第三十四話 戦い後の村長
「あれだけの賊に襲われ死者二名。奇跡的だが、惜しまれるな」
「心中お察しします」
ここは村役場の村長の執務室。
そこには村長ことゼファと補佐官が机を挟んで三人いた。
補佐官達はゼファに書類を渡しては、自分の机に戻っていく。
ゼファの机の上には大量の資料が置いてあり、どれも重要書類。
ゼファは流れた涙を拭いながらも補佐官が作った書類に目を通す。
特別なことが無ければ羽ペンを走らせ、次の書類へ。
そして顔を上げて補佐官達の方を向いた。
「無論今回の件、領主様に報告するが……」
「引き出せても復興援助くらいでしょう」
「むぅ。少しくらい考えてくれ。また盗賊騎士に来られたら堪らん」
ゼファの問いに即答する補佐官に抗議を入れた。
しかしゼファ自身もそれがわかっているのかすぐに引く。
「下手に抗議する訳にもいかんしのぉ」
「加えるのならば敵を殲滅していますからね。逆にこの村に脅威となる人物がいると危険視される可能性もあります」
「なにが危険視じゃ。危険な奴らを放置しおって。貴族のままごとには付き合いきれん」
「不敬発言ですよ。村を治める貴方が安易に口にしないでください」
「なにがじゃ。実際被害を被るのは我々じゃて」
「言葉一つでそれ以上の被害が出るのですから慎んだ方がいいかと」
溜息をつきながらも資料を作る補佐官を憎たらし気に見る村長。
いつもならばこのようなことはない。
補佐官と言ってもこの村出身の者で、代々村長補佐官をし支えているだけの存在だ。
仕事は税金などお金の管理と領主への報告。あとは事件事故の報告くらいだろうか。
初代がこの村に派遣され補佐官をしただけでそのままこの村に腰を下ろしている。
よって補佐官と言ってもそこまで偉い人達でもない。
時折村の子供達に読み書きや数字の計算などを教えていたりもする。
だが同時に仕事はきちんとするタイプで定期的な領主への報告義務は怠ったことがない。
几帳面な集団、と言う感じだ。
一見村長の意見に反対しているが内心同意している。
彼らは避難所にいた。そしてその脅威を肌に感じている。
明らかに賊だけの集団ではないことも明白。
ならば何故領軍を用いて即座に対応しなかったのかなど思う所は多々あり怒りの炎を燃やしている所である。
村長が表に怒りを出している状態というのならば、彼らは裏で怒りを燃やしている状態であろう。
「やらかした貴族の情報を得ることは諦め……さてはてこれでどれだけ支援が引き出せるかが勝負じゃな」
そう言いつつゼファがまた一つ、書類にサインをした。
これにて一章終了です。ここまで如何だったでしょうか?
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