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さるとらへび  作者: しーた
死闘編
92/100

第92話

 黒爺さんの、私より小さな体がふわりと飛んで行きました。

私はまるでスローモーションのようにそれを見ていました…。

そう、まるで人事のように…。


それも私を助けようとして…。


こんなことって…、こんなことって…。


私が誰かを助ける為の力だと思っていたのに…。


それが私をかばって傷付く人がいるなんて…。


そんなことって…、そんなことって…。


私の力が足りないのでしょうか?


だから傷付く人がいるのでしょうか?


もっと力があれば全ての人を助けることが出来るのでしょうか?


ドクンッドクンッ…


もっと力があれば…。


もっと…、もっと…。


いつの間にか鼓動が大きく激しくなっていました。


あぁ…、体の真ん中から霊力が溢れてきます…。


あぁ…、体が熱いです…。


あぁ…、体が疼いて…。


「雛ちゃん駄目!」


パシンッ!!!


左頬が痛いです。

ぼやけていた視界がハッキリ見えるようになりました。

目の前では水樹ちゃんが怒っています。

「雛ちゃん!しっかりして!今、あなたがしなければいけないことを考えて!!!」

私は…、何をしようとしたのでしょう…?


水樹ちゃんの後ろでは、蘭丸ちゃんと韋駄天さんがさるとらへびと闘っています。

「水樹ちゃんこそ、さるとらへびと闘わないと…。」

「バカッ!!雛ちゃんが鬼になっちゃうところだったからでしょ!!!」

私が…、鬼に…?

「黒爺をお願い!早く!!」

そう言い残し彼女は、さるとらへびへ向かって朱雀を振ります。


私はどうしてしまったのでしょう?

あれほど熱かった体も収まり、今はいつも通りです。

ハッと我に返り黒爺さんのところへ行きます。

酷い状況でした…。

私は霊力を高め治療を開始します。


だけど…。

これほどの大怪我を治療したことはありません。

朱狐さんの治療だって、あんなに苦戦したのに…。

………。


いえ…、私は朱狐さんの治療さえ易しい部類だと、今は思っている節があります。

現に黒爺さんの怪我は徐々に回復していっています…。

まだ力にも心にも余裕があるとさえ思っています。


あぁ、そうですね…。

私の体には赤いオーラが纏わり付いています。

これは巫女としての力が本格的に現れた証拠、らしいです。


私の力は…、進化したことになります。

ポタッ…、ポタッ…。

汗が滴り落ちました。


体力の消耗は激しいです。

だけど諦める訳にはいきません。

ポタッ…、ポタッ…。

涙も零れていました。


水樹ちゃんが言ってました。

今、私にしか出来ること、やらなければいけないことをやる!!


「「「私にしか黒爺さんは助けられないんだから!!!」」」


思わず叫んだ時、一気に霊力が広がると黒爺さんの怪我は完治しました。

けど、あれだけの怪我を負った黒爺さんは気絶しているのと、深刻な霊力不足で辛そうです。


私は黒爺さんの何かが気になりましたが、今は闘いに復帰することを優先します。

そう、私にしか出来ないこと、どんな小さなことでも良いのです。

それをやるのです。


私は兎に角、蛇の力を削ぐ事が優先だと感じました。

なので、蛇の頭を執拗に防御壁で囲っていきます。

壊されても直ぐに作って、何度も何度も…。

どっちが根負けするか勝負です!

隙を少しでも作れれば、水樹ちゃん達がなんとかしてくれます。絶対に!


それはとても長い闘いでした。

長い時間だったけど、大好きな読書よりも、学校でのテストよりも、ゲームをしている時よりも、信じられないほどの集中力をキープしていました。


夢中になり過ぎて隙が出来て、突如さるとらへびが近づいてくると、蛇での攻撃を受けます。

辛うじて交わしたのだけども、右頬には蛇の攻撃が掠っただけなのにパックリ切れました。

だけど無意識に傷口を塞ぎます。


私は直ぐに、その攻撃してきた蛇の頭を防御壁で何重にも囲います。

直ぐに水樹ちゃんが蛇の胴の部分を斬ります。

すると斬られた蛇は枯れていき、直ぐに朽ちました。


長い闘いの末、とうとう蛇は1匹になっています。

何とかここまできました…。


でも私は、もう限界だったようです。


いえ、遠に限界を超えていたようです…。


済みません…。お役に立てなくって…。


最後まで、この闘いを見届けたかった…、です…。


そして私は気を失い倒れてしまいました。


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