ギルドと、魔力属性と、ルッピと
ルッピとの通信が途切れて早数時間。
とっくにリンダさんに呼ばれて昼ごはんを食べ終わってしまった。
美味しかったのは言うまでもない。
どんだけ交渉してんのかな…。帰ってきたらうんと感謝することにしよう。
しかしこのままでは埒が明かない。リンダさんにギルドの場所を聞いておこう。先にギルドに行って情報収集しておいたほうがいい。アルシアと三日以内に見つけると言ってしまった以上、なんとかして見つけてやる。
「リンダさん、ギルドってどこにあるの?」
「ギルドかい?ギルドならこの宿を出て、東門の方に10分ほど歩くとつくよ。大きいから分かりやすいしね」
「分かった、行ってみる」
そういえば、来る途中にそんな建物があったような気もする。
とりあえず歩こう。
リンダさんの言うとおり、10分で【冒険者ギルド】と書いてあるところに着いた。どうやらリンダさんの歩くはやさは俺と変わらないみたいだ。
俊敏に結構振ったはずなんだが…。レベルのせいかも知れない。
帰ったら鑑定してみよう。
ギルドに入ると、まあ予想通りというかなんというか、陽気な場所だった。
テーブルの上に置かれたカップを頑丈そうな鎧を着た男たちが楽しげに騒ぎながら飲んでいる。お、よくみると女性の方もいる。
男たちとは離れたところで数人で集まって静かに何か飲んでいる。
…雰囲気がまるで違う。横から見ててなかなかおもしろい。
「あたらしくハンター登録する人ですか?」
「あ、はい」
どうやら受付嬢らしき人から声が掛けられた。近づいて顔を見るとなかなか可愛い。しかも常に笑顔。これに元気付けられる人は多いのではないだろうか。
「では、手をこの石の上にかざしてください」
言われた通りに手を石の上にかざした。
うおっ…なんか4色に光りだしたぞ…
「はい、これがあなたのギルドカードです。失くしたら再発行はできますがお金が掛かるのでできるだけ失くさないでください。また、これは身分証のようなものなので、クエストを受ける時などに使います。なので、極力失くさないで下さい」
失くさないで、というのが妙に強調されてたように感じたのは気のせいだろうか。受付嬢さんからもらったカードをのぞいてみる。
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風霧風人 15歳 人間族
レベル.1 ジョブ.冒険者 魔力属性 水・風・光・音
称号.なし 加護.なし ランク.F
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どうやら俺の魔力属性は4種類あるそうだ。結構レアなんじゃないか?
でも時間とか空間を期待していた俺を責めないでくれ。トリップ物ならチートで無双が相場なんだ。まあ充分無双できそうだけどな。
「風人さんですね」
「あ、はい」
「登録したばっかりで申し訳ないのですが、ギルドマスターが貴方をお呼びです」
「え?はい、わかりました」
なんでいきなりそんな偉い人に呼ばれる…。
俺何もしてないぞ?俺の魔力属性のせいか?
「はい、それではそこの通路をまっすぐ歩いて、突き当たりの部屋に入って待機していて下さい」
受付嬢さんの言う通り、突き当たりの部屋まで歩く。
…扉が何故か真っ赤だ。これが異世界なのだろうか?地球の常識は通用しなさそうだ。正直めんどくせえ。公用語が日本語なのが不思議でしょうがない。
数分待つと、扉を開ける音が聞こえた。きっと例のギルドマスターだろう。そちらに体の向きを変える。
「また会ったな!少年よ!」
入ると同時に威勢のいい声で俺に話しかけてきた。……ん?この人宿の場所教えてくれたじいさんじゃん。ギルドマスターだったのか…。どうりで威圧感が半端ないと思ったわけだ。なんであんなところにいたんだろう。
一応鑑定してみるか。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
鑑定をブロックされました。
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…予想通りというかなんというか。
「少年、4属性というのは本当か?」
「あ、はい。これです」
俺は先ほどもらったギルドカードを見せた。他の人にも見える…はずだ。
「ふむ…。これはまたすごい属性が集まっているな。光と音の属性を二つ一緒に持っている人ははじめて見たぞ」
そういえばなんか口調が違う。業務用とかそのへんか?
