妖精村の変わり者
神の落とし子でのライの相棒、グレイのことを中心に書いてみました。
不定期投稿になります。
俺は、グレイ。美味しい食事につられて、・・・・いや違う。澄んだきれいな魔力と不思議な魂にひかれた。まだ、あどけない子供のライを見守るためにほんのちょっと契約した。
人族の寿命は短い。500年生きてきた俺には、あっという間だろう。気軽に契約した。それがなかなか楽しい時を過ごしている。街中でこんなに長く過ごしたことは、今までない。大概旅人一人と俺だけだった。
街の中には、街猫がいる。これが結構楽しく付き合える。ライのお菓子を分けたらすぐに懐く。ボス猫さえ押さえれば俺が裏ボスになっている。裏ボスといっても、悪いことはしていない。ちょっと情報を集めたり、悪い奴を懲らしめるくらいだ。正義の味方ではない。基本ライがかかわっていなければ無関心だ。
俺は北の北の奥深い森の中にある妖精村で生まれた。そこで育ったのは覚えている。ただ500年も前だから兄弟がいっぱい居たことしか覚えていない。俺が頭悪いわけじゃない。妖精は、気ままで、移り気。
良く言えば、楽天的。長い人生を悔んだり、憎んだりしてたら生きていけない。妖精の自殺なんてないから、嫌なことはすぐ忘れる。そんな妖精猫ばかりで、楽しく50年ほど暮らしていたと思う。
俺たち妖精猫は、森で生まれる。森のマナで生きている。食事という感覚はない。外に出て、初めて、マナ以外を取り込むことを食事と知った。
妖精の森はいくつもの村に分かれている。お互い行き来することもあるがほとんどが、村から出ることはない。広々とした森、咲き誇る花、精霊水の湧く泉。澄んだきれいなマナにみたされた村は、それだけで十分だった。
ある日、村の長老が40歳の妖精猫を集めて話をした。
「この村から出て行く者はいるか?」
驚いたぞ。ここを出て行くって、どういうことだ。俺たちは、村が、森がすべてで。外に別の世界があるとは知らなかった。好奇心旺盛な妖精猫は、早くにこのことを知って、村を出ると、大概死んじゃうらしい。
外の世界にはマナがない。えっ!マナがない。それじゃ死んじゃう。
「よく聞け。外には妖精以外にいろいろな種族がいる。獣が魔物化した魔獣。これは、恐ろしいが戦わなければよい。一番の敵は、外の世界を管理する種族だ。姿かたちも違う。マナがなくても生きていける。さらに、妖精をことのほか好きらしい。好きとは、良いことばかりでない。無理やり捕まえて、見世物にしたり、マナを抜き取ろうとする者がいる」
「死んでしまう!」
「そうなんだ。だから外に行くのは、とても危険だ。決して勧めない。
だが・・・・・。なかには、出て行く者はいるだろう。それを見捨てることはできない。外の世界に出て行きたい者は、外の世界を知りたい者は、長老の教えを受けなさい。少しでも安全に旅をする指導をする」
「そんなのめんどくさい」
「いいぞ。長老たちの助けがいらないものは、勝手に出て行きなさい。長老会の終了印がないものは、外の世界が嫌になっても戻ってこれない。以上だ。希望する者は、言ってくるように」
それから大騒ぎ。外の世界があるなんて、俺は知らなかった。中には、戻ってきた妖精の話を聞いたものがいた。俺は何も知らなかった。俺は講義を受ける。村を出る、知らなかったことが悔しかった。
俺は村の中でも元気(腕白)だ。みんなふわふわ浮いて、ぼんやりしてる。森の中を散策しても、ほかの村に行こうとしない。何があるか気にならないのか?おれは、隠れてほかの妖精村を覗きに行った。この間なんか、森の中の競走会を開いたのだ。森の木々は、俺が走る(飛ぶ)とひらりひらりと動いて道を開けてくれる。全速力で走り抜ける爽快さは最高なのに。誰も俺についてこない。競技に参加しても途中で道草する。妖精猫同士じゃれ合って話にならない。
なんか物足りない気持ちがあった時にこの話。これは、俺のためだと思った。
若干40歳の子妖精猫は、新しい世界に旅立つ決意をした。
誤字脱字報告ありがとうございます。