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第二十四話 おっさん冒険者と人形冒険者 二 薬草採取

「さて今回はスタミナ草の採取だ」

「この前(かご)に背負っていたやつだな」

「そうだ。ま、簡単な依頼ではあるが……やったことはあるか? 」

「いや、ない! 」


 二人話しながら山へ向かっている。

 やはりないか。

 そもそも精霊が怪我をするなんて思えないし、怪我をしたとしても人と同じものが効くとは限らない。

 やっぱりこの依頼を選択して正解だったか。

 

「薬効部位は葉の部分。その採取だ」

「あのハート型のやつだろう? 」

「その通りだ。使わないのによく知っているな」

「使っている人を見ていたからな」


 家をから持ってきた網籠(あみかご)を赤い上着の上に背負、自慢げに言うホムラ。

 見たことがあるのなら判別(はんべつ)は大丈夫だろう。

 何せスタミナ草以外にあの形をした薬草は、オレが知る所では今の所発見されていない。

 手に持つ小さな(かま)を少し危なげに振りながら歩くホムラを見つつ移動していると、山に着いた。


「さ、入ろう」

「おう」


 こうして自分を強化した後、オレとホムラは山へと入っていった。


 まだ朝である。

 日の光が差し込む山の中、少し整った道を行く。

 場所を変えながらであるが何回も来ているせいか草はそこまで伸びていない。

 (かま)で切り分けることもなく、感知を広げつつ、慎重(しんちょう)に進む。


「そう言えばホムラは感知系の武技か魔法は使わないのか? 」

「使えないことはないがあまり使わない」

「使えるのなら使っておいた方がいい。何がいるかわからない」

「確かに。いきなり賊やモンスターに襲われることなんて山ほどあったからな」


 そう言うホムラにジト目を送る。


「……よくそれでここまで来れたな」

「この(うつわ)の性能が良いのが最大の理由だろう」


 確かに。

 拳一つで地面を(えぐ)るもんな。

 しかも体に傷をつけずに。


 恐らく剣を受けてもはじき返すだろう。

 彼女の話を聞く限りだと服も特殊素材のようだ。

 傷がつくところが想像できない。


 そう言えば出会った時何であの時傷がついていたんだ?

 崖から落ちたにしても、まずもって傷がつかなさそうな体。

 (ひざ)に穴をあけ、傷がついた理由を知りたい。


 今の所は……まぁいいか。

 そのままホムラに追加で(たず)ねる。


「なにが使えるか聞いても? 」

「精霊魔法を使った……武技風に言うならば熱感知だ。生憎(あいにく)と危機感知や気配感知のような武技は使えない」

「それでモンスターがいる場所がわかると? 」


 横を見ると頷くホムラ。

 熱ならば確かに生物やモンスターを感知できるだろうな。

 だが危機感知とかが使えないのが痛いか。

 これも運用(うんよう)の仕方次第(しだい)かな。


精霊人形(エレメンタル・ドール)の中には使える者もいたが、私は苦手だ。それよりも精霊魔法を運用(うんよう)した方がまだやりやすい」

「なるほど。じゃ、慣れる意味でも使って見てくれ」


 わかったという声が聞こえると、オレ達は一旦止まった。

 そしてホムラが()べる。


「火の精霊よ」


 ……。なにも視えないが、軽く集中しているようすだと精霊魔法を使っているのだろう。


「熱反応はあまりないな。あってるか? 」

「オレの気配感知にも引っ掛かってないから合っていると思う。だが進むにつれて感知範囲が広がると動物なりモンスターなりが引っかかるかもしれない。その精霊魔法は移動中も使えるのか? 」

「ああ。使えるぞ」

「なら使いながら移動しよう。この際だ。ホムラの苦手も徐々に慣れさせよう」

「……厳しい教官だ」

「まだ(ぬる)いほうだ。さ、行こう」


 そう言いつつ感知を張ったまま移動した。


「ここが群生地だ」

「この前来た道とは違ったな」

「採取地点を変えたんだ」

「何でだ? 」

「前の依頼で多くとったかな。採り過ぎて群生地ごと無くなってしまったらいけないからだ」


 聞いて来るホムラに答えるオレ。

 一つの、オレの腹の部分まである巨大なスタミナ草の前まで行き、まずは採り方の説明をする。


「この葉が必要になる」

「手で取るのか? 」


 と、手に持つ小さな(かま)を少し振ってそう言うホムラ。


「手で取る冒険者は多いがオレは(かま)を使って採っている」

「何でだ? 」

「綺麗に採れる……と思うからだ。ま、自己満足の範囲だな。実際手で採ってもそんなに品質に変わりはないと思う」


 そう言いつつスタミナ草の方を向き、葉と(くき)根元(ねもと)(かま)をかける。


「で、こうして——切る。オレは周りに何かいないか(ばん)をするから今回はホムラが採ってみてくれ」

「了解した」


 そう言いながらオレとホムラは場所を変わった。


 ★


「出来たぞ! 」

「……」

「どうだ! 」

「……よぉし。ホムラが採取系が苦手なのはよくわかった」


 (かま)で切ると彼女は風刃(ふうじん)(ともな)い周りのスタミナ草を傷つけたので、手でちぎらせた。

 誰も思わないだろう。(かま)で軽く、本当に軽く、ひっかけるように(くき)と葉を外すだけなのに風刃が発生するなんて。


 だが今日だれもここにいなかったのは(さいわ)いだ。

 彼女の、風魔法ともとれる攻撃の餌食(えじき)になる人がいなかったのだから。

 元よりこの依頼の人気がない事が(こう)(ほう)したのはこれが初めてだ。


 しかし他のスタミナ草を傷つけられたら(かな)わないと思い、手でちぎってもらった。

 握り潰すかのようにちぎられたスタミナ草は無残(むざん)な形に。

 汁が()れてか彼女からスタミナ草の臭いがものすごくする。


 指導しながら少しずつ改善させたが、今日の所はギリギリ及第(きゅうだい)点……行かないくらいが限界だ。


「ホムラが力加減が苦手なのを考慮(こうりょ)に入れるべきだった」


 と、(うつむ)きながら呟いた。


「なにを?! これでも精霊魔法に比べれば得意な方だ! 」


 え……。それは本当か?!


 ガバっと頭をあげて胸を張るホムラを見る。

 その様子をみて軽く冷や汗を流す。


 彼女にこの山で、攻撃系の精霊魔法を使わせるのはダメだな。

 即座に山火事が起こりそうだ。

 頭を抱えつつもオレ達は山を降り、冒険者ギルドに戻った。


 ★


「お疲れさまでした。こちらが報酬になります」


 コイントレイの置かれた銅貨一枚を手に取り感慨(かんがい)深くかざして目を光らせるホムラ。

 その様子をオレとダリアが見て、顔を合わせてクスリと笑った。


「あの気持ちはわかるな」

「最初の一回は、どのような結果であっても貴重ですからね」


 そう言いながら目を横にずらしてダメだったスタミナ草を見るダリア。

 彼女もホムラがここまで採取が苦手だとは思わなかったのだろう。

 少し苦笑いだ。


「ま、これからうまくなればいいさ」

「上手になるまでゼクトさんが見るのですか? 」

「さぁ? それは未来のオレに聞いてくれ」


 今にも(おど)りそうなホムラを見てダリアに言った。

ここまで如何だったでしょうか?


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