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たこ焼き屋さかなしのあやかし日和  作者: 山いい奈
4章 期間限定の恩恵
36/40

第11話 求められることとのギャップ

どうぞよろしくお願いします!( ̄∇ ̄*)

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

 その日、「さかなし」の営業が終わり、茨木童子(いばらきどうじ)葛の葉(くずのは)がいつもの様に押しかけ、もとい、訪れ、たこ焼きを(さかな)に酒盛りになっていた。がばがばとペースの速い茨木童子に、ゆったりと楽しむ葛の葉、いつもの光景である。


「ふぅん、その和馬(かずま)くんて子、心配やねぇ〜」


 葛の葉が(うれ)いげに小さく息を吐く。渚沙(なぎさ)から一連の話を聞いたからである。人間の常識に寄り添わない葛の葉だが、やはり子どもが絡むと、母親の顔が出てくる様だ。


「子どもってねぇ〜、思った以上に親の影響を受けるもんなんよねぇ〜。小さかったらなおさらやわ。その母親が和馬くんのことを何よりも考えてるんは、あたくしも親やから分かるんやけど、子どもから見たらねぇ〜、解りづらいわよねぇ〜」


「面倒くせぇなぁ。ガキなんざ、その辺に転がしといたらええやろ」


 茨木童子が眉をしかめて言い捨てる。それに(たけ)ちゃんと葛の葉はあからさまな呆れ顔を見せた。


「ほんま、茨木は無神経やねぇ〜。子育てはそんな単純なもんや無いんよ〜。小さくても個性はあるんやから、できる限り寄り添って、その子に合わせたげな」


「そうカピな。和馬を見ていると、賢くて素直な子という印象カピ。だから我慢していたのだと思うのだカピ。それが折れてしまったのだカピ。そんな子に親ができることは、その子を抱き締めてあげることなのだカピ」


「そうやねぇ〜。母親がちゃんと和馬くんを思ってることを、教えたげなあかんよねぇ〜。で、和馬くんがどうしたいんかを、ちゃんと聞いてあげなねぇ〜。基本的なことやでぇ〜」


 母親ふたりの談義は続く。茨木童子はつまらなさそうにグラスから日本酒をあおった。本当に興味が無いのだろう。


 和馬くんは実年齢より大人びて見えるところがある様に、渚沙には思える。我慢をしていたというのもその通りかも知れない。やはり家庭環境がそうさせてしまっているのかも知れない。


 確かに母親には時間が無いのだと思うが、和馬くんが自分のやりたいことなどをもっと言えていたら、また状況は変わったのだろうか。


 そもそも、和馬くんにはやりたいことなどがあるのだろうか。例えば将来の夢とか。


 夢の内容によっては、今のルートにいた方が近道な場合もある。お医者さんや弁護士さんなどなら学歴が必要だから、理に適っていると言える。


 だが例えばスポーツ選手になりたいと言うのなら、今やるべきことが変わって来ると思うのだ。


 まだ小さいから、そこまで具体的に考えているかどうかは分からない。ただ和馬くんは聡明な子だから、もしかしたら将来を見据えているのかも知れない。それと現状が合わなくて、混乱したかも知れない。そして今に至ってしまったのだとしたら。


 なんて、渚沙が想像を巡らせても何も解決しない。和馬くんにとって渚沙は「家の近くのたこ焼き屋のお姉さん」なので、踏み込むことはできないし、しない方が良い。


 何とも歯がゆい思いではあるが、渚沙にできることは、和馬くんが食べに来てくれた時に笑顔で迎えて、温かいたこ焼きを提供するだけだ。


(結局、わらしちゃんに任せるしか無いんよなぁ)


 渚沙がそんなことを思って小さく溜め息を吐いた時、店内に幼女の声が響いた。


「来たぞ」


 声の方、ドアを見ると、その前にちょこんと立っていたのは座敷童子(ざしきわらし)だった。


「わらしちゃん、おかえり、や無いんかな? まだ」


「まだじゃな。ひとまず酒を寄越せ。祝杯じゃ」


「祝杯?」


 渚沙が立ち上がって問うと、座敷童子はその空いた席に腰を掛けた。渚沙は座敷童子用のグラスと、他のテーブルから自分の椅子を用意し、テーブルに戻る。グラスにパック酒を注ぐと、茨木童子が「分け前が減るやんか」と不満げに漏らした。当然誰もが無視であるが。


「和馬の母親の社員昇格が決まったのじゃ」


「わぁ! 良かったやん」


「ふむカピ」


「まぁ〜」


 座敷童子の報告に、渚沙も竹ちゃんも葛の葉も、感嘆(かんたん)の声を上げた。茨木童子だけがどうでも無さげにそっぽを向いていた。

ありがとうございました!( ̄∇ ̄*)

次回もお付き合いいただけましたら嬉しいです。

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