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さるとらへび  作者: しーた
死闘編
95/100

第95話

 この一撃に全霊力を賭ける!

更に集中力を高める。

全霊力を朱雀へと注ぎ込む。

これを外したら、もう霊力は無くなっちゃう、それ程の力を流し込んだ。

キーンと耳が痛くなるほどの静寂。


さるとらへびはゆっくりと、ゆっくりと横へ移動している。

私を舐めまわすように観察している。

どんな事にも即時対応するかのように、傷口からは黒い何かがうごめいていた。


ほんの少しでも動きを見せれば対処されるのがお互い分かっている。

トクン…トクン…。

こんな時なのに、やけに静かな鼓動を感じた。

極度の緊張の中にも信じられない程の冷静さが同居している。


霊力は高まり過ぎて空気と同化しているよう。

周囲を覆いつくし、きっと後方の仲間にも届いている。

それほどの力を発揮しながらも、手に持つ朱雀は今までないほどの輝きをしていた。


あいつが私の動きに直ぐに対処出来ることを逆手に取ってやる。

私は左に思いっきり朱雀を振りかぶる。

刀の先は私の背中の後ろの方を向いている。

これでは右に振りぬくことしか出来ない。


だけど、渾身の力を込められる。いや、込めてみせる。

絶対に仕留めてやる!!!

「!!!」

一瞬でさるとらへびの前に現れるのと同時に朱雀を振りぬく動作に入る!

案の定、奴はその動きに反応しようとした!










「「「てんだーーーーーーーい!!!」」」









私は彼の名を叫んだ!!

同時にさるとらへびの胴体が右から左へ押される!

彼は来てくれた!

気絶していたはずなのに私の声が届いた!!







斬ッ!!!







刹那、猿の顔が宙を舞う。

天大は勢い余ってさるとらへびの上部を飛び越え反対側へと吹っ飛んでいく。

間一髪入れず蛇を斬り落とす!






斬ッ!!!






猿の顔は転がり、胴体の虎はヨロヨロして真横に倒れ、尻尾は激しく捻れ暴れながら、そして動きを止めた。


ハァ…、ハァ…、ハァ…。


すると、猿、虎、蛇のそれぞれが静かに黒い粉になり、夜空へ飛んでいく。

信じられないほどの力を発揮出来た。

私の一振りで空中が斬れたかと思うほどに…。


最高の一撃だったよ…。


それもこれも仲間や友や両親のお陰…。


涙が一筋こぼれた…。


長かった闘いが終わったと実感した。


この場に立っているのは私一人。


ついに…、ついに決着を付けることが出来たよ…。


また一筋涙が溢れる。

「ングッ…。」

嗚咽が漏れる…。

誰にはばかること無く泣きたかった。

だけど私は自分のやるべき事を忘れていないよ。


高賀山の霊力を回復しなきゃ。

そうしないと、天大も黒爺も雛ちゃんも、蘭ちゃんも牛ちゃんも、そして多くの仲間も助けることが出来ないから。


涙を拭いて高賀神社の境内へと向かう。

躊躇ちゅうちょなく境内の扉を開け中に入った。

その部屋には23柱の祭神が祀られている。


中心に進み、部屋の中央で両膝を付いた。

本来ならばこの下から高賀山の霊力が供給されているはずだった。

だけど今は魔力の栓で塞がれてしまっている。

井戸のような穴にはたっぷりと真っ黒の魔力が注ぎ込まれ栓がされている。

これを破壊すれば再び霊力が漲るはず。

私は朱雀を両手で持ち刃を床に向けると、思いっきり突いた!


キンッ!!

甲高い金属音が部屋に響く。

あれ…?どうして…?

手を見ると、さっきまで青い霊力のオーラを纏っていたのに、今は全然見えない。その気配すら無いことに気が付いた。


まさか…。

さっきの一撃で、あの膨大な霊力を全部使い果たしてしまったというの?

確かにありったけの霊力を注ぎ込んだけど…。

だって、あんなに溢れんばかりにあった霊力が…。

それほどの力を出さないと斬れないと視えて、体が悟り使いきったのかも…。


私はそう理解した。

でもそれはどうでもいいの…。

霊力が無いと、この魔力栓は破壊出来ないの…。

どうすれば…、どうすれば良いの…?


あれ…?


どうして良いかわからないよ…。

ねぇ、霊力はどこにあるの?

だって、霊力が無いと皆が…、霊力が枯れたら皆が…、消えちゃう…。

黒爺や雛ちゃんや天大だって助けてあげられないよ…。


どうしよう…。どうしよう…。


ハァ…、ハァ…、ハァ…。


息苦しくなってきた。

どうして良いか全然わからない。

パニックになっていたのかも知れない。

そんな事にも気付かないほど混乱していた。


ドンッ!!

両手で床を思いっきり叩いた。

手が痛かった…。

何も出来ない自分に悔しかった。

鬼になってまでここまで来たのに、誰も助けてやれないなんて…。

「私…、どうしたら良いの…?」

私に残された、本当に最後の手段は…。
















神に祈ることだけだった…。





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