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衝突

「これ…は…」

「ひ……っ!」

「うっ……」


外へと駆け出した俺たちの目に最初に入ったのは、大量の魔物、そしてもはや誰のものか判別がつかないほど荒らされた、屍。


恐らく、俺たちが到達するまでに軍が倒したのだろう。

それでも、魔物の姿は視界を多く占めている。

まだこちらに犠牲は出ていないようだ。


しかし、それだけの死体があるのだから、当然、辺りには鼻が曲がるほどの腐敗臭が広がっていた。

みんな鼻をつまんでいる。勿論俺も。


「うわ臭え……」

「なんとかなんないのかこれ……」


この匂い魔法でなんとかなんないかな……。



『君たち!』


とそこで、俺たちに魔法での遠隔通話が届いた。

声から察するにマスターじゃあない。

軍の司令官とかだろうか?


『今、三匹の竜達はそれぞれ、東、西、南東から防壁を破ろうとしている!Aランク以上の冒険者はまず東にいる黒竜の討伐に向かってくれ!決して東の銀竜や南東の赤竜には近づくな!それ以外の人は魔物を片づけろ!』


「「「「「了解!」」」」」


『それから、これは軍からの支援魔法だ、あまり効果はないかもしれんが、少しは戦いが楽になるだろう』


通信が切れたと思った次の瞬間、後方から色とりどりの魔法が飛んできた。

それが体にあたったと思ったら、悪臭が消えた。

それどころか、なんかフローラルないい香りまでする。

体も軽くなったような気分だ。


体の大きいいかにも歴戦の戦士のようなやつが前に出た。

「よし、今から黒竜討伐に向かう!俺はSランクのジールだ! Aランク以上は俺についてこい!」

「「「おう!」」」


ほえ~、Sランクときたか。

あいつらなら竜の一匹ぐらいはいけるだろ。

じゃあ俺は西にいる手つかずの銀竜からやるか。


誰も見ていなかったらラグナロクで……。

いや無理か。死体が消えたら怪しまれる。


俺のステータスならいかに竜といえども殴り合いで勝てると思われる。

新調した(奪った)武具もあるしな。



早速風魔法で速攻で西側にいる銀竜の前まで辿り着く。


全身眩い銀色で、いかにも西洋のドラゴンみたいな感じだ。

全長20メートルはあるであろう巨体だ。


後ろから近づいたので、まだ気付かれてはいないようだ。

しなくてもいいだろうとは思うが、念のため鑑定してみる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

鑑定をブロックされました。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……は?

鑑定できないレベルの相手だと?

レベル283の俺はレベル333までは鑑定できるはずだ。

50のレベル差があっても鑑定できるとルッピから聞いたから間違いない。


マジかよ……。

正直、異世界舐めてました。


こんな相手に勝てるわけがありません。

仕方がない。奥の手を……。


「フラッシュ!」

辺りに閃光が迸る。初級の光魔法だ。

単なる目眩ましではあるが、ソロでは使い勝手がいい魔法として有名だ。

パーティーだと見方にも効いてしまうからな。

アルシア様からもらったボーナススキルで初級はマスター済みだ。


いくら銀竜でも、これで一瞬怯むはず。


「ギュァア!?」

「今だ!ラグナロク!」

右手にラグナロクを掴み、銀竜の足元へと潜り込み、一気に銀竜の鱗に向かって突き出す。


「傷さえつければこっちの勝ちだ!」


しかし、俺の予想はあっさり外れ、カキン!という音と、鈍い手応えが残った。


「は、弾かれたぁ!?」


確かラグナロクの説明文には「剣によるダメージを受けた瞬間、世界から消滅する」と書いてある。

弾かれてしまったら意味がない!



すぐに俺の存在に気づいた銀竜が、上からのしかかってこようとしてくる。

急いで体勢を立て直し、銀竜から離れる。


「ふう……、こいつを倒すのは至難の技だな。剥き出しの部分でもあればそこから倒せるんだが……」


銀竜の姿を眺めるも、見たところ全部鱗だ。


「仕方ない、《対象把握》」


このスキルは名の通り、対象の姿を把握するスキルだ。

因みに冒険者レベル100で手に入った。


その間に飛んできた尻尾攻撃をバックジャンプで躱す。

大きい図体のせいか、攻撃はあまり速くない。


ひとまず銀竜との距離を空けよう。


直後、スキルが発動し、頭に直接イメージが流れてくる。

……どうやら体の全てが鱗で覆われているようだ。

これじゃあ口の中くらいしかラグナロクが通らない。

ブレスも吐いてきそうなので、口の中を狙うというのは諦める。



「かっぱらってきたミスリルとオリハルコンの剣があるから、今度はそっちで試すか……」


鱗の一つでも剥がせれば占めたものだ。

鱗に覆われていない部分はやわらかいはず。

そこを突けばいける。


「まずはミスリルだ!」


風魔法を使い、自身を加速させ、一気に銀竜へ迫る。


「はああっ!」

上から大きく振りかぶって、足を切りつける。


ガキィィン!と大きな音がして、ミスリルの剣が根本から折れた。


「はぁ!? これ大金貨3枚分もするんだぞ!?」


もはや使い物にならない剣を捨て、また距離をとって攻撃を躱す。


「おいおい、これでオリハルコンも折れちゃったりしたらどうすんだよ」


オリハルコンの剣を取り出し、正面に構える。

風魔法を用いて高速で回り込み、後ろから尻尾に切りかかる。


ガガッ! っという金属同士が擦れる音と同時に、剣からピシッっと聞こえた。


「やべえヒビ入った! 次切ったらおしまいだぞ!?」


でも、もうすこしだけ切れ味が良ければいけそうだ。

どうする? 考えろ、俺!

