一度きりのオプション
短編です
健康診断で病気が発覚して、医者からすぐに入院するようにと言われた。手術が必要になるが、手術をしても、後遺症が残ったり、成功率が低かったりと脅された。結局手術はしたけど、あまり経過は良くないから、術後は通院を続けた。でも結局、良くなっていくわけじゃなくて、緩やかに俺は弱って行った。
病院の天井を見つめる生活はあまりに苦しくて、つらい。
消灯時間になって、目を閉じて、しばらくすると、俺は見知らぬ場所にいた。
え、俺もしかして死んだの!?もう!?嘘だろ!?
「マダ死んではいなイ、が、ホドなくして、死が訪れル」
俺の目の前に“ザ・死神”と言った風貌の男が現れた。アニメとかでみるような、大きなカマを持ってる。死神って本当にカマ持ってるんだ・・・。
「マダ生きてイたいカ?」
そう問われた。病気が発覚してから、ずっと入退院を繰り返していた。やり残したことなんていくらでもある。まだ、生きる希望が持てるなら、俺はまだ生きていたい。
本当はもっと歳を取るまで生きていたいけど、この際、強欲なことは言っていられない。せめてもう少し、一年でも二年でもいい。
「まだ生きていたい!」
死神は懐から本を取り出して、何かを調べ始めた。
「お前が積ンだ徳ヲ使えば、アト一年ほどは生きるコとが出来ル。寿命を一年延ばスか、他にモ・・・」
「寿命を延ばす!一年で構わない!」
それ以外の答えあるわけがない。
死神が「承知しタ」と言って、冊子に何かを書き込んで、俺に手をかざした。
気が付くと俺は病室にいた。
「やった・・・のか?一年寿命が延びたのか!」
喜んだ俺だったが、医者にその話をして、半信半疑の医者に無理やり検査をやり直してもらったけど、体調は変わらず、入院状態は変わらないと言われた。
でも俺には一年分の寿命があるはずだと、リハビリも懸命にこなした。でも病状は良くはならなかった。
緩やかに緩やかに体が衰えていく。おかしい。俺は一年も寿命を延ばしてもらったのに。退院出来たら、まだまだやりたいことをやろうと思っていたのに。時間が、時間が欲しい。
一年ほど経ってだんだん体に無理が効かなくなって、俺の視界はほとんど病院の天井しか映さなくなった。時々見舞いに来た妻や息子の顔が俺を覗き込んだけど、それに返答する体力もない。
目が、開けてられない。
気が付くとまた、俺はあの時の不思議な空間にいた。あの時と同じように、死神が俺の前に現れた。
「時間だ。迎エに来たゾ」
「お前!嘘つきやがって!一年寿命延ばすって言ったじゃねぇかよ!」
「延びたデあろウ・・・」
「延びたって、一年間ずっと病院のベッドの上じゃ何もできないじゃないか!」
「あ、健康寿命を延ばしたかったんですか?じゃぁ最初にそう言ってくれないとぉ!」
死神は急にフランクな喋り方に変わったかと思うと、懐から冊子を取り出して、俺に説明を始めた。
「あのですね、あなた“寿命を延ばす”って言いましたよね?そうなると、単純延命コースになるんですけど、“健康寿命”を延ばしてくれって言ってもらえてたら、病気を治すパターンも選べたんですけどねぇ。もっとこう重厚な言い方で、“お前の積んダ徳を利用しテ、健康にしてヤルこともできル・・・・”みたいな!?皆さんあまり最後まで聞いてくれない方が多くて、この台詞あんまり言えないから言いたかったんですけどねぇ。あなたも説明を聞かずにすぐに延ばしてくれって言うから、寿命だけが延びちゃったんですよぉ~」
にっこり微笑んだ死神の顔に一発拳をお見舞いしたい気分だった。
——人の話は最後までちゃんと聞かないとぉ~——
ごほん。・・・・デハ、行くゾ。




