表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/60

自由人と書いてラスボスは同士を招く

アタシ的に次は火山とか雪山とか砂漠とか、特殊フィールドだと思っていたのだよ。

採取用ダンジョンだからね。

そろそろ来るかな?と期待はしてた。

でも黒霧の先は守護石を遺して消えたはずの古の神殿だった。

ある意味特殊フィールドだよね神殿て。

職業変更とか何かしらのお告げを受けたりするのは神殿だからね。

それ以外に何かあったっけ?

「んー……ん?」

自分と奥にある祭壇の間、ちょうど真ん中くらいが陽炎のように歪んでいる。

なんとなくだが、消えたはずの神殿が再出現したのはアレが原因だと思う。

歪みまで2、3メートルの位置からしばらく眺めてみたが変化無し。

……もしかして何かの入り口系?

歪みの向こうは別世界とか、世界の裏側とかいうそういう系?

歪みに吸い込まれて……とかいうお約束、アタシのダンジョンで起きるとは思えない。

ある人から注意されているので現実だったらすぐ逃げるんだけど、並外れた強化をされている今なら大丈夫かもしれない。

もうちょっとだけ近付いてみようかなと思って、一歩前へ出たら、あるはずの床がなく、足下には真っ暗な闇が口を開けていた。

「うそでしょおおおぉぉぉ!?」

重力に従って穴へ吸い込まれた雪兎は、底がないのではという闇の中を下へ下へと落ちていく。

「あーどうしよっかな」

最初こそ叫んでいたものの、色々あって驚き慣れた雪兎は、落下中でも落ち着いていた。

こんなもの、イケニエモドキ×ビックリ人間発覚に比べたらヒヨコの尻の毛みたいなものですよ!

つまりそんなに驚いてないよ、と。

ちょっとばかり、いやいやかなり特殊になってしまうと、驚きというものは隠れてしまうか旅に出てしまうのだと、教えてくれた先輩の言葉は正しかった。

アタシも同じになってやっと解りましたよりゅう様!


『常識はゴミ箱に捨てろ』


正しいですねあの言葉!

この先もアタシの心の支えにします。

おっと、そろそろこの状況をどうにかしなければ。

【創作】でスキルをと考えていたら、




……ぽふんっ!




何かに受け止められた。

それが落下の衝撃を受け流してくれたので痛みなどは感じない。

一体何が受け止めてくれたのだろう。

とはいえ真っ暗で何も見えない。

こういう時こそ光る苔の出番だ。

アタシのダンジョンはこれが解っていたんだろうか?

弱々しい光が照らしたのは、闇と同化している巨大な黒い竜。

アタシを受け止めてくれたのはこの竜のようです。

てか、トリップ序盤で見るからにラスボス的なのと遭遇するなんて、ただの嫌がらせだよね?

こんなのと遭遇するとは思わなかったよ。

いやしないだろモンスターが出る設定にしてないんだから!

……ステータスその他がMAX以上だから、全力でいけば勝てるかしら?

ところで、アタシなんで受け止められたんだ?




闇影竜が貴女と契約を結びたがっています


許可しますか?




んん!?

あれ予想外のことが起きたよ!?

【絶対安全域】で襲われないのは解ってる。

仮に襲われても全力で抵抗するつもりだった。

まさか契約を望まれるとは思わなかった。

なるほど。

アタシは落ちたんじゃなくて招かれたのか。

闇と同化しているのだろうこの竜にとって、光の世界は行く気なら行ける近くて遠い場所。

まあ好んで行こうとは思わないんだろう。

契約は迷惑どころか大歓迎。

ビックリ人間も一人は寂しいのだよ。

顔を擦り付けてきた闇影竜を撫でる。

うっかり潰されそうな感じだが、じゃれているだけなので問題なし。

竜の皮膚は硬く、刃も魔法も効かないらしいが、アタシには人間の皮膚ゃりちょっと硬いかな?くらいにしか感じない。

この懐かれっぷりも【絶対安全域】効果なんだろうけど、実はもう1つ思い当たることがある。

アタシ、昔から生き物とかに懐かれやすいのよね。

動物園で檻の前に立てば中の動物がアタシの前から動かず、水族館では水槽内の魚がアタシの前に大集合。

すっごい注目されて、いつぞやはテレビカメラも来たっけ。

悪ノリして指揮者のように指示して芸をさせたアタシも悪いんだけどさ。

最初は1匹にだけ芸をさせていたのだよ。

それを見たチビっ子がすっごいキラキラした目で見てくるから、つい。

他にも色々あったなぁ。

うん、アタシ元からビックリ人間だったわ。

でもりゅう様の方が凄かったなぁ。

あれは真似できない。

それはさておき。

ラスボスっぽいのと契約するってなんかフラグ……へし折ってしまおうそんなもの。

もし世界が敵になっても生きていけるもんアタシ。

自由人は好き勝手にやってこそだ。

「家族になろう!」

あれ?これプロポーズっぽくね?

