表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/61

死者を殺すと黒猫が嗤う(5)

 黒猫の傀儡となったライルが、うめき声をあげ、ロロの首めがけて剣を振り下ろした。



 ロロは目をつむらなかった。その大きな瞳をいっぱいに開けて、せまる剣を、ライルを見つめ続けた。剣が脳天を割ろうとする瞬間まで、ライルを信じた。



 ガギン!



 剣はゾンビの怪力で墓石に突き刺さり、不快な金属音が響きわたる。他には何も音をたてない。金属音が暗がりへと吸い込まれ、不気味な静寂があたりを支配した。



終わった。黒猫が両の目を細める。



階下でグレネが巨石を押しのける音が響いてきた。ぼやぼやしていられない。黒猫は煩わしい仕事の出来を確認すべく、ロロの生首が乗っていた墓石に飛び乗る。



 黒猫がそこで目にしたもの。墓石に突き刺さる長剣、叩き割られた携帯端末、飛び散った水銀、そして笑っているロロの生首。生首は無事。ロロは生きている。唖然とする黒猫。



「残念でした!」



ロロは舌を出して黒猫を嗤い、勝ち誇った。



 バカな!

 なぜライルの剣が逸れた?ゾンビだからか?ならば、と、黒猫は飛び退り「ライルもう一度よ。『塵に返しなさい!』」と命令を下す。



 ライルは低くくぐもった唸り声を上げて、態勢を立て直す。頭を抱えて、ゆっくりよだれを拭いて、だるそうに口を開いた。



「あー、頭がクラクラする……」



「え……?」



 その声は仮死になる前の、張りのある声で、肌は青紫から血色がもどり、姿勢も真っ直ぐになっている。もうライルの仮死状態が切れた?戸惑う黒猫は2、3歩よろめき、後ろ足を水銀の極小の飛沫に触れさせた。



 ライルはそれを見逃さなかった。剣の柄を両手で握ると全身に力を込めて、墓石に突き刺さった剣を引き抜いた。割れた端末からパチっと小さな火花が飛ぶ。すると、黒猫に触れた水銀の飛沫が銀色の閃光を放った。



「!?」



 黒猫が閃光に驚愕したときには、後ろ足が銀色に輝く水銀の紐で縛り上げられていた。結界か!?



 それでも黒猫は、なんとか逃れようと、前の両足で床を蹴る。だが、その両足もまたたく間に水銀の紐で縛り上げられ、黒猫の体が墓地の床に転がる。そこに無数の銀の紐が一斉に飛びかかった。



「ラ…………」



 黒猫が何か叫ぼうとしたが、銀の紐は黒猫の体に巻き付き、口を縛り、目を塞いで、完全に自由を奪い、とうとう黒猫を銀色に輝く繭の中に閉じ込めてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