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第五十五話 おっさん、王都に着く

「おお! ここが王都『ノクトゥス』か! 」

「今まで見てきた町や村とはまた違いますね。お姉様」

「久しぶりだな」

「黙れ! 貴様に発言を許した覚えがない! お姉様が感激している所を邪魔するのか! 」

「今のミズチがその状態だろうよ」


 感想を言っただけで食いついて来るミズチに軽く反論。

 するとワナワナと震えながらホムラの方を向いた。

 ホムラは少し気まずそうな顔をして、「大丈夫だぞ。ミズチ。しかし大声を上げるのは抑えてくれ」と言っている。


 二人が茶番(ちゃばん)のようなことをしている間にもオレ達は周りをもう一回見回した。


 ここはノクトゥス王国王都『ノクトゥス』。国の名前がそのまま王都の名前になっている都市だ。

 少し歩くと賑やかな声が聞こえてくるし、いい匂いが(ただよ)ってくる。

 名ばかりの王都ではなくその名にふさわしい(さかえ)具合(ぐあい)をしている。

 オレも昔、王都で活動していたが雰囲気はあまり変わりないようだ。


「わたしも久々(ひさびさ)にきましたが、凄い(にぎ)わいようですね」


 ラックさんが右に左に見てそう言った。


「確か魔道具類を買いに行くんでしたっけ」

「ええ。リリの村には魔道具類を作れる職人がいませんので」

「ガンツ殿は作れないのか? 」

「作れなくはないでしょうが、素材から集めるとなると——最終的には王都で買った方が安くなります。それに今回買う魔道具はガンツさんの専門外です」


 なるほどな、とホムラが頷いた。


 王都は各方面の領地から様々なものが集まって来る。

 それは物に限らず人材も、である。

 なので優秀な人ほど王都に向かう。これにより王都が栄えるのだが、逆を返せば地方が(すた)れることを意味している。

 技術者が王都に一極集中しないようにそれぞれの領主様達が手腕(しゅわん)を振るっているらしいが、よくわからない。

 少なくともリリの村やミスラ村と王都を比較すると効果を発揮しているとは思えない。


「一先ず宿に行きましょう。早めにとらないと()まってしまうかもしれません」


 ラックさんに主導(しゅどう)されながらオレ達は、宿を取りに王都を歩いた。


 ★


「いやはやすみません」

「仕方ありませんよ」


 宿を取ったオレ達は魔道具を買いに王都の道を歩いていた。

 当初ラックさんが宿を探そうとしたのだが見つからなかった。

 そこでオレとダリアが空いていそうな宿を見つけて、そこを取ったのだ。


「まさか宿までの道に迷うとは。お恥ずかしい」

「いつもは外から来ますからね。仕方ありませんよ」


 頭に手をやり気まずそうに言うラックさんをフォローしながら商業区へ入る。


「しかし、流石はゼクトさんとダリアさんと言ったところでしょうか。先程の宿は行きつけの宿で? 」

「いえ。以前に行っていたところは、この時間帯だともう満室でしょう」


 オレは空を見ながらそう言った。

 隣からダリアが付け加える。


「ゼクトさんが泊まっていた宿は冒険者が多く泊まっています。流石に乱闘騒ぎにはならないとは思いますが、商人の方は別の宿に泊まった方が良いかとおもい、普通の宿を取りました」

「加えるとダリアはダリアで冒険者ギルドの職員(りょう)のようなところに住んでいましたので、馴染(なじ)みの宿というのがありませんし」

「む、それでは私が宿に詳しくない風じゃないですか」

「詳しいのか? 」

「……」


 聞き返すと隣から声が聞こえなくなった。

 苦笑しながら再度ラックさんの方を向いた。


「なので一般の宿を。もしかして何か不都合でもありましたか? 」

「とんでもない! 宿があっただけでもありがたいです」


 そうですか、と言いながら商業区を行く。


「おお。何やらいい匂いがするな! 」

「ではお姉様。何か買ってきましょうか? 」

「まて」

「何だ? ゴミ虫。お姉様の食事を邪魔するのか? 」

「あぁ。邪魔させてもらおう。お前ら護衛依頼中だということを忘れていないか? 」

「も、もちろん覚えている! 」

「……それがどうした? お姉様の食事に(くら)べれば些事(さじ)なこと」

「いや大事だろ」


 オレがそう言うとすぐにホムラがミズチを(たしな)めた。


「はぁ。頼むから依頼くらいはきちんとしてくれ」


 そう言うと前を行くラックさんが振り向き、苦笑いを浮かべた。


「後で観光用の時間はとりますので、依頼中はよろしくお願いします」

「わかっているとも。しかし……治安は良いように見えるが」

「見えるだけだ。少し離れるとすぐに悪くなる。今は治安がいいところを歩いているだけだ。下手に道を外れるなよ? 」

「分かっているとも」


 注意をするとホムラが頷き、ミズチが冷たい目線を向けてくる。


 オレとダリアは土地(かん)があるから大丈夫だとは思うが、ラックさんに他二人は土地勘がさっぱりだ。よって要注意。

 特にこの二人は歩く国宝。可能な限り歩かせたくないが、ラックさんの事を考えると彼女達を付けておいた方が良い。その正体を知られなければ過剰戦力の集団だ。襲ってきたら恐らく相手が地獄を見るだろう。


 たかが一人の護衛依頼、されど一人の護衛依頼。

 護衛対象の身の安全を第一に考え行動するのが一番。


 考えていると一軒の——普通な店に辿り着いた。

 立ち止まってラックさんに聞く。


「話しに出ていた魔道具店は……こちらであってますか? 」

「おお。合っていますとも」


 見た目は普通の店でとても魔道具店とは思えない。

 通常魔道具店と言えば(きら)びやかな過剰装飾が(ほどこ)されているが、この店にはそれがない。


「……昔と変わりませんね」

「そうなのですか? 」


 少し笑いながらオレの方を向くラックさん。


「ええ。何でも「見栄を張ったところで無駄」とのこと。実力は確かなはずなのですが、自身を過小評価する傾向のある方で」

「素直な方ですね」

「ええ、そうなのですが素直すぎて商売に困ることもあったとか。今、どのような感じなのかはわかりませんが」

「古馴染み、といったところですか? 」

(くさ)(えん)の方が正しいでしょうね。ある時ふらっとリリの村に来て、軽く滞在した後、王都に店を構えたようで。最初の頃はわたしも行き来していたのですが今はなく……」

「元気な姿を確認しに来た、ということですか」


 ダリアがそう言うと少し恥ずかし気に頭をポリポリと()いて笑みを浮かべた。

 へぇ……。これは、これは。


「ま、まぁ腕利きの魔道具技師であるのは確かです。ささ、行きましょう」


 恥ずかしさを隠すためか少し駆け足で店に向かうラックさん。

 オレ達はあとをおい、店内へと入っていった。

ここまで如何だったでしょうか?


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