細胞核の基となった分子結合体と定義されている。その魔導因子を取り込んだ魔導細胞は現在でも再現不能な完全独立型の生きた永久機関(生命源)であり、災厄の時代の高度な魔導技術の結晶とされている。
光の槍のレプリカ「傾国槍」はこの永久機関を再現する過程で製作された魔素吸収体。魔晶石の材料とも成る魔核など高純度の魔素を濃縮と分解と分離を繰り返し、抽出された放射性物質を形状記憶合金に混ぜ分子核を安定させつつ中結合素子を不安定化させた物。大量の魔素を何処からか集め所持する受容体に貯蔵する永久機関の出来損ない。大量の魔素を吸収すると不純物が発生するので、簡単に自己崩壊してしまう。槍として使用しているのは、優れた伝導性と魔導親和性が有るから。
【魔神伝説】とは厄災の時代に南大陸で福音戦士と共に死神と戦った本物の魔法騎士達の活躍を記した叙事詩。何度も再編や改訂を繰り返すうちに、大衆への認知を広める為いつしか巨大な人型兵器に登場する美少女の青春模様に様変わりしたが、本物は造反した魔導生物が三人の若者と協力して魔導生物駆除に当たった話とされている。
【浮遊島伝説(伝承)】厄災の時代以前に南と東大陸間の海上空に浮かんでいた伝説の島。現在その名は迷宮島で使用されているが、伝承との結びつきを示す証拠や伝承を立証するは発見されていない。現在その名目で島内を探索調査する事は禁じられており、立ち入り禁止区域や閉鎖区画への侵入も禁止されている。
【衛星群崩壊事件】星暦9902年に起った軌道港爆発事故にたんを発した軌道ゴミ発生による打ち上げ軌道を塞いだ事件(表向き)。約一万人が帰らぬ人となったらしいが経済的損失の方が大きく地上経済は二十年縮小し続けた。この期間もふくめた50年を「失われた50年」と呼ばれ今も語り継がれている。
この事故でほぼ全ての人工衛星が破壊されるか整備できず使用不能になり、今もゴミと共に外縁軌道に漂っている。現在は少しづつゴミ軌道が赤道付近に集まっていて、流れ星の頻度も減っているが、依然として打ち上げ軌道を邪魔している。
【虹色深海樹】流木などが海獣が居る海の魔素や不活性魔素で変質硬化した物。離岸流で流されてきた流木等に同じく変質した珊瑚虫が住み付き表面に珊瑚質な膜が出来上がる。
大抵は変化した潮流などで直に流木が沖合いへと流されてしまうので、なかなか美しい虹色の光沢が出来上がることはない。同種の変質した木材を深海樹と一括りに呼んでいるが、寄生した珊瑚虫の種類により様々な色艶や形状へと変質する。
探す際は漂流物が溜まり易い岩場を探せば見つかるが、殆ど干乾びて完全に石化した流木ばかりが流れ着く。
【クジラ種】イノラ同様にゼノン沿岸から東大陸東岸海域に生息する海獣。卵から孵化したばかりの幼生体は尾長蟹の様な形状だが、生長するに従い巨大化し全長二十メートル前後の海玉虫の様な姿に成る。全長が二十メートルを越えたてから性別次第で、雄はレイジラに雌はサンジラへと成長する。
現在確認されている最大の個体は全長百二十七メートルのサンジラで、約二百三十年前にゼノン北部沿岸海域に出現した個体が巨大海獣に認定された最後の個体とされている。
【イノラ種】ゼノンや東大陸東部沿岸海域に多く棲息する海獣。成長するに従い食した餌や環境次第で体色や形状等が変化する。現在確認されている種類は全部で五種類で、雌雄同体の緑イノラから性別決定で赤と黒イノラに変化して最終的に女王イノラと海王イノラへと成長する。
なお、浮遊島の虚構世界の一つに出現する魔物の機械イノラと本種は全くの別物で、本物と比べても遥かに小さい。
