採取散歩
フィールド:森
共存しないはずの木が共存し、世間的な普通が大木で、大木が樹齢ウン千年レベルで。
うん、何もおかしくないね。
だってアタシのダンジョンだもん。
普通なんてないのだよ。
素材でない木との区別は間違いなく幹の太さ。
そうでない木は普通だから一目で解る。
実が付いているのが多いから後で採ろう。
「最高だよマイダンジョン。大好きだ!」
とりあえず伐採してみようとオノを取りだし、次から次へと斬り倒していく。
切ったそばから復活していくので尽きる心配はない。
「ん、問題ないね」
幹の太さなんて大した問題ではなかったよ。
アタシ、一撃で倒せたわ。
それはステータスのおかげなのか、スキルレベルがMAXだからなのか、それとも【神木こりのオノ】のおかげなのか。
神木こりのオノ
木こりを極めた者のみが扱えるオノ
固有所有者:雪兎
オノもアタシに合わせて進化したようです。
きっとピッケルも進化しているんだろうが、それは採掘の時に。
「さて、どうしようかな」
雪兎が通ってきた所には、原木+角材がいくつも山を築いている。
量があるので回収を後回しにしていたら大変なことになりましたよ、と。
それにしても無限採掘+所持制限なしってこわいわー。
止めるものがないからいつまでも採り続けちゃうんだよね。
でも、そういう設定にしたことを反省はするが後悔はしていない。
基本的に家とダンジョン、それに迷いの森の行き来をしていくつもりだから、なんでもありありでないと困るのだよ。
何故か特殊フィールドの木はなかったが、それはそっちで素材の森があるだろう
自由度の高いS・F・Lでもやれなかったこともやりたいから、アイテムボックス内の物は出るようにした。
だから出にくかったアイテムも通常と変わらずに出る。
集めるのがすごく楽しみ。
色々とやれることは多いが、その前に。
「この素材の山だよなぁ」
足跡代わりの素材の山々。
身長以上のそれらを回収して歩くのは大変で面倒。
さてどうしよう。
「……先に木の実を集めようかな!」
世間ではこれを現実逃避といいます。
拾った枝で木の実を落とし、届かない位置にあるのは軽く軽〜く幹を蹴って落とす。
すぐに地面は木の実で見えなくなった。
赤、黄、緑、青、紫etc。
効果などは後でまとめてやろうと木の実を集めてアイテムボックスへ入れた。
アイテムの複数回収により【まとめて回収】機能が追加されました
以後、操作や言葉によって使用可能です
職業やスキル以外のものが追加されてないか?
【まとめて回収】機能ってことはメニューの一部で、アイテム類を、か?
「【まとめて回収】?」
地面にあった木の実が消えた。
それどころか素材の山々まで。
本当に回収されたのかとアイテムボックスを見たら、ちゃんと入っていた。
おかしなことに金冠マークが黒金冠マークになっている。
これも後で調べよう。
【まとめて回収】、これは……楽だ。
これなら大量の素材が出てもすぐに集められる。
覚えられたのは良い意味での予想外。
伐採と回収を繰り返していたら、別格を見つけた。
闇色の葉、影色の枝と幹、夜色の実。
その木々があるそこだけが、夜。
夜の林とでも名付けようか。
全部が大木以上な林というのはなかなか見れない光景だ。
とりあえず切ってみよう。
異界の木
異界のダンジョンにのみ生息する神木
この木で作られた物には不思議な力が宿る
雪兎以外に伐採不可能
この木を扱えるのは雪兎のみ
「ついにきたぞアタシ専用。コレクター魂くすぐるわ」
マイダンジョンにのみとか載ってるし、まだまだ出てきそうだよねアタシ専用素材。
異界の木も大量入手。
これは何か作らなきゃいけないね。
その前に生産用の作業場か。
家の中に作るか、別に建てるか。
うーん、悩む。
ま、後でいっか。
マイダンジョンに罠はないが、コレクターなアタシにとってある意味罠だ。
まだ森しか見ていないのに手が止まらなかったよ。
でもそろそろ次に行こう。
「次は何処かなー」
オノを戻して、前に現れた次のフィールドへ続く黒霧を通り抜けた。
◆◆◆
フィールド:採掘場
「なんかこの光景、さっきも見た気がする」
【無双ピッケル】を持つ雪兎の周囲というより、床全体に大小様々な鉱石や宝石が大量に転がっている。
S・F・Lでの採掘は、背丈くらいある水晶状の鉱床をピッケルで叩いてやっていたので、慣れたやり方がいいと同じにした。
どれが何かはっきり解るのがいい。
現実では有り得ないことだがここではなんでもありです。
森と同じく特殊フィールドの物はなかったが、それはそっちでやるからいい。
採掘場にある鉱床を1ヵ所につき5、6回ずつ叩いたら、床に鉱床と宝石の絨毯ができました。
この絨毯の寝心地は悪そうだ。
まさかカンッ、ポロポロポロ、ゴトッ、となるとは思わなかったのだよ。
