公園暮らしの根無草は異世界で日雇い住み込み労働者の夢を見る
公園で寝てたら夜中に変質者と遭遇してムシャクシャしたので書きました。
良い変態は最終的には他人に迷惑を掛けないから市民権を得られるのです(´・ω・`)
峠坂テツヤ…オーバー30・住所不定無職。
ちょっとした失敗からあれよあれよと住所不定無職となり、
故に色々とやる気を無くし公園で寝ていたある日、異世界へ。
流石に右も左もわからぬ場所でくたばるのは御免だと動き出す。
できることなら今度はまったり生きていくためにも…!
テツヤ「神様あざーす!」
そんなわけで、私、峠坂テツヤは目の前が見晴らしの良い草原に棒立ちです。
酒なんて飲める余裕もないので己が酔っぱらってるわけでもなく、そして
夢か現か幻かを確認できた段階でここが紛れもなく現実であることを痛感。
「ふふふ…何が何だかわかりませんねぇ」
こんな時に限って煙草が吸えないのは今さらでしょう。
とある国の下品な諺でも「犬の糞も薬に用いようとすればない」とか
言うくらいですからね……いけませんねぇ、卑下が過ぎますよ。
「…まだお腹も空いてませんし…」
体力の続くうちに動かないといけませんよ、これは。ここが何処であれ、
今の私には大した問題じゃありません。飲み食いできなきゃ死ぬんですから。
w根w無w
意外と早く村落っぽい所に到着できたのは行幸ですが…あぁ、成程…
「…そりゃあここが日本じゃないって薄々思ってましたけどぉ…?」
私を出迎えてくれた第一~第三村人らしき人らは何ていうか…
すごく…中央っていうか中東っていうか…これは…詰んだんじゃないでせうか?
「ეს არის ადამიანი არ მინახავს იმდენად ამ სფეროში?」
「ალბათ, მე ვფიქრობ, რომ ეს არის აღმოსავლეთიდან ლტოლვილი」
「იქ კი, მესმის, რომ არსებობს მრავალი სამოქალაქო ომი」
もちろん言葉なんてわかりゃあしません。私を見る目はそこまで
不審者に向けた目じゃないと……………お天道様を信じるしかねぇ。
―ぐぅぅ…
「რა გშია?」
「ვფიქრობ ასე」
「იმ შემთხვევაში, თუ მისცეს მუშაობა」
「მოდით დაექვემდებაროს საკვები, ტანსაცმელი და თავშესაფარი მხედველობაში」
「ასე რომ, ეს არ იძლევა არასამთავრობო ქვეშ」
「კარგით, გთხოვთ აქ მოვიდა. კაცი ლტოლვილები」
私の腹が盛大に飯を寄越せと唸ったとき、中央ないし中東な村人たちが
何とも言えない表情で会話をはじめ、微妙そうな顔で私に手招きをします。
ここで逃げたって野垂れ死ぬだけですから、彼らの言うとおりにしますとも。
w根w無w
丸太を運べと言われたときは死ぬかと思いましたが、他にも
中央東な人らとは違う…っていうかモロにエルフとかドワーフな人らも
私のように働いていたので、黙って頑張ることにしました。
でも…肩も腕も腰も痛ぇ…畜生。
「გთხოვთ, თქვენ საძილე აქ. გთხოვთ, ჭამა, რა არის იქ კვება」
ヘロヘロになっていた私を中央東な人の一人が促してくるので、
頑張ってついて行ったら…それなりの小屋に案内され、中には藁が引かれ、
毛皮の毛布とテーブルがあり…テーブルの上には暖かそうなスープとご飯が…!?
「うををををお米ぇ!?」
中央東な人が何か言ってるんですが、その時の私には聞こえませんでした。
何しろ住所不定無職になってからご無沙汰だった米の飯があったので。
きっとあの時の私は野人が如き様だったかと。
あの時の米は飲み物だったのかもしれないレベルでした。
「ハハハ…ასე რომ, ეს თქვენ მქონდა მძიმე პერიოდში」
がっふがっふと飯をスープで流し込みながら、中央東な人が何か言ってるので
一応聞くだけは聞いてみますが、やはり何を言っているのかわかりません。
先の笑いは嘲笑なのか苦笑なのかも表情が私からすると見慣れない人種の顔なので
さっぱりわかりません。まぁ、どちらでも気にしませんよ今は。
と、まぁ腹が膨れたのは良いのですが…さて、明日からどうしたものか…?
腕時計を見てもしょうがなかったのですが、空の白み具合と時刻が
ちょうど朝っぽかったのでそのまま起きることにしました。
そして藁は床やベンチで寝るのに比べると雲泥の差がありました。
昔の人はマジで偉い。
「……ეს არის დასაწყისში. რა ვქნათ, ისე მერე」
「うをっ?!」
ぬっと小屋の出入り口から中央東の人が現れたので驚きましたが、
昨日と同じ人だったのでとりあえず彼の示すとおりに動くことにしました。
w根w無w
あぁ…腰が痛い…やはり丸太運びは辛い。しかし隣で私より細身のエルフさんが
私の倍動くのでそうも言ってられないのです。
―სადაც არ არის! გთხოვთ, აქ!