魔導創世期。5000~5180
星暦5121年にセフィロトの大地に建造された四つの生物要塞都市「魔都」「聖都」「法都」「死都」
聖都を最北に中央が死都。東に法都市と西に魔都市。
汚染された大地を浄化する「浄化増殖都市」と呼ばれ、天空樹の頂きに聳える死都の有翼人「翼使い」を中心に南大陸東側の浄化が始まる。
同時並行で世界中に建設された浄化増殖都市は星暦5827年まで平常運転されていた。この頃は世界中の言語や通貨や支配政治体制などあらゆる面で違っており、それぞれが主権を持つ都市国家として近場同士或いは閉鎖した鎖国状態であった。
植民地時代。5180~6217
おおよ七百年間の間に、それまで汚染されていた世界の半分規模(旧文明圏を中心)の汚染領域が縮小した。当初生命すら存在しているか疑問視するほど、水や空気と土壌が汚染物質(自然分解に千年以上かかる変移した魔導粒子)に汚染され生物が済めない環境だった
要塞に逃げ延びた者達と、汚染されていない僻地に隠れた者達の子孫が本格的な交流を始めたのが切っ掛けで。セフィロト南部の非汚染地域だった荒野や隆起大地に複数の都市が建設された。
都市以外に住まう者達や生物は汚染の影響で体細胞に擬似的な魔導機関を獲得。当初要塞都市の魔導師や科学者は実験材料としか見ていなかった(汚染の影響で共食いが始まり種族が滅びると判断したから)が、代を重ねるごとに汚染環境にすら適応した頃から独自の暮らしをし始める。
5800年代後半に始まった植民地時代にさきがけ、南大陸では都市外の土着人「流浪の民」による交流「相互扶助」が既に広まっており、要塞都市の周辺でも活動する様になる。年に住まうものも何かしらの理由で流浪の民と共に暮らすようになり、亜人含め雑多な文明圏が同国南部で栄えた。
浄化戦役。6217~6234
時代を重ねるごとに交流と軋轢が増し、星暦6217年に死都を中心とした浄化勢力と流浪の民や別種族(亜人)と文明諸侯(南方)連合の間で戦争が勃発。16年がかりで同国南部は荒廃し、死都の中枢である蜜の花が都市と共に破壊され終戦。以降死都の有翼人勢力は大幅に縮小し、方々へ離散。蜜の花の恩恵である飛行液の供給を失い翼を失った。
この戦争で天空樹の浄化能力が大幅に低下し、他都市と連携した大陸西部の浄化能力が機能不全に陥った。これを切っ掛けに無人の法都を除いて、政変や都市文明の転換が始まり、都市から人が流出し始めた形骸化が進む。
群雄時代。6234~7098
その後も争いや文明の統合、数多の繁栄と衰退が続き同国内は無数の諸勢力が登場。北方大陸(現東大陸)他は違い「群雄時代」を経て第一次産業革命が伝播するまで戦国と当地の世が繰り返される。
星暦6220年代に設立された迷宮探索機構の調査が度々行われたが、この頃から都市の機能不全や技術継承が深刻化しており、都市指導者は流浪の民や他都市の技術者に運営を頼り始める。
星暦7041年に東大陸(当時は北大陸)の東部都市近郊で高濃度の魔導粒子を濃縮した天然資源「魔導石」と「液化粒素」が発見され、どう資源を地下で生成する微細生物の「地底カビ」である【分解微生物】の研究が始まる。以降これを切っ掛けに導力技術が発達し、第一次産業革命が広まる。魔石を簡単に魔導具へ加工出来る【魔導炉】(分解・融合・合成炉)技術が確立されたのもこの時代。
魔導開花期。7098~8240年代
