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来客です


「あー……1週間も家とダンジョンの往復してたら太陽光で溶けそうだわー」


時間はたっぷりあるし焦る必要もないと自分で言ったものの、他に行く所がなかったのだよ。

迷いの森も行ったけど全部見るのに大して掛からなかったからね。

でもマイダンジョンのフィールドは広すぎて1週間じゃ2つしか見れなかったよ。

いい運動になったわ。

続きは、ま、そのうちね。


今日の作業は庭でやる。

来客がありそうだと何かが囁いているし、そろそろ太陽の下にいたい。

日光浴って大事だよ!

この1週間で実感した。

モグラもほどほどにしとけってね。


外での作業だからなのか、ほどほど、というよりかなりでかくなったノワールに背中を預けた雪兎は、忘れて……いやいや放置していた確認作業をするべくメニューを開いた。

ノワールと契約して得た黒炎、まずはこれからだ。



黒炎


あらゆるものを焼き尽くす黒い炎


黒炎の顎に食らい付かれたが最後、逃れる術はない


雪兎とノワールのみが扱える能力



すごく危険なんだな。

同じ炎でも炎神とは別扱いなんだろうか?

ちょっと試してみよう。

今回はカカシのない庭なので、ノワールに周囲を影で囲ってもらった。

前回強化魔法が何故か無視されたので、今回はしっかりやっておく。


宙に炎神を放つと、小さなつむじ風になって留まった。

マッチくらいにもできるが、それだと変化に気づかないかもしれないので、50センチほどにしておく。

その横に黒炎を放ち同じ大きさにする。

漆黒の炎と深紅の炎。

変化はないので別扱いっぽい。

なかなか見れない光景だなと眺めていたら、2つの炎が混ざり合いはじめた。

黒は全てを飲み込んでしまうはずなのに、紅はちゃんと残っている。

黒紅の炎。

コレ、もしかして新しいスキルなんじゃ……。



黒炎と炎神の融合により炎神が【黒炎神】に特殊進化しました



アイテムが進化してるからするとは思ってたよ。

炎神の力はなくなってしまったのかと心配したがちゃんと使い分けることができた。

究極の上はなかったはずだが、威力はそれ以上あると考えるべきだろう。

使用者が規格外ならもっと威力は上がる。


「ま、そんなに使わないでしょ」


敵どころか地上ごと焼き尽くしてしまいそうな魔法を使う機会はない……はず。

黒炎神を消そうとしたらバクッとノワールが食べてしまった。


「ちょっ、大丈夫!?」


「問題ない」


世界を灰にしてしまうかもしれない炎を喰ったよこの子!

黒炎使えるからできるんだろうけど、できれば一言欲しかったぞ相棒よ。


平気そうなのでいいことにして次はステータス。

……変化なし!

契約によって何かしらあると思っていたのだが、元からMAXを超えているので変わりようがなかったのかもしれない。

これは規格外の欠点か?

今以上になっても困るのでこれはこれでよし。


アイテムの前にヘルプを見ておこう。

何か新しいことが追加されているかもしれないと期待していたのに、特に何もなかった。

ガッカリ。

そういえばアイテムにレア度の表示がなかった。

稀少価値が解らないのは不便だなとヘルプを閉じた。



ヘルプの閲覧により【稀少度】が追加されました


今後アイテムの稀少度が表示されます



どういうことだオイ。

ヘルプを見ただけで追加?

職業やスキルと同じ扱いなんだろうか。

とりあえず説明を見てみよう。



稀少度


アイテムの入手難易度


アイテムの稀少価値は神級、伝説、固有、稀少、普通、粗悪の6つのランクに分けられている


ランクが高いほど入手は困難


神級と伝説はおとぎ話にされるほど幻的存在



解りやすいレア度だ。

しかも神級と伝説は入手困難ときた。

おとぎ話って、子供のための空想的な物語だよね。

それくらい入手が大変てことなんだろうけど、それを壊すのが自由人なんだよ。

所持品を見てみろ。

異界のダンジョン産は固有種に専用アイテムがほとんど。

そして最も重要な自作品は、全部神級!

あっさり作ってましたね神級品。

そういう称号とか持ってるからなぁ。こればっかりはどうしようもない。

それにモンスター専用アイテムを見つけるのも作るのも自分だけだろうから、神級品くらい簡単に作ってやりますよ!


