一章 夏海
炎が動く夏の海で、炎動夏海。
それが私の名前だ。
お爺ちゃんから聞いた大昔の戦争の話を、時々思い出す。
あれから能力を習得出来るように、色んな事をやった。
どんな能力が発現しても良いように身体を鍛えたし、
古文書や文献などを調べて、能力の発現や歴史について勉強したりもした。
高校に上がってからは、携帯アプリを使って能力を手に入れようともした。
自分が出来る限りの全てを、自分の中ではやってきたつもりだった。
けれど、それと比例せず17歳になった私は今でも何の能力にも恵まれていない。
自分だけが無能力者というレッテル(というか事実)を貼られて、それを覆す事も出来ないことに泣いたりもした。
だけど、何処かで本気の本気じゃなかったのかもしれないーーーー
夏海は毎朝涙を流しながら目覚める。
また、あの夢か…と、涙を拭って寝間着のまま洗面所に向かう。
「今日から新学期…かぁ…」
ため息の様に口から出た言葉だが、決して学校が嫌いなわけではない。ただ、学校を取り巻く環境に馴染めないだけだ。
周り全員が能力に恵まれた世界で、無能力者として生きるのは随分と窮屈だ。
ただ少しだけこの新学期に期待をしていた。なぜなら、クラス替えがあり特別授業(といっても修行のような実習科目)が選択出来るようになるのだ。
この特別授業で、もしかしたら自分は能力者になれるかもしれない。
と胸を躍らせていると、時計の針は8時半を回っていた。
「やばっ…新学期早々遅刻しそう!」
慌てて寝間着から着替え、身支度をして外へ駆け出した。