この頃に魔導正典(現在は聖典)と呼称された歴史学問が普及し始め。後の国家セフィロト樹立へ繋がる宗教的学問と研究集団が組織される。同組織は戦乱の世に一定の教育と医療衛生や治世と統治を保障し、民衆から絶大な支持を獲得。当時の王政や支配議会を転覆させた「歴史戦争」が勃発。勝利により当時失われつつあった星暦を復活させ、隣国(大陸西側)や北大陸の支援により星暦7098年「セフィロト(神への系統)」の樹立を宣言、首都を聖都に移し政府組織「正典教」を結成した。
導力転換期。8245~8282
の歴史においても建国から1150年程度までは安定期が続いた。しかし鉱物資源の減少や魔導石の高騰、建国以前に確認されていた魔都市や法都市から発生した魔物により経済が不安定化。国教と化した魔導正典(歴史書)が見直され始めたのを皮切りに、魔物の個体数と国家間の貿易を縮小し社会インフラを持続可能な物へ転換していった。
探索転換期。8200~9300年代
星暦8262年に新たな国教「魔導聖典」に変わり、生まれ変わった※1現代版「迷宮探索機構」の新定義に則り、かつての要塞都市を「魔法迷宮」と呼称。迷宮での探索業と農業工業政策を分離して国交を限定的な段階まで下げた(擬似的な鎖国)
星暦が8700年代に成るまではまだ聖都や魔都と法都の※2旧探索業が盛んだった。しかし時と共に技術が発達し大地汚染が大幅に解消された事により迷宮の機能が枯れていく。天空樹が有る大カルデラの水位が減少し、現在の潮位まで下がり始めた事で天空樹の調査が再開された。
星暦8732年にセフィロトの※2旧探索業が始まると、枯れた迷宮を放棄し東西南北から人々が押し寄せ開拓が進む。
※1「現代版探索業とは古代遺跡や旧都市を再生させ新たな生活経済圏を造る行為」
※2「旧探索業とは古代文明の技術が詰まった遺跡や都市跡を探索(調査)する行為。遺構管理業とも言われていた。」
革新魔導時代。9300年代~9450年代
星暦9300頃に西大陸(旧北大陸)で発明された様々な飛躍的な魔導技術が世界に普及するようになり。現在の全ての迷宮で行われている「虚構世界法式探索管理業」が西大陸西端の国「ゼントラン」の「巨神像」にて始まり【第二次産業革命】、三代目の「迷宮管理機構」が発足する。三代目迷宮管理機構は「迷宮補完委員会」が裏で操っており、巨神の自我意識である伝説の死神「エグザム」が自身の役目を果す目的で作らせた下部組織。
星暦9364年頃から虚構世界法式探索管理業を天空樹でも導入する議論が「知恵の葉」で過熱し、南の鉱業勢力や亜人種族との間で紛争にまで発達。星暦9409年に鎮圧されるまでこの騒動は第二次浄化戦役と呼ばれていた(セフィロト経済動乱)。
解放革命期。9450年代~9600年初等
星暦9450年代から世界中の単位や通貨と言語などが生活概念が統一されたのを契機に、経済圏の過度な膨張が見直される。セフィロトでも探索業から商工業が分離し独自の農業政策や観光政策が始まり、長らく続いていた鎖国状態が徐々に解放された。廃墟と化していた魔都や法都が学術的な調査地と新たな水源地と成り、聖都は沿岸の施設も含め観光地と化した。
星暦終末時代から現代。9600~
星暦9600年代初頭から後半にかけて魔導創世記以前の研究や調査が進み、旧魔導正典に登場する様々な伝説や架空とされていた存在の実在が議論され始める。「魔導粒子に纏わる起源説・死神伝説(戦役)・神兵戦争・浄化天使」これにより様々な書籍が発行され失われた浄化都市の遺産を巡る紛争が多発した。
これらの事態に対処する為、星暦9689年に西大陸で「大陸機動団」。南大陸で「遺産保全協会」が結成され、今日も方々で活動している。