「んー」


ダンジョン産を含む手を加えたものは黒金冠、ゲームから引き継がれたものは金冠、貰った素材と迷いの森産は無印。

うん、流通させるのは危険だな。

黒金冠が出てきた辺りでそういう予感はしていた。

おとぎ話だとか表現されているものをあっさり流通させたらすごく面倒なことになる。

が、それは人間相手の時だ。

モンスターが金銭のやり取りとか聞いたことないし、人外専用の魔商人には関係なかったわ。

よしそういう時まで放置しよう。

そもそも此処まで人が来るかどうかも解らない。

迷いの森は名前の通りタチの悪い迷路だし、此処への入り口も見つけにくい。

来れるとしたらよっぽど運が良いか相当変な奴だ。


「影の囲い外してくれる?」


被害を防ぐための影がなくなり、たまたま見た森との境界。

そこにはこちらを見ている銀色の体毛を持つ銀狼〈シルバーウルフ〉。

銀狼はノワールを気にしながら雪兎の前にやって来た。

でかいなこの銀狼。

馬か牛くらいある。

おかしいな森狼は大型犬くらいだったぞ?

これが種族差ってヤツですか?


「此処で我等の傷を治す薬が得られると聞いた」


ちゃんと言葉として聞こえるのはノワールとの契約のおかげかな。

それより、



銀狼〈シルバーウルフ〉


銀狼族の戦士


全モンスターの代表として雪兎の元へ偵察と仲介役として来た


ノワールに対して少々恐怖を抱いている



なんだかとんでもない情報が出ている。

ノワールに怯えるのは解るけど、全モンスターの代表ってどういうこと?

この1週間で何が……なんて驚きはしない。

1週間あればそこそこの情報は回るだろうし、話し合いの1つや2つやっているはず。

モンスター内ではちょっとした事件だろう。

何せ、稀少で貴重な薬を素材と引き換えてくれる存在がいるんだから。

騒がない方がおかしい。

これも役目の1つ?

とんでもない面倒事だ。


『目障りならば糧にするが?』


頭に直接声を届ける念話というヤツで相棒がさらっとこわいことを言ったんですがどうしたらいいですかね?

聞かれたくない話をする時にいいな念話って。

どうやるんだ?


『あーあー……あ、できた。いやいやダメよダメ。これも面倒事だけど、こういうのは断っちゃダメ。アタシが断るのは一方的に悪いと決めた何かを倒して世界を救うとかいうヤツね』


『善悪を押し付けて意味があるのか?』


『それが正しいと思ってる自己中な奴もいるんだよ。そういうのの一部が自分達こそが正しいとかぶっ飛んだ考え持って世界を滅ぼそうとかするんだよ』


『ヒトとはおかしな生き物だな』


「魔癒草かな?あるよ」


念話中ずっと観察してますとばかりに見ていたので、銀狼の尻尾がちょっぴり丸まっている。

そんなにこわかったかしら?


「対価はコレで足りるか?」


森狼の時と同じく自身の毛皮を差し出してきた。

立派な毛皮なので魔癒草を多めに渡そうと思う。

この後戻って話し合いをするだろうし、分け合うかもしれないからね。

実際に魔癒草を目にした銀狼は、何か言いたげに口を開くが言葉はない。

悩んでいるんだろうなぁ。

仲介役として来たけれど、それを口にできない。

ふむ、ちょっとしたきっかけを作ってあげようかな。


「そういえば君がアタシの所に来た客第1号だね。特典としてお願いを1つ聞いてあげよう。ただし、叶えるかどうかは内容とアタシの気分次第だけどね」


さあどうくる?

交渉人として来たならチャンスだぞ。


「我等が此処へ来るための“道”を繋げる許しをもらえないだろうか」


「道?」


「ヒトがモンスターと呼ぶ我等には独自の情報網があり、利益不利益を含めあらゆる情報が全ての者へ届くようになっている。それによって遠方の同士にも情報は届くが、傷を負ったままでは此処へ辿り着く前に死ぬ。“道”があれば落とさずともよい命を同士が落とすこともない」


“道”とはワープゲートのようなものなんだと思う。

確かにそれがあればどんなに遠くであっても此処へ来ることができる。

普通なら心配するであろう安全面は問題ない。

家を建てる時にやってあるし、そもそも弱肉強食の頂点である竜がいる此処で暴れようなんて、そんなお馬鹿さんいるのかしら?


「暴れたら喰われるよって伝えた方がいいんじゃないかな」


警告はした。

これで暴れたらその時はノワールの餌だ。

自業自得ってヤツですよ。


「逃げ出したくなるような魔力の持ち主の前で、そんな真似をする愚か者はいないと思うが」


「ん?」


ノワールのことかと思ったが、銀狼の目はこちらを見ている。

聞き間違いじゃなかったみたいだ。


『契約によって変化が起きるのは珍しいことではない。雪兎は既にヒトの域を出ているが、大した問題ではないだろう?』


大した問題だわ!

こっちは人間やめるつもりないんだよ!


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