市場、そして新たな仲間
市場には、宿から草原とは反対方向に20分ほど歩くとついた。
道の両側にお店が並んでいて、商店街のような感じだ。
武器なんかのお店もあれば、食材を売ってるお店もあるし、モンスター素材や回復薬を売ってるお店もある。
「色んなお店がありますねー」
ルッピが目をキラキラさせてお店を見ている。
やはり女の子は買い物が好きなんだろうか?
「あとでルッピに何か好きな物を買ってやるからな」
「いいんですか?」
「ああ、折角市場に来たんだし、何か欲しい物くらいあるだろ?
武器を買った後にレストランにでも行くか?」
「はい!」
まずは自分の武器を買うために武器屋を覗いてみる。
「すみませーん」
店に入ると、壁には剣や槍が立てられていていた。
店の奥は、鍛冶のスペースになっているようだ。
「なんだ坊主? 冒険者のようだな。武器か?盾か?」
無精ひげをはやして、筋骨隆々の親父さんがはなしかけてきた。
鍛冶屋をやってるとこうもガタイがよくなるのか?
「ええと、今持ってる皮の盾より強い盾と、それなりに使える剣がほしいです」
「はっはっは!お前みたいなひよっこがか? 金はあるのか?」
「失礼な人ですね。マスターを侮辱するとは大罪ですよ!」
「まあまあルッピ、この人も本気で言ってるわけじゃないよ、多分」
「多分なんですか!?」
「お前さんの頭に乗ってるのは妖精族か?
珍しいな。フェアリーは本来人を嫌う種族なんだが…」
「いえ、まあ色々ありまして」
「私とマスターは凡人には到底理解し得ないほど深い絆で結ばれているのです!」
ない胸を大きく張って、ルッピが「えっへん!」とでもいいたそうな姿勢になっている。俺何かこいつに好かれるようなこと何かしたか?
なぜ懐かれているかさっぱりわからない。
会って4日しか経っていないのに。
「そうだな…これなんてどうだ?」
そういって親父さんは、一本の剣を取り出した。それを鑑定してみる。
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鋼の剣
ごく普通の鋼の剣。
冒険者なら一度は握ったことのある剣。
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「鋼の剣ですか」
「ああ、お前にはこれぐらいでいいと思うぜ。盾は…そうだな。鋼の盾でどうだ?」
そういって親父さんは、鋼の盾を渡してきた。
「はい、ありがとうございます。いくらですか?」
「そうだな、全部で銀貨2枚といったところか。」
アイテムボックスから大金貨を1枚取り出し、親父さんにあげた。
「すみません細かいのないんですが」
「お前これをどこで…いや、余計な詮索は止そう。ほら、おつりだ」
親父さんは金貨99枚と大銀貨99枚と銀貨を8枚渡してきた。
今の一瞬で計算したのか…?
なんて計算スピードだ。ぶっちゃけ一枚くらいなら大金貨なくなってもいいので、計算せずにそのままアイテムボックスにぶちこむ。
「またこいよー」
武器屋をでて、鋼の剣と盾を装備する。
「失礼な人でしたね。マスターを侮辱するなど有り得ない事ですのに」
「ははは……」
ま、まあ嫌われるよりかはいいか…。
あまりに懐かれるのも返事がしづらいなあ…。
防具はひとまずこのままでいい。防御も300越えてたし、今はなんとかなるだろう。回復薬なんかを買っておこう。
武器屋のすぐ横が道具屋だったのでそこに顔を出す。
「いらっしゃい」
「最近冒険者になったばかりなんですが、何か必須品はありますか?」
「ああ、それならこの初心者セットだな。最近は魔物も増えたし、冒険者になるやつが多いんだ。だからこれはどの道具屋にも準備してある。
一人でも有用な冒険者が増えるのはいいことだしな。最初のうちに死なせてしまっても意味がない」
人のよさそうな顔した店主が、箱を渡してきた。
蓋を開ける。
中には回復薬、解毒薬、包帯に絆創膏が入っていた。
初心者セットっていうか……救急箱?