―ისევ და ისევ, ეს მოუხერხებელია.
―ამიტომ ვამბობ, მაგრამ … გამოიყენოს არსებობს …
中央東の人(ただし何だかゴツい感じ)ががなり立てるのでビクッとしますが、
吠えられたのは私ではなかったのでホッとしました。
「იმის გამო, რომ არსებობს არჩევანი, დაე ცდილობენ」
「ん?」
ヒゲ面ですが、私よりは若いと思われる…武器…ッ!? 落ち着け私…
何となく日本の僧兵をイメージさせるような格好の方が綺麗な石の付いた
金属製と思われる小物を渡してきました。
「გთხოვთ, ანიჭებენ მას ყური」
ジェスチャー的に、これはどうやらイヤリングのようです。付けろというので
今更拒否しても仕方がない私は彼の言うとおりイヤリングを耳に付けます。
「痛ぇッ!?」
装着したと同時に耳たぶに針が刺さったかような痛み!! 思わず
イヤリングを外そうとしたら…
「お、良かったな。流民の兄さんはちゃんと人間だったか」
「ぬををッ?!」
さっきまで何を言っているか定かではなかった
僧兵の言葉がわかるじゃありませんか。
「い、一体全体これはぁ…!?」
「相変わらずナゾ魔術だが、ウチんとこの聖寺院殿特製の
伝心相耳針の効果だな。こいつは大体の人類種の意思疎通を
円滑にしてくれる優れものだ。大事にしろよ? あと、これ今日のお前の給金な」
まくしたてるようにそう言って僧兵は私に小さな皮袋を手渡して去りました。
貧乏性な私は皮袋の中身を改めます。銀貨っぽいのが一枚に銅貨っぽいのが三枚。
これ、日本円でいくらなんだろ…?
最初に案内された小屋に戻りましたが、もうテーブルにご飯は無かったので
いただいたこの貨幣で飲み食いしろということでしょうかね?
「その前に…一休み…一休み…」
ごろりと藁布団の上に寝転ぶ私でしたが、
<スキル:土木作業Lv1が解放されました>
ピコン! とまぁなんというかチープな効果音とともに
そんなメッセージが脳内にドンと登場。
「ひょをぅぁっ!?」
どんな顔かは知りませんが、他人に見られなくて良かったです。
「………土木作業…まぁ、やったことは無かったですし…」
口にしたのはまあ現状を再認識したかったというのがあります。
「………ステータス?」
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≪テツヤ・トウゲザカ(男)(30)(人間【地球人類黄色皮種】)(未)≫
格位:1 <魂奪闘争経験点:0/15>
生命点:32/36
理魔呪力点:10/12
攻撃力:8
防御力:1(+3)
機動力:11,23
理魔呪力:0,0314
耐理魔呪:0,0023
≪スキル≫
無機物無限増殖【Ex-Ⅰ】 射撃Lv1 異言語理解Lv1 土木作業Lv1
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…私は一を聞いて十を知るような天才じゃありません。そんなやつが
住所不定無職になったら世界は終わりですし。まぁともかく、あの時の私は
きっとニヤニヤしてたと思います。
w根w無w
もらったお金を早速無機物無限増殖とやらでそこそこに増やします。
増えたお金が使えるかどうかを村のお店で飲み食いして確かめました。
「……神様あざーす!!」
何のことはありません。幾らでも増やせるお金に取っ払われた言葉の壁……
そこから導き出される答えなんて苦労した人間だったら誰だって思いつくし、
きっと私のように信心が欠片でもあればやらかしてしまうでしょう。
私の奇行に行き交う人々の反応は思いのほか微妙でしたが、
まぁ細かいことはどうでもよいのです。
私はある意味で自由を得たのです。これが喜ばすにいられるでしょうか?
「徒然なるままに…」
今の私はよく知りませんが松尾芭蕉になった気分です。
何しろ何の柵もないのです。幾らでもお金を殖やせて、
しかも言葉もどういう原理か知りませんが普通に通じる…少なくともこの国では
余計な苦労をすることもなく生きていけるようになったのです。
日本社会の利便性と比較してしまうとこの国にも色々と問題はありますが…
それでも公園等で寝泊まりするたびに警官だったりチンピラクソガキだったり
果てはどうしようもないレベルのホモをはじめとするクソ変態どもと関わって
胃がねじ切れるようなストレスを感じなくて済むのですから…。
「温い世界…温異世界…良かった…本当に良かった…」
取りあえず私のすることは一つ。宿屋チェックインとお風呂と酒です。
一つじゃねえやフヒヒサーセン。
ねぐらの公園から変態の気配が消えてくれと切に願う。