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第五十九話 おっさん、王都冒険者ギルドへ行く 四 vs トーナ

 キィィィン!!!


 剣と籠手(ガントレット)が交差する。

 何度か打ち合い距離を取る。

 全てを全開にした状態でまた正面きって切りつけた。


「! 」


 籠手(ガントレット)が交差した瞬間少し剣をずらして(ふところ)に入り、腹部を切りつけようとした。

 だが剣は空を切り空振り。

 離脱したようだ。


 すぐに態勢を直す。

 剣を構え直してトーナを見た。


 しかし一瞬で姿が消える。


「?! 」


 サイドステップで背後からの攻撃を避けてトーナを発見。

 距離が大分開いた為、移動を制限するために操風(あやつりかぜ)風束縛(ウィンド・バインド)を発動させた。

 (わず)かに移動速度は落ちているようだが、完全束縛とはならない。


 ならばということで風壁(ウィンド・ウォール)で周囲を囲う。

 流石にすぐには出られないのか右往左往(うおうさおう)して壁を()りつけていた。


 すぐにでも(やぶ)られそうだ。


 破られる前に風刃を発動させた。


「……この程度ではやられないとは思うが。纏風(まといかぜ)風剣(ふうけん)


 砂ぼこり舞う中彼女が次の行動に移る前に剣に風を(まと)わせる。

 鋭利(えいり)さが上昇した剣を持ち次の準備を。


「いいね、いいね。流石おっちゃんだぜ! 」

「……流石に傷一つつかないのはおっちゃん悲しいんだが」

「そう言うなよ。オレの師匠だろ? 」


 砂ぼこりを払い出てきたのは無傷の虎獣人。

 正直、道具に傷一つくらいはつくかと思っていたからショックだ。

 何一つダメージを負わせることができていない。


 ガンガン、と籠手(ガントレット)を叩きつけながら獰猛(どうもう)な顔をこちらに向けて近づいてきている。


「しかしまさかおっちゃんが魔法使いだなんて聞いてないぞ? 」

「オレは魔法使いじゃないよ。剣の力だ」

「通りで」


 トーナはオレの魔力が少ない事を知っている。

 だから違和感を覚えたのだろう。

 さっき使った魔法もどきはどれも中級魔法。

 使えない事はないが、一瞬でオレの魔力を持っていくから使わない。


「今度はオレの番だな。行くぜ! 」


 そう言い再度トーナの姿が消えた。


 ★


「なんだあのおっさん」

「あの雷虎と打ち合っているなんて」


 ゼクトとトーナが打ち合っている中冒険者達がその様子を見ていた。

 しかし拳を振るえば地面が陥没(かんぼつ)し近付けば電気が走る二人の戦いに近付いて見れる者はいない。

 よって彼らは壁際(かべぎわ)の、ごく限られた安全な場所で観戦していた。


「いたか。ん? ゼクト殿と……誰だ? 」

「お姉様。今のうちです。すぐに外に出て観光に行きましょう」

「いや流石にゼクト殿を置いてはいけないだろう」

「お二人共待ってください。ってあれはトーナ」

「「トーナ? 」」


 ホムラとミズチが訓練場へ入り、ダリアが追って入ってきた。

 ダリアがその名前を言うと二人は虎獣人の事についてダリアに聞いた。


「なるほど。リリの村出身の冒険者、か」

「人間にしてはよくやるな。しかしゼクトのあれはなんだ? 」

「あれは……」


 解説しようとしたダリアだったができなかった。

 彼女は第二解放までは見たことあるが第三解放までは見たことがない。

 しかしそれも仕方ないことで、ゼクトが第三解放を使う時は大体が依頼の途中だったからだ。

 依頼に同行していない彼女が知らないのも無理もない。


 風があちこちに飛び舞い彼女達を危険にさらす中、三人は人が集まっている所へ一先ず向かった。


「これはどういう状況ですか? 」

「あ~、これか? これはトーナさんがあのおっさんと戦いたいとか言い出したらしいぞ? 」

「オレ達も話半分で様子を見ていたんだがここから出られなくなってな」


 顔をひきつらせながら冒険者達が言った。

 それもそのはず。

 この場所から少し出れば風刃と雷が飛び交う危険地帯(レッド・ゾーン)となるからだ。

 戦闘が終わるまでこの場から離れない彼らの選択は正しい。


 恐らくこの小さな安全地帯(セフティー・ゾーン)は攻撃の死角(しかく)になっている為攻撃が飛んでこないのだろう。

 逆を言えばこの場所以外が——危険地帯(レッド・ゾーン)とまではいかなくても——何かしら攻撃が飛んでくる場所と()していた。


 バリ! バリバリバリ!!!


 また石製の訓練場の壁が焼け()げる。


「お前達はあのおっさんの知り合いか? 」

「え? ええ。そうですが」

「何もんだ、あのおっさん。Aランク冒険者『雷虎』トーナさんと互角(ごかく)に打ち合うなんて」


 一人の、少し歳の行った冒険者がダリアに少し興奮気味に聞いた。

 少し考え、答える。


「彼——ゼクトさんはトーナを冒険者として育てた……いわば師匠のような人になります」

「なるほど……。なら納得だ。Aランク冒険者を育てた冒険者。道理で強いはずだ」


 彼が頷くと周りも納得したかのように頷いた。

 それを見つつもダリアはゼクトの方へ瞳を向けた。


 ★


 中々にきつい。


 汗を蒸発させながらオレはトーナと打ち合っていた。

 戦場は今地面から空に移っている。

 オレは第三歩法・空踏(そらふみ)と第二歩法・風板(かぜいた)を用いて高密度な風を踏みしめ空中を歩いている。

 だがトーナはそのようなまどろっこしい事はせず天駆で駆けてオレと打ち合っていた。


 厄介なのが彼女が使う雷。

 接触した時はもちろんの事離れていても電球(サンダー・ボール)のような物を飛ばしてくる。

 どこでこんな(わざ)を覚えたのやら。


 感心している間もなく急接近してきた彼女の蹴りが放たれた。


 ドン!!!


 剣でそれを受け止め何とか防御。衝撃を風で(やわ)らげながら地面に激突(げきとつ)


「くっ! 」


 ドン!!!


 転がりながらも彼女の追撃を(かわ)す。


 危機感知。


 すぐにトーナが走ってこようとしているのだろう。

 感知に引っかかる。


 トーナが正面に見えた瞬間拳がオレに迫ってきていた。

 が、それをギリギリで避けて(ひざ)蹴りを彼女にくらわす。

 反撃(カウンター)に驚いたのか二歩三歩後退して構え直した。


「いいぜ、いいぜ。こんなに心沸き立つ戦闘は久々だ! 」

「オレは指導に失敗したのか? 」

「そう言うなよ。久々(ひさびさ)に本気が出せそうなんだからよ」


 なに不穏(ふおん)なことを。


「行くぜ! 上限(オーバー)——「貴様ら何をしている! 」」


 ギルマスの声が聞こえてきた。

ここまで如何だったでしょうか?


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