今までファンタジー物をたくさん見てきたお前ならいける。



   ◇



銀竜との攻防(俺は避けてただけ)を繰り返すこと数十分。

俺は新たな試みをしていた。

魔法を使うのだ。

途中、風魔法を何回か使ったおかげか、中級まで習得することができた。


今しようとしているのは、所謂エンチャントだ。

風を剣に纏わせ、切れ味を増して攻撃する。

こうすることで、銀竜であれども切れるはずだ。


攻撃を回避しながら、風を剣の近くにのみ発生させ、剣に纏わせる。

イメージは小さな台風を剣を中心に発生させるイメージだ。

「目」のある台風ならば、剣も傷つくことはない。


因みにさっき竜巻のイメージでやったら見事に剣が折れた。

っていうかばらばらになった。

鋼の剣を練習台にしてほんとうに助かった。



何度か試しているうちに、これはと思う出来が何回かあったから、コツは掴んだ。あとはイメージ通りにやるだけだ。


剣に魔力を流し、風を纏わせる。

静かに、大胆に、繊細に。


瞬間、風が一層大きくなり、剣に纏った。


「うっしゃ!やっと成功だ!」


剣を上段に構え、銀竜の顔へ向かってジャンプする。

剣が纏う風が唸りを上げ、刀身の何倍にも伸びた。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」


渾身の力を込め、強く振り切った。


ズシャアアン!!と鈍い音で、銀竜の首が落ちた。

一瞬遅れて、切断面から赤き鮮血が吹き出した。


「はあ、はあ、はあ……」


『風霧風人はレベル324になった!』


やっぱりレベル上がるよなあ……。

でも黒竜帝(ヴェスティエール)に比べたら異常な強さだったのに、あんまりレベルは上がんないな。


余りの疲れに、地面に座り込んだ。

ラグナロクを使わないで倒すことに成功して良かった…。

オリハルコンか、さすが幻の金属と言われるだけあってすごいな。

剣先に視線を落とす。


「な、ないっ!?」


こちらもポッキリと折れていた。

よく見ると遠くに落ちていた。

畜生、俺の大金貨10枚がああああああ!



『レベルが300を突破しました!

これより経験値ストックシステムが追加されます。

これは、レベルアップ時にたまった経験値を貯めて置き、ジョブチェンジした別のジョブに任意に配分できるというものです。なお、これはレベル300に達していないジョブでは効果はありません。使用しますか?』



なるほど……。

これ以上冒険者のレベルを上げても意味ないし、「はい」で。



『実行いたしました。なお、経験値の配分はパーティーメンバーにも適用が可能です。色々お試し下さい。それでは、楽しい異世界ライフを!』



この脳内アナウンスってルッピが担当してんだよな。

ルッピ置いてったのに抗議の声が聞こえてこない。

いつでも俺の脳にリンクできるはずなんだが……。



取り敢えず、この死体をなんとかするか。

首の切断面にラグナロクを突きさし、素材を回収する。


今回は粒子になって消えたのではなく、ラグナロクを突き刺したらスッと消えた。アイテムボックスをみるとやはり大量の素材が収納されている。


相変わらず原理がよく分からない。



「あ、やべ……」

うっかりラグナロクを使っていた。

ちょ、おいこれ見られたりでもしていたらどうすんの!?


まあいっか。多分見られてないだろうし、この戦いが終わったらすぐに街を離れればいいしね。


さて、ちょっと休んでから黒竜討伐に参加するか、赤竜を倒すかだな。



『みんな!』


おっと、通信だ。


『朗報だ!たった今黒竜の討伐と、殆どの魔物の駆除に成功した!みんな本

当によくやってくれた。感謝する』



なんだ、黒竜の討伐は終わったのか。

あいつら、なかなかやるな。



『それでは、すこし休んで貰って欲しい。指示は追ってしよう』



じゃあ俺は、残りの赤竜を倒してこようか……。

流石に銀竜並の硬さではないだろう。



『ところで、風霧風人くん。こちらから見ていたよ。銀竜の討伐、本当にありがとう。すごい戦いぶりだった。あんな風魔法の使い方をするとはね…』


げっ!

まあ、そりゃそうか。

気付かないはずはないよな。

銀竜が消えた事に関しては……。


『安心して欲しい。これは君個人への遠隔通話だ。ギルドマスターから話は聞いている。きっと、今回の討伐に参加してくれると思ったよ』


「まあ、断る理由はありませんしね。やっぱり自分が住んでいる場所ぐらいは、自分で守りたいと思ったからですよ」


『ははは、そうか。まだ赤竜が残っているが、防壁はあと1時間ほど持つはずだ。少し休んでから、君には赤竜の討伐をお願いしたい』


「ええ、もとからそのつもりですよ」


『そうか、ではこちらからできる限りの援護は「司令!」なんだ?』


『「たった今、赤竜に防壁を破られました!攻撃力が大幅に上昇した模様です!」なんだと? 魔道師隊、急いで防壁の修復にかかれ! 風人くん、悪いが急いで赤竜の討伐に向かってくれ! このままでは都市に被害が出る!』



「り、了解!」


防壁が破られた……?

まずい、中にはルッピとミーシャがいるのに……!


「ルッピ!ミーシャ!待ってろ、今すぐ助けに行くからな!」


風魔法を全開にして、俺は都市の中へと急いだ。

やっぱり戦闘シーンの描写は難しいですね。

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