決断
大変お待たせしました!
色んなごたごたも終わって学校がやっと始りました。
受験勉強とか受験勉強とか受験勉強とかあるので週一の投稿はきついかも…。
できるかぎり時間を見つけて出したいと思います。
「竜!?」
「ああ、今は軍に所属している魔道師たちが都市に防壁を張ってくれているが……相手は竜だ。多分3時間ももたないだろう」
軍の魔道師でも3時間しか持たないのか…?
そんな相手に俺が挑んだところで無意味じゃないか?
そもそも何故竜が?
「なんで竜が3体も襲ってきてるんですか?」
「それも今のところはほとんど分かっていない。ただ……」
「ただ?」
「3匹の竜に共通しているのは、どれもかなり怒っていることなんだ。それもこの都市を壊しつくしても暴れ続けていると予測されるほどだ」
怒っている……?
「それぞれの竜の体の色は同じなんですか?」
「いや、それも違う。一匹は黒だが、他のは銀と赤だ。黒い個体は他の2匹より体が小さくてな、もしかしたら君の倒した黒竜帝の子供なのかもしれん。他の2匹は君の倒した黒竜帝クラスだ」
え、もしかして竜が暴れてるのは俺のせい!?
あの「お前が父さんを……許さない!」っていうあれか!?
でも黒い竜は俺のせいとしても、他の2匹はなぜなんだ?
「そんな大物が……。」
「ああ、黒い竜一匹なら冒険者共でなんとかなったんだが…」
「他の2匹はきつい、ということですか」
「ああ、なんせ竜帝クラスだ。冒険者には荷が重い」
俺が黙ってどうするか考えていると、マスターはまた話を続けた。
「この混乱に乗じて、いつもはあまり攻撃的ではない魔物も襲ってきている。竜の統率下にあるのかもしれん」
そんな……。
絶望的じゃないか…。
「君は黒竜帝を倒したんだろう? なさけないが、今の冒険者ギルドに竜を倒せるほどのやつはいないんだ、身勝手な話だとは分かっているが、今は君を頼るしかないんだ。頼む、力を貸してくれ!この通りだ!」
そういってマスターは、俺に深々と頭を下げた。
マスターの後ろにいたギルド関連者であろう人たちも一緒に頭を下げた。
俺がやらないと、この都市は壊れてしまう。
たった数日とはいえ、お世話になったこの都市。
異世界に送られて、最初についた場所。
そもそも、こんなすごい人たちに頼られている。
ここでやらなきゃ、男じゃないな。
とか、ちょっとかっこつけてみたり。
「マスター、もういいですよ。頭を上げてください」
俺の口調から何を悟ったのか、マスターはゆっくりと頭を上げ、苦渋の表情を作った。
「そうか、君にも事情はあるよな…。行くぞ!」
「ええ!? ちょ待って下さい!」
しかし俺の叫びは虚しく響き、マスター達は颯爽と行ってしまった。
なんで!? 俺断るつもりじゃなかったのに!
無駄にかっこつけようとしてもったいぶったのがいけなかったのか。
アホした……。
まあいいか。別に俺一人で勝手に参加してもいいよな。
「リンダさん! 二人を安全なところに連れていってあげて下さい!」
リンダさんは一瞬驚きの表情になり、軽く息を吐いた。
「よし、二人はあたしに任せていっといで!」
「はい!」
そういって俺は、宿を離れた。
◇
40分後、武器屋と防具屋と鍛冶屋を回りまくった俺は〈戦闘者募集〉という看板のところに来ていた。
店は、どこも営業していた。
逃げることなく、戦いに行く俺達に武器を支給している。
赤字だ、とかなんて考えていなかった。
俺は鍛冶屋から一番いい武器と防具を大金貨10枚置いてかっぱらってきた。いや、ちゃんとお金はらったから買ってきた、という方が正しいか。
まあ一瞬で鑑定してどれがいいか判別してから買った。
いや、どちらかというと奪った。
鍛冶屋のおっちゃんの「おいテメェ待ちやがれ!」という声が聞こえたし。
別に他のみんなには支給してんだからいいじゃん。
あ、俺があまりに弱そうだからか。
俺以外にもっと活用してくれる人がいると思ったのか。
……やっぱ最初お金ケチってないで高価なのを買えば良かった。
これ以上考えると引きこもりたくなるので、頭から邪念を追い払って周りを見渡した。たくさんの人たちが集まっている。
「俺のこの華麗な剣さばきで竜なんてイチコロだぜ!」
「ふん、お前の剣なんて所詮店売り品だろ? 見ろよこの剣! 鍛冶屋のおっちゃんにオーダーメイドで作って貰ったたまはがね製の剣だ。これで倒してやる!」
「俺の火魔法で竜なんか丸焼きにして食ってやるぜ!」
「おいおい、味方は巻き込むなよ? お前、魔法制御下手だからな」
「う、うるせっ! もちろん分かってるよ!」
「私は命知らずに竜なんて狙わずに、周りの魔物を倒すの!」
「ゴブリンを30体も倒せば銀貨5枚くらいは行くわよね? 荒稼ぎのチャンスだわ!」
こいつらは、死んでしまうかもしれないなんて全く考えていない。
どいつもこいつも、楽しそうな顔をしている。
まるで腕試しでもしにくかのように。
うし、俺も負けてられないな!
「諸君!」
と、そこにギルドマスターの一喝が横切った。
周りは一瞬で静まった。
そう、この団体はギルドが勧誘していたものなのだ。
まさかマスターは俺がここに来ているとは思わないだろう。
「諸君、よくぞここに来てくれた! ここに来た、ということがどういうことか分かっているな? 死ぬ可能性は高い。無理に戦えとは言わない。生き延びたい者は今からでも逃げろ! 」
「何を言ってるんですか! 死ぬのが怖いなら最初からここに来てませんよ!」
「俺らなら絶対いけます!」
「お前ら……。よし、ではこれから出発だ! 防壁はあと2時間で壊れる。その前にやつらを殺るぞ!」
「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」
勇ましい掛け声と共に、俺たちは防壁の外へ向かって走った。
周りの奴らから、負の感情の色は見えない。
どいつもこいつも、輝いている。
やってやろうじゃないか。
タイムリミットは、2時間。