回復薬さえあればいいので、購入することにする。
「いくらですか?」
「ああ、銀貨2枚だ」
「マスター、これはぼったくりです。こんな初歩的なアイテムがこんなに高いわけありません。精々銀貨一枚といったところですよ」
「いやお嬢さん、うちのは品質が良くてね…」
「いくら品質が良くても相場の倍なんてとりすぎです」
「分かったよ、お嬢さんに免じて今回は大サービスで銀貨一枚にしておくよ」
銀貨を一枚だして店主にあげる。
「ありがとうございましたー」
店を出て、商店街をぶらぶらした。
なかなかおもしろいお店がいっぱい並んでいる。
ルッピではないが、お店を見てまわるのは楽しい。
ただ、行く先で毎回ルッピが過保護なお母さんみたいなことを繰り返している。別にいいだろお金いっぱいあるんだし…。
体は小さい割りに自己主張は大きいようだ。
「マスター、今何か失礼なこと考えませんでしたか?」
「いや何も?」
ルッピは顕現する代わりに、人の心を読む力を失っている。
もしそのまま残っていたら、有罪の宣告を受けていたと思われる。良かったよほんと…。
「おなかも減ってきたし、レストランを探すか?」
「はい! あ、あそこはどうですか?」
ルッピの指す店に向かおうとした時、ふと声をかけられた。
「おにいさん、ちょっといいですかい?」
「はい?」
「先ほどから見ていましたが、どうやら店を巡っている様子。
なら、私の店も覗いて見てくだせえ。」
「え?いやちょっと…」
「なんですかあなた、マスターに触らないで下さい!」
「まあまあそういわずに…」
謎の男に引っ張られ、路地にある店に入れられた。
ソファーに案内され、座ってくれと言われたので、そのまま座った。
周りをざっと見回すと、接待室のような部屋だった。
奥に扉が2つある。
「なあ。ここはなんの店なんだ?」
「へえ、ここは奴隷館でさあ。おいらは奴隷商人のザギー。おにいさんもわけえですし、奴隷を買ってみるきはねえですかい?」
「奴隷…? なあルッピ、どう思う?」
頭の上でほっぺを可愛く膨らませて、ぶすっとしているルッピに問いかける。
「はい、冒険者の人たちはお金を持っていたらみんな奴隷を買う人が多いようですよ。適当にギルドでパーティーを組んだりして、報酬を分けるときに喧嘩になったりする人たちも少なくありませんですし。」
「なるほど…。そこらの信用ならない奴らより、奴隷だとそういうこともないし良さそうだな。」
「パーティーを組んで狩りをしていたらいきなり後ろから刺された、ということもよくありまさあ。奴隷だとこういうことはないから、その点でも優秀ですぜ。」
「まあ私としては不本意ですが、マスターがいるというのならそれで構いませんよ。私では戦闘に参加できませんしね」
「よし、じゃあザギー。どんな奴隷がいるか見せてくれ」
「へえ、男と女のどっちを見るかい?」
「そうだな…」
個人的には女性がいい。いやむしろ筋骨隆々な男と組むなんてありえん。
筋肉ダルマな男の奴隷なんて買ったところでルッピが文句いいそうだしな。
臭いとか。多分俺も言う。
「じゃあ女で」
「へえ、こちらでさあ」
そういうとザギーに右側の扉に通された。
中は牢屋みたいになっている。奴隷というと汚いイメージがあるが、異臭はしない。商品なんだから綺麗にしているのだろう。
「おいお前ら、こっちに並べ。」
ザギーの口調が変わった。先ほどまでの口調はなんだったのだろうか。
あれじゃあ敬語かどうかも微妙なところだし、この口調で話せばいいのにな。
ザギーが号令をかけると、およそ15人ほどの女性が一列に並んだ。
みんな普通の服を着ている。もっとぼろいものをきているのかと思った。
右からひとりずつ見る。
……なぜかやる気を感じる。そんなにここから出たいのだろうか?
それにしてもアピールしすぎだと思う。
ウインクまでしてきたぞ…。
右から3人目を見たところで、俺の動きは止まった。
ね、ねこみみだとぉ!?
獣人がいるのは知っていたが、まさかこんなアニメみたいな子がいるとは思っていなかった。すげえ…本物の猫耳だ……。
「マスター。顔がいやらしいです」
うるせえ。
彼女から目を離し、左に向かって見ていく。
どの子もかなり可愛いが、やはり猫耳の子の印象が強すぎるせいか、特に目を惹かれることはなかった。
「こいつらは当館のお勧めでさあ。気に入った子はいねえですかい?」
「うーん、そうだな。じゃあ右から3番目の子」
「わかりましたぜい。少し準備がいるんでさっきの部屋で少し待っててくだせえ」
やはりえりすぐりだったのか。
元の部屋に戻り、ソファーに座ると、ルッピに話しかけられた。
「マスター。どうしてあの子を選んだんですか?」
「ああ、体も丈夫そうだったし、獣人だから戦闘面も期待できそうだろ?」
とりあえずそれっぽい理由を言う。
猫耳で顔も可愛かったから、などとは決して言うまい。
また有罪判定をくらう。
「確かに獣人の方は戦闘で活躍しますけど…」
「だろ?」
話しているうちに、ザギーが彼女をつれて戻ってきた。
「それで、お金の件でさあ」
彼女がいる前で金額の話をするのはどうかと思うが、ここはそんなところなのか?
「ざっと、大金貨5枚でどうですかい」
「分かった。ほら」
そういって大金貨5枚を渡す。
買った!といいそうになったが、ここはポーカーフェイスを貫く。
嬉しそうな顔をしていてはカモだと思われる。
いや、もしかしたら既にぼったくられたかも知れん。
今なら取り消すこともできよう。
だが……!
夢にまで見た猫耳を前にして、たかが大金貨5枚程度でけちけちしてられるか!
俺はその賭けに乗ってやるぜ、ザギー。
「へえ。確かにいただきやした。じゃあすこしこっちにきてくだせえ」
困惑の表情を浮かべて、ザギーの近くにいくと、何やら詠唱を始めた。
奴隷契約の呪文だろうか?
『隷属魔法スキルの習得しました!』
え? 俺詠唱聞いただけなんだけど!? スキル安っ!
エージーなのかハードなのか良く分からない世界だとつくづく思う。
「だんな、これでおわりやしたぜ。彼女はもうだんなの奴隷でさあ」
「ああ、ありがとう」
「ほら、だんなのところにいきな」
彼女は恐る恐るといった感じで俺のところに近づいて来て、ぺこりと頭を下げて、
「あ、あの、これからよろしくお願いします」
と言った。頭を下げるときに猫耳も一緒にお辞儀した。
可愛かったのは言うまでもない。
「おう、よろしくな」
彼女の手を引いて、奴隷館を出る。
「んじゃ、飯食いにいくか!」
「え……?」
困ったような顔をした猫耳ちゃんをさっきルッピが行きたがってたレストランまで連れて行く。
なぜかルッピは少しぶすっとした顔だった。
テスト終わりましたー!
国語だけ返されたのですが、クラスのみんなより酷い点数でした。
やはりゲームをしていたのが悪かったか……?