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第五十話 おっさん、村を見て周る 一

「ゼクトさん。やっぱりあんたはすごいよ! 」

「今まで本当に苦労していたんだな」

「これからはオレ達も頑張るよ。ゼクトさんはゆっくりしてくれ」


 冒険者ギルドに入るとすぐに異常状態が発生した。

 なんだ? これは。


 オレはダリアに連れられ外に出た。

 当然の(ごと)くホムラもついてきて、そしてホムラ・ラブなミズチも必然的について来た。

 特に行く場所を決めずに外に出たのだが、ふと冒険者ギルドの状況が気になった。

 もし依頼が(とどこお)っているようならば、デートどころではないと考えたからだ。

 オレがそのことを話すと——意外にも——ダリアが快諾(かいだく)

 ミズチは嫌々な感じだったが、ホムラも冒険者として働いていると知り、着いてきた。


「これは一体……」

「俺達、確かにあんたに甘えすぎてた」

「今回の事で身に染みたぜ」

「いやそう言ってもオレがいなかったのは一週間くらいだろ? 」


 軽く涙している彼らに顔を少し引き攣らせながらダリアの方を向く。


「なにがあったんだ? 」

「今までゼクトさんが受けていた依頼を分担したのです。そして、彼らはゼクトさんがどれだけいつも働いているのかを知り、感銘(かんめい)を受けたのではないでしょうか? 」

「いや、でもDランク冒険者一人抜けたくらいでそんな大袈裟(おおげさ)な」

「いえいえ、ゼクトさんがこなしている依頼量は異常ですよ? 」


 受付台の方を向く。

 受付嬢が少し頭を押さえながらオレの方を向いていた。


「ゼクトさんが率先(そっせん)して受けていた低ランク依頼には他の冒険者が行ったことないようなものもあります」

「た、確かにあるが……」

「突然そんな依頼をこなせと言われたら、普通の冒険者は出来ますか? いえ出来ないでしょう。出来なかったのです! 」


 声を荒げながらそう言う受付嬢。

 それに周りの冒険者達は気まずそうに顔を()らしている。


後進(こうしん)の育成をきっちりしなかった私達も悪いですが、低ランクの依頼といって(たる)み過ぎですよ! 気合いを入れてください! 」

「わ、分かってるよ」

「きちんと反省している」

「これからは受けるから、な? 」


 慌てて受付嬢を(なだ)める冒険者達だが、「本当にわかっているのですか? 」と腕を組み疑わしく見る彼女。

 そんな様子を見ながらもやる事を思い出した。


「そうだ。こっちのミズチの冒険者ギルドカードを作ってくれ」

「あら、また女性ですか? 」

「何か(ふく)みのある言い方が気になるが……、彼女はホムラの友人だ」

「なるほど。分かりました。ではこちらに来てください」


 と(うなが)され、ホムラが先導(せんどう)してミズチを受付に連れて行った。


 その様子をハラハラと見送り、「頼むぞ、ホムラ」と心の中で応援した。

 出来る限りミズチには騒ぎを起こさないように言っている。

 だがそんなことを聞く彼女ではない。

 よってミズチが騒ぎを起こすと間接的にホムラにも迷惑がかかると必死に教えて何とか収まってくれている。

 それでも人に対する毒舌は止まらないが。


「無事に終わりそうですね」

「ああ。流石にミズチも敬愛(けいあい)するホムラに迷惑がかかるとなると我慢する様だ」

「しかし不思議な関係ですね。本当の姉妹ではないのでしょう? 」

「そうみたいだな。オレも直接知っているわけではないが、近所らしい」


 と、言う『設定』をダリアに教えた。

 実際二人は歩く国宝こと精霊人形(エレメンタル・ドール)に体を憑依(ひょうい)させた精霊だ。

 本当の家族ではない事は確かなのだが、家族という概念(がいねん)に収まっているのも確かである。

 オレ達人間とはまた違う価値観、家族観を持った彼女達を説明するのは難しい。

 オレも彼女達を理解しているわけではないし。


「終わったようですね」

「ふぅ……。何ともなかったか。冷や冷やものだ」

「幾らミズチさんでもそんな滅多(めった)に騒ぎを起こしませんよ」


 オレがそう言うとダリアがくすっと笑う。

 

「いや、かなりぶっ飛んでいるからな。最悪人に切りつけるくらいの事は予想していた」

「ワタシがそんな、お姉様を困らせるようなことをするわけないじゃないか」


 オレとダリアが話していると落ち着いた、しかし冷たい声がしてきた。

 彼女が迷惑を掛けるのが「他の人」ではなく「お姉様」となっている所が彼女らしい。

 ホムラが直接見ていないと本当に切りつけそうで怖い。

 オレもやられたからな。


「一先ずミズチの登録は終わったぞ」

「ホムラ。助かる」

「いやなに、ミズチも少し人と交流を持った方が良いからな。良い機会だ」

「そんなお姉様! ワタシにはお姉様がいれば十分です! 」

「そう言うな、ミズチ。それにそのカードを使ってある程度働いておくと移動するのに楽になる」

「楽になる? 」

「あー! 次はどこに行く? 」


 ホムラがうっかり口を(すべ)らせダリアにツッコまれそうになったのですぐに話の方向転換。

 こいつらは不法入国者だからな。

 自分のミスを知ったのだろう。ホムラが少し慌てた表情をした。

 その様子に気付く様子もなくダリアはオレの方を向き小首(こくび)を傾げ、提案する。


「次、ですか。そうですね。市場も見て回りたいです」

「市場、か」

「市場以外にも他の方達の所へ顔を出すのもいいかもしれませんよ? 」

「確かに」

「ゼクトさんは村の人達にかなり心配されていましたので」

「それは悪い事をしたな……。いや原因はミズチか」

「ワタシが悪いというのか! 」

「それ以外に何がある? 」

「貴様がひ弱なことに原因がある! 」

「コラ、ミズチ! 大人しくしろ! 」

「申し訳ありません。お姉様」


 ホムラに怒られ、ミズチがしゅんとなる。

 それを苦笑いで見つつ、ダリアの方を向いた。


「じゃぁ、市場に行こう」


 そう言うとダリアがオレの腕にくっついて来た。

 柔らかく温かい感触に少しドギマギしながらも、オレはそのまま冒険者ギルドを出て、目的地へと向かうのであった。

ここまで如何だったでしょうか?


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