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クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです  作者: 江本マシメサ
第七章 敵は誰なのか?

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新しい問題

 あとはどこを調査すればいいのか。途方に暮れている私達の前に、突然魔法陣が浮かび上がる。

 

「え!?」

「な、なんだ!?」


 勇者様はイッヌを胸に抱き、テーブルの上にあった果物ナイフを握って構える。

 私は蜂蜜水を飲んでいるメルヴを抱き、ぶーちゃんは巨大化して警戒の姿勢を向けた。


 魔法陣からは三人の人影が浮かんだ。

 いったい誰がやってくるのか。

 身構えた瞬間、見知った顔の持ち主達が登場した。


「うっ!」

「きゃあ!」

「ひいっ!」


 突如として勇者様の私室にやってきたのは、勇者様(本物)と賢者、それから回復師の三人であった。


「えーっと、皆さん、お久しぶり、ですね?」


 勇者様(本物)と賢者の頭上には、疑問符はてなが浮かんでいる。

 立ち上がった回復師が、すぐさま事情を説明してくれた。


「ご、ごめん! もっている転移の魔法巻物が、ここに繋がっているものしかなくて!」


 いったいどういうことなのか。

 何もかもわからない状況だったが、賢者が勇者様を指差して叫んだ。


「あ!! あの男、勇者そっくりだわ!! やっぱり、あなたにそっくりな別人がいたのよ!!」


 勇者様と勇者様(本物)が出会ってしまった。

 世界樹のもとでは、遠巻きに見るだけだった。お互いにしっかり顔を合わせたのは、今日が初めてである。


 やはり、このふたりは鏡映しのようにそっくりだ。

 男女の違いがあるのに、身長や体格までも同じに見える。


「お前は――」

「君は――」


 何者なんだ?

 その問いかけに、答えられる者などいなかった。


「私は勇者だ」

「奇遇だな。私も勇者だ」

「ならば、どちらかが偽物の可能性がある」


 偽物の勇者なんていない。

 存在するのは補欠の勇者だけだ。

 それを今、言っていいものなのか。

 勇者様の自信を打ち砕くような気がして、口にできなかった。


「この男、何を言っているのかしら? 私達の勇者が本物の勇者に決まっているじゃない!」


 賢者の主張に、心の中で頷いておく。

 

「バカな! 私が本物で、この女は偽物に決まっている。顔だって、私を真似したのだろう!」


 勇者を名乗るのはともかくとして、顔を真似るのは不可能だろう。

 彼はいったい何を言っているのだろうか。

 まあ、耳を疑う発言は今に始まったことではないが。


「だったら、多数決をしましょう。多いほうが本物の勇者だわ!」


 そんな決め方でいいのか。疑問に思ったものの、賢者はすぐに声をあげた。


「本物の勇者に指を差すの。いっせいのーで!!」


 勇者様(本物)のほうを差したのは賢者ひとり。

 勇者様(補欠)のほうを差したのは私と回復師のふたり。

 なんと驚いたことに、うちの勇者様が本物判定を受けてしまった。

 誰も投票しないのは気の毒だからと私も投票に参加したのだが、まさかこんな結果になるなんて……。


「ふん! やはり私が本物で、その女が偽物だったようだな」

「ありえないわ!!」


 回復師のまさかの裏切りである。

 このあとパーティー内で気まずくならないのか、心配になってしまった。


「ちょっと回復師!! あなた、どうしてそっちの男を勇者に選ぶのよ!!」

「私にとっての勇者は、最初から彼だったから」

 

 賢者は本気で悔しかったのか、顔を真っ赤に染め、地団駄を踏んでいる。

 一方で、偽物判定を受けてしまった勇者様(本物)は冷静だった。


「すまない。私が本物の勇者かどうかの問題はひとまず措いておいて、話を整理したい。いいだろうか?」


 勇者様は「よくない!」と言わんばかりの、干したエイに似た怒りの表情を浮かべる。けれども感情を爆発させることなく、勇者様(本物)ご一行に座るように命じた。


 ここで初めて、勇者様(本物)は自らを名乗る。


「私はミレイ村の勇者だ。彼女は途中で仲間になった賢者。回復師は古い知り合いだったな?」

「ああ」


 なんでも勇者様(本物)一行は魔王の居城を発見し、攻略していたらしい。

 けれども途中にあった罠に引っかかり、街に転移されてしまったようだ。


「そこで、私達は事件に巻き込まれた」


 その街では、勇者様(本物)にそっくりな姿絵が犯罪者として描かれていたのだ。

 

「捕まえた者には金貨三十枚の報酬とあり、私はさまざまな者達に追われることとなった」


 どうやらイーゼンブルク猊下は勇者様を暗殺する方向から、犯罪者として捕らえる作戦に変えたらしい。

 私達が変装して姿を眩ませている間に、顔がそっくりな勇者様(本物)が標的にされていたようだ。


「先ほど、騎士に捕まってしまい、抵抗もできず……」


 仲良く三人とも、牢屋にぶち込まれてしまったらしい。

 回復師が最後の手段として、転移の魔法陣を使い、ここにやってきたというわけだった。

 勇者様(本物)は懐に畳んで入れていた紙を開いて見せる。


「その、この手配書に描かれている容疑者は、君だろうか?」


 勇者様(本物)がだした手配書に描かれていたのは、紛うかたなき勇者様であった。 

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