そう思った直後、雪兎と闇影竜を中心に紫色の魔法陣が出現した。

紫の光に照らされて解ったのは、闇影竜の背中に乗っている、そして超巨大であるということだ。

マジでラスボスかもしれないと思ったのは内緒である。

竜と契約なんてついにファンタジーの仲間入りかと思っていた雪兎の前に現れた、黒い炎で描かれた魔法陣。

そこから出現した黒炎がぐるりと雪兎を囲み、左胸へ吸い込まれるように消えていく。

なんだか背中が熱い気がする。

てか、胸に吸い込まれているのになんで背中が熱くなるんだ?

よく見たら闇影竜も似たような状態になっている。

これが契約の儀式ってヤツなのか?

背中が熱いのは契約の証ってヤツが刻まれているからなのかもしれない。

背中じゃ自分で見れないじゃないか。

竜と契約したからたぶん竜っぽいんじゃないかと思う。

出尽くしたのか魔法陣も黒炎になって左胸に消えた。

終わった……のか?

足下の魔法陣が光ったと思ったら神殿内に戻っていた。

もちろん闇影竜も一緒だ。

どうやら契約のために招いただけで、それが済めば居なくてもいいらしい。

「それにしてもでっかいなぁ」

ダンジョンに再出現した神殿は、最初より広くなっていたのに、超巨大な闇影竜にとっては窮屈そうだ。

【創作】で高さと広さを倍にしたら、尻尾を動かせるくらい余裕になった。

狭いよりは広い方がいいよね。

「そういえば名前は?アタシ雪兎」

返ってきたのは沈黙。

この様子からして無いらしい。

名前が欲しいかと尋ねたら、答えはなかったが尻尾が欲しいというように揺れていたので付けようと思う。

黒い炎の契約……。



「ノワール」



黒い竜と黒い炎の契約を結んだ。

ここまで黒に縁があるなら黒<ノワール>と付けるでしょう!




闇王ノワールが雪兎の契約獣となりました


契約により【黒炎】を習得しました




……ん?

アタシの耳がおかしいのかな。

闇王って聞こえたんですけど、空耳ですかね?

ええ、現実逃避ですが、何か?

【黒炎】かぁ。

ラスボスっぽいスキルだ。

ノワールもラスボスっぽいけど、たぶんアタシの方が色んな意味でラスボスだわ。

それにしても採取用ダンジョンで家族ができるとは思わなかったなぁ。

……まさかノワールとの契約も採取の延長?

ま、まあこういうこともあるよね。

新しいスキルも気になるが、まずはノワールのステータス確認だ。




名前 ノワール


種族 神竜


性別 雄


称号 闇王 自由人の契約獣 影の支配者


固有スキル 影移動 影支配


備考 雪兎との契約により特殊進化及び強化されている




チラッと見たステータスはSSS+以上どころか一部∞表示。

どのゲームにもラスボスより強いモンスターっているからね。

契約でもっと強くなったみたいだ。

アタシと関わることで進化するんだろうか?

「アタシにあわせて小さくなれる?」

そう尋ねたら操ったのだろう影に持ち上げられて床に下ろされた。

超巨体が黒いモヤに変わり、再び姿を見せた時にはかなり小さくなっていた。

尻尾も含めて全長が180センチメートルくらい。

フロアを埋め尽くすような超巨体がここまで小さくなったのはすごい。

もっと小さくなれるのかもしれないが、何かあった時を考えてのサイズなんだろう。

移動はどうするのかと思っていたら背中に覆い被さるようにくっついた。

不思議と重くない。

どんどん人の域から遠退いているというのは、気にしないでおこう。

自由人なんてそんなものだ。

そうだ。

今後のためにスキルを1つ作っておこう。




スキル【詳細調査】を作成しました


常時発動され、対象が未確認の場合、詳細が表示されます


確認済の場合、簡易説明が表示されます




これはダンジョンに入る前に作るべきだったな。

それは反省。

もしかしたら、異世界人ていうのは特別な存在なのかもしれない。

次から次へと起きてるけど、まだトリップ1日未満なんだよね。

きっとこの先も色々あるんだろうなぁ。

ま、もう1人じゃないから大丈夫でしょ。

「よし!次行くぞ次!」

今回の収穫は家族ができたことです!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