「少年なら大丈夫だろうが、一応言っておくぞ。お前の持ってる属性は所謂上位属性だ。基本的に下位属性よりは強い。だがその力を過信するな。下位属性も使いようによっては上位属性に匹敵する。さらに上位属性は強力な分扱いが難しい。それを使いこなすことができたらお前は一流だ」
おお…なんか歴戦の勇士のセリフみたいでかっこいい。
言ってることは予想していたものとほとんど同じだ。上位属性が扱えるからといって自惚れるな、ということだな。
「はい」
「よし、お前の属性のことについては、一応王様には報告するが、お前は普通にしていればいい。公にするつもりはない」
「はい、ありがとうございます」
よかった。こういうので目立つのは避けたいと思っていたところだ。
「では、今からギルドのルールについて説明しよう。
お前のカードを見て既に知っているだろうが、まずはFランクとして登録される。ランクは今ついているランクのクエストを10個連続でクリアすることか、1つ上のランクのクエストを3つクリアすることで1つ上がる。最高ランクはSSSランクだ」
なるほど、単純でわかりやすいシステムだ。要はクエストをクリアすればいいってことだな。
「もちろん、大きな功績をあげることでもランクは上がる。
しかし、クエストは自分の1つ上のランクまでしか受けることができない。
たまに自分の実力を過信して、クエストを受けずに大型のモンスターに挑戦して大けがを負って冒険者を廃業するようなアホもいるが、お前は気をつけろよ」
そんなことにはなりたくないもんだなあ。とりあえずモンスターを片っ端から鑑定していけば最悪のパターンは回避できそうか。鑑定はどうやら目の見える範囲全部で効果があるようだから、安全にいけそうだ。
「お前は今は一人だが、いつか仲間を作るような時もあるだろう。
チームメンバーは自分を含めて7人までだ。チームを結成するときはカウンターにいってくれればいい」
チームメンバーか…。俺のスキルはチームメンバーの成長促進だから、ちゃんと見極めて選ばないと危険だな。いきなり後ろからブスリ、なんてことがあってはたまったもんじゃない。
「説明は終わりだ。まずはクエストを受けてみるといい。冒険者の仕事に慣れることがまずは最優先だからな。もういっていいぞ」
「はい。ありがとうございました」
部屋から出て、クエストボードのあるところまで歩いた。
Fランクのクエストにどんなのがあるのか見てみよう。
今日は受けるつもりはないが。
<薬草とり> 報酬金:銅貨3枚
・冒険者がけがをしたときに使う回復薬の素材になる薬草が足りません。ムスクマの薬草を10こ集めてください。
<瓦礫運び> 報酬金:銅貨7枚
・息子が魔法の練習をしていて家を崩してしまった。修理は業者に頼むが、このままでは瓦礫が邪魔だ。誰か排除してくれ。
なるほど、冒険者のやることは単にモンスターを倒すことだけじゃなくていろいろ雑用もあるのか。これらをちょびちょびやってランクを上げればモンスター討伐のクエストもでてきそうだ。詳しいことはルッピに聞けばいいか。
今はひとまず<銀鳥の止まり木>に帰って、クエストは明日やろう。
ギルドを出て、10分歩いた。やはりぴったりに宿についた。
カウンターにいたリンダさんを鑑定してみる。
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リンダ・ラグロート 23歳 人間族
レベル.3 ジョブ.宿屋 魔力属性 水
スキル
・交渉上手
・水魔法 レベル1
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リンダさんのレベルは3だった。どうやら多少レベルが高くても鑑定できるらしい。でも詳しいステータスはわからない。レベルが足りないんじゃないかと思う。
リンダさんと挨拶をかわして部屋に戻った。再びベッドにダイブする。
……やっぱり痛かった。ほんとにもうやめよう。
『マスター!やっとアルシア様を説得できました!』
お、やっとルッピが帰ってきたようだ。測ったようなタイミングである。
それにしても説得に6時間はかかっているぞ…。どんだけ討論してたんだ。
『本来は神界の人はマスターの世界に行っちゃいけないんですよ。
でもそこは私がどうしてもマスターに会いたい、と何時間も粘ったおかげでなんとか許しがでました。私の愛を感じません?褒めてくれてもいいんですよ?』
うんうん、頑張ったな。
『えへへへー』
扱いやすいな…。
『もー、そんなこと言ってると顕現しませんよ?』
悪い悪い。じゃあ、姿を見せてもらおうかな。
『わかってますよ。言ってみただけです。ではいきますよー』
すると、ボフン!とまるで漫画みたいに音を立てて俺の前に全長15cmほどの妖精?が出てきた。きれいなエメラルドの髪の毛と目で、花のヘアアクセサリーをつけている。緑とピンクの、花のような可愛い服を着ている。
『どうですか?』
ああ、正直びっくりしたぞ…。てっきり150cmくらいの人がでてくるのかと思ったら、いきなり妖精さんだもんな。
しかも可愛い服着やがって。なかなか似合ってるよ。
『えへへへ…ありがとうございます、マスター』
ルッピ、これからずっとその姿なのか?それともいつもは神界に?
『いえ、これからはマスターの補佐として、ずっとここにいますよ。普段はマスターの服のポケットにでもいますね』
へー…これから楽しくなりそうだ。夕飯もそろそろだし、ルッピにも食べさせてあげよう。きっと喜ぶぞー。反応が楽しみだな。
遅れてすみません。
学生なもんで昼間は学校にいかなきゃいけないんです。
正直勉強なんてやりたくねえ…でもそういうわけにもいかないので頑張ります。
週に2,3回のペースで更新していきたいと思います。
テストとかで忙しいときはご勘弁ください。
これからもよければ読んでってください。では。