~千里~
『もう一度……一緒に……遊園地へ……行こう……ね……』
病院のベッドで、病魔と闘いながら千里は言った。
去年のクリスマスには元気だった千里。
それが、半年の間に体力が落ち、起き上がれないようになってしまった。
『体力つけないと、一緒に連れて行ってやらないぞ』
体力の落ちていく千里に、俺は激をとばした。
学校とバイト。そして、病院。それが俺の日常になっていた。
『あら、久君。今日も来てくれたの? ありがとう』
千里の母親は笑顔で俺に挨拶してくれるが、笑顔の下には多くの涙が隠れているのを知っていた。
もうダメかもしれない。
時間の問題なんだ。
分かってはいても、もう一度元気になって欲しくて、俺はあらゆる夢を千里に語った。
『夏にはプールに行こう!
千里の水着姿は見たくないけどな。
どうせ、ペチャパイの千里はスクール水着だろ』
今までなら、『失礼だね!』と元気に返してきたのに、力なく笑うだけだった。
『クリスマスには何が欲しい?
プレゼントするからさ。
そうだな、千里にはクマさんの着ぐるみパジャマか?』
元気な千里なら『欲しい!』と飛びついてきただろう。
バイト代が入ったら、ベッドに寝ている千里に着ぐるみパジャマをプレゼントしてやるよと、バカにしたように話してやった。
それでも、力なく笑うだけだった。
11月。
後1ヶ月でクリスマスという日に、千里は笑顔を向けることなく、天に召された。
俺は、もう……千里の笑顔を見ることができなくなった。