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クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです  作者: 江本マシメサ
第六章 行方不明の子どもを探せ!

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56/90

これまでのお話

 優秀な回復師を追放した勇者パーティーは、死んで、死んで、死にまくった。

 勇者様の実力の九割は回復師のサポート魔法のおかげだったようで、戦力はガクッと落ちる。呆れるくらい、弱体化してしまったのだ。

 さらに、旅の快適さも著しく低下していった。

 毎回温かい料理を食べていたのに、まずい干し肉や革臭い水を飲まなければならなくなり、野宿は地面を布団に眠るという最低最悪な環境に変化した。

 勇者様はぶち切れ、やってられないと憤る。

 これまで提供されていたもののすべてが、回復師の働きによるものだと気付いていなかったらしい。

 勇者様がバカでよかった……と思った瞬間である。

 私も相当なバカなので、私達はある意味お似合いのパーティーメンバーなのだろう。

 そんなバカ丸出しの私達に、仲間ができた。

 まず、勇者様が魔物使いテイマーから買い取ったイッヌ。

 彼は長い間売れ残っていたフェンリルで、破格の値段で契約できたようだ。

 勇者様は巨大なフェンリルに跨がり、魔王を討伐することを夢見ている。

 けれどもイッヌは、〝ミニチュア・フェンリル〟という、大きくならない種族だったようだ。

 そうとは知らずに、勇者様はイッヌを溺愛できあいしている。


 次に仲間になったのは、黒い子豚のぶーちゃんである。

 勇者様はモンスターを食べて死んでしまったことをそれなりに反省し、食料を持ち運ぶことに決めた。

 そのさいに、市場で売られていたぶーちゃんを非常食として連れ歩き、大きくなったら食べると決めたようだ。

 黒い子豚なんて珍しい。なんて思い、千里眼クレアボヤンスで調べたところ、とんでもない情報を知ってしまう。

 ぶーちゃんの正体は、聖猪グリンブルスティ。

 神々が騎乗していた、神聖なる猪だったのだ。

 そうとは知らず、勇者様はぶーちゃんを非常食として連れている。


 回復師の代わりに二匹の仲間を迎え、今日も私達は仲良く戦闘不能となっている。

 以前と異なる点は、死んでもイッヌやぶーちゃんが教会に連れて行ってくれることか。

 死体を略奪者シーフに回収されたら金品を盗まれてしまうのだが、パーティーメンバーが連れて行った場合は教会から寄付を求められる。

 どちらにせよ対価が必要になるわけだが、自らの意思で払うほうがいくぶんかはマシなのだ。


 さらに、衝撃の出会いを果たす。

 本物の勇者様に出会ってしまったのだ。

 勇者様(本物)は驚くほど勇者様そっくりな女性だった。

 心優しく、勇敢で、強い。

 物語に登場する勇者そのものの姿だったのだ。

 勇者はこうでなくては、を具現化したような人物である。

 そんな彼女と行動を共にするのは賢者だった。

 相手を威圧するような態度を見せるものの、勇者様(本物)には甘い顔を見せる。

 なんともかわいらしい女性であった。

 賢者はよわい二百歳以上のハイエルフで、知識が豊富で実力も確かだった。

 勇者様(本物)のパーティーメンバーとして相応しい人物だったのである。

 そんな勇者様(本物)の一行に、驚きのメンバーがいた。

 勇者様が追放したはずの回復師がいたのである。

 なんでも彼女は勇者様が転移の魔法巻物で飛ばされた先で、勇者様(本物)一行に出会ったらしい。

 強力なモンスターとの戦闘中で、勇者様(本物)と賢者をサポートしたことから、パーティーメンバーとしてスカウトされたようだ。


 回復師については忘れよう、忘れようと考えていた。

 けれどもふいに思い出して、心が痛んでいたのだ。


 勇者様(本物)のパーティーメンバーに加入したと知り、ホッと胸をなで下ろす。

 補欠の勇者様と一緒に旅をするよりも、本物の勇者様といるほうがいい。

 追放することによって、正しい状態へ導けたのだ。


 あとは、本物の勇者様が魔王と戦って、補欠の勇者様がその能力を引き継ぎ、魔王となった私を倒してくれたらすべてが終わる。

 私は役立たずではなくなるというわけだ。

 一刻も早く、それが叶いますように。

 そう祈らずにはいられなかった。


 ◇◇◇


 聖都に行き着いた私達は、モンスターの凶暴化について調査していた。

 大森林にある世界樹に異変があるのでは、と推測し、さっそく調査を始める。

 そこで勇者様と離れ離れになったり、回復師とはぐれた勇者様(本物)一行と合流したり、といろいろなことがあった。

 結局、世界樹は魔王の闇魔法により力が奪われ、枯れかけていた。

 さらに奪った力でモンスターを強化していたようだ。

 勇者様や回復師も世界樹のもとにいたものの、ふたりともすでに死んでいた。

 勇者様(本物)や賢者も、魔王が仕込んだ闇魔法を前に倒れてしまう。

 ぶーちゃんも真なる姿を解放し、果敢に戦ってくれたものの、殺されてしまった。

 人の目がなくなった私は、因果応報アンチ・カルマ才能ギフトを使って魔王の闇魔法に討ち勝つ。

 黒い蔓に囚われていた世界樹も解放し、活躍のすべては勇者様(本物)に押しつけた。

 これにて、一件落着というわけである。

 唯一生存していたイッヌに因果応報アンチ・カルマを見られてしまったものの、彼は黙っていてくれるだろう。


 無事、モンスターの凶暴化について解決したので、私と勇者様は次なる街を目指すのだった。

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