いくら叩いても鉱床はなくならないから手が止まらない止まらない。
うん、危険な罠だ。
「無敵のピッケルだわコレ」
無双ピッケル
採掘師を極めた者のみが扱えるピッケル
固有所有者:雪兎
ピッケルもアタシに合わせてましたね。
今更なんだけどスキルレベルのカンストってすごいことなんだろうな。
ステータス補正とかのおかげもあるんだろうけれど、一般的に大木、巨木、大鉱床、巨大鉱床なんかは1回では切ったり掘ったりできない。
「アタシ本当にビックリ人間になったんだなぁ」
もし不便だったら【創作】でどうにかしようと思ってたけど、いらない心配だった。
【まとめて回収】で回収して、足場を確保。
採掘場といえば暗いというイメージだがここは明るい。
それはあちこちに自生している光る苔のおかげ。
その光が鉱床やらに反射して内部を照らしている。
「この光る苔……ん、アイテム扱いできる。何かに使えそう」
持ち主に似たマイダンジョンは学び成長してアタシ好みになっていってくれるのです。
じゃなきゃ光る苔なんてアイテム出てこないよ。
他にもないかと探していると、黒い鉱床群を見つけた。
闇色の巨大鉱床。
うん、とりあえず採掘しよう。
異界石
異界のダンジョンでのみ採れる金属でも鉱石でもない不思議な物質
雪兎以外に採掘不可能
この素材を扱えるのは雪兎のみ
「アタシ専用ってこっちの世界でどんだけ価値あるんだろ」
稀少すぎて流通しないんじゃないか?
……考えるのやめよ。
アタシ専用なんだから、他人は使えないんだし。
大量に回収して、他にはないかと探したら、異界石の影にこれまら巨大な宝箱を見つけた。
金と赤の宝箱。
かくれんぼの上手いお宝さんだ。
大きな宝箱には何が入っているんだろう?
某ゲームでは景色の一部扱いで開けるどころか触れもしなかった。
今でも腹立つね。
それはさておき、まさかポーション1つとかいうことはないよね?
パカッと開けた宝箱の中には、消費アイテムが色々目一杯詰まっていた。
あれ?
S・F・Lっていうか、ゲームの宝箱って1つに1種類しか入ってないんじゃなかったっけ?
なんでこんなにいっぱい入ってんの?
……まあ、アタシのダンジョンだしね。
回収後、宝箱はどうやって復活するんだろうと閉めて開けたら中身が復活した。
しかも今度の中身は素材。
同じことを繰り返したら装備品、財宝etcと出た。
集めて回る手間が省けたラッキー!
開けて、回収、閉めてをしばらくやって、他を探す。
光る苔の光を蓄えて発光する水晶モドキ、虹色のキノコ、貝?の化石等々。
採っても尽きないってやっぱり罠だなぁ。
次は何処だろう。
「草系とか集めたいなぁ」
失敗しないんだろうけど調合やり放題だよねぇ。
そんなことを考えながら次のフィールドへの黒霧を通り抜けた。
◆◆◆
フィールド:平原
青い空、白い雲、広大な平原。
ダンジョン内とは思えない。
「空気読みすぎだろマイダンジョン」
要望に答えるとか、なんていい子なんだ。
「群生の規模がすごいなー」
様々な素材がフカフカの絨毯状態。
さっきと違って寝心地は良さそうだ。
だからといって実際にやると大変だしもったいないないので絶対やらない。
「森や採掘場より広そう」
……なんて思ってたアタシよ。
広そうなんてもんじゃない、馬鹿っ広いぞ。
最初はしゃがんでワサッと採りをしていたのだが、途中で無謀だと気付いた。
「あーあーなんでもありありの欠点だわー」
特殊以外が共存+αってことは、とんでもない数になるってことだよね。
植物系の種類の膨大さ、甘く見てた。
「……こういう時こそ【創作】の出番だよね」
こういう広いフィールドでは自力で採取には限界がある。
採取前の素材も回収できるようにならないかな?
いっそアイテムボックスとダンジョンを一体化させれば、回収の手間が省けるか?。
自動的にアイテムが送られるようになっても採取ができなくなるわけじゃない。
本当に採取=運動になってしまうが、今のところ戦う予定がないから、そうなっても仕方ない。
となればさっそく。
異界のダンジョンとアイテムボックスを一体化させ、内部の素材その他を自動転送。
とんでもない反則技だけど気にしない。
アタシのダンジョンだもの。
何をしようと自由でしょ。
ある意味進化した【まとめて回収】を使うとどんな感じになるのか気になって試してみたら、全部消えた。
文字通り根こそぎ回収。
残っているのは素材にならない普通の植物だけ。
本当にアタシ好みだよマイダンジョン。
絶対飽きないわここ。
数秒で復活したので、更に回収。
何処に何が生えるのかを把握したいところだが広すぎる。
というか、素材の回収は済んでいるんだから次に行ってもよくないか?
いつでも来られるから少しずつやっていこう。
「よし次行こう次!」
答えるように現れた黒霧を通り抜けた。