表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

~最後の約束~


「そんなこともありました~」




 目の前の千里が元気な笑顔を向ける。


 おどけて、まるで生きているように笑うのだ。




「久。今日は約束の日だよ。


時間はたくさんあるようでいて、短いんだ。


思いっきり楽しもうよ!」




 死んだはずの千里が、しっかりと俺の腕を掴んだ。


 これは夢だろうか。


 夢なら覚めないでくれ。


 約束のクリスマスを一緒に過ごすためだけに、千里が生き返ったのなら、もう二度と離したくない。


 俺は、しっかりと千里の手を握った。




「冷たい……」




 千里の手は、氷のように冷たく。


 体温を感じることができなかった。




「ねぇ、久。周りを見て」




 言われるままに周囲に目を向けると、今まで多くの人で賑わい、元気に走り回っていた子供の姿がなかった。


 マーチングバンドは、ドラムやトランペットを鳴らし


 風船をもつ着ぐるみは、確かにさっきと同じようにいるのに。


 俺は、寒々とした園内に違和感を覚えた。




「これは……?」


「貸切りってわけじゃないよ。そう思ったでしょ?」




 いや、遊園地を貸切りに出来るなんてことは、考えたこともないさ。


 でも、あまりにもさっきと違いすぎるじゃないか。




「ほら、あっち」




 千里が指差す方を見ると、幸せそうに肩を寄せ合う恋人同士の姿が目に入った。




「他にも、ほら、ほら」




 あっちこっちと指を向ける。


 確かに、あちこちに恋人同士ばかりか、親子連れの姿も見ることが出来る。しかし、それらは、さっきと違って圧倒的に少ないのだ。




「おかしいよ……」


「いいんだよ。みんな、最後の約束なんだから」




 千里が哀しそうに俯いた。




「ね! だから、時間の限り楽しもうよ!」




 千里が懇願するように、俺の顔を見た。俺は、力強くうなづいた。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