かくれんぼ
夏と言えば肝試し。
俺も、連れに誘われて参加する事になった。
どうせやるなら雰囲気も大事だろうと、地元では何かしらの心霊現象が必ず起こるか撮れるかする事で有名な廃遊園地でする事になった。
遊園地と言っても、地域密着型で30分もあれば全てのアトラクションを制覇出来る敷地の狭さしかないので暇つぶしには持って来いなのだ。
危険な所には入らない高い所には行かない、などのルートを決めジャンケンをしたら俺が鬼になった。
正樹が彼女の奈々の手を引いて行くのがチラリと見え、グループ内のリーダー格を担う吉野がそれとは反対に駆け出し何が起きても動じない由良は……何時の間にか消えていた。
100まで数え終え辺りを見回すが無論誰も居ない。
小高い所に作られているからなのだろうか、時折生温い風が強く吹き付けて錆びたり壊れてたりする諸々を揺らして甲高くて不気味な音を鳴らす。
今日は亜熱帯で息苦しい暑さなのに寒く感じる。早く皆を見付けて帰りたい。
取り敢えず、吉野を見付ける事にした俺は、緩やかな傾斜を上り名物になっていたジェットコースター跡に向かった。見上げると、既に上に行くレールは撤去されていたが制御室と乗降場に残された4両だけが残っていたので隠れる所は其処しか無い。
階段を上って直ぐの制御室を除いたが誰も居ない。とっ、なると4両の何処かしかないので一両ずつ除くと前からか2両目のシート下に居た。部品が壊れてて潜り込むスペースが出来ていたみたいで、危うく見逃す所だった。
『吉野君、みーつけた』
さぁ、この調子でサクサク見付けてさっさと帰ろ。
上か下にしかアトラクションが無い此処は、上はジェットコースター一つで回りは崖、他に隠れられる所は無いので残りは全員下に隠れている事になる。
下りながら順序通りに除いて行くけど上手に隠れられてなかなか見付からない。
とっ、残り5つの所でコーヒーカップの中から僅かな吐息が聞こえて近付いて行くと奈々ちゃんと目が合った。
『奈々ちゃん、みーつけた。って、正樹が居ないじゃん。彼女を置いてくなんて何考えてるんだろ?』
まぁ、バカップルだし確実に近くにはいるだろうと気配を探りながらウロウロしていると少し先に見えるゴミ箱から音がした。
諦めて他を探そうかと考え始めてた所だったから助かった。
蓋を持ち上げて中を覗き込むと案の定正樹だった。
『正樹、みーつけた』
と、声を出した時、更に先にある最後のアトラクションから物音が聞こえて思わずビクついてしまった。
我ながら情けないなと苦笑しながらメリーゴーランドの前に立ち、全体に視線を送るが全く分からない。かくれんぼをしているんだから当たり前なんだけど、隠れるのが上手い。虱潰しに探すしかない。
小さな遊園地に置かれた2階建てのメリーゴーランドは、何時も人が並んで人気だった。隠れる所も沢山あるから探すのも大変だ。
どっちから探そうかと階段に足を踏み出そうとしたが、妙に下が気になったので其処から探す事に決めた。
馬の上は、隠れてるとは言えないし馬車しかないよな?
4台の馬車を覗いたけど居なかった……此処しか隠れる所は無い筈なんだけどなぁ?今度は注意深く見てみる。
床が僅かにズレていた。やられた、其処があったのか。
『由良、見付けた。隠れるの上手いな、由良が最後だよ』
カモフラージュ用に置かれたであろう入り口を塞ぐ錆びれてボロボロになった看板を足でずらすと由良が此方を見上げた。
Γアナタ、ダレ?イツカラ、ワタシタチニツイテキテタノ?」
震える声に口角が持ち上がった。
『誰って……何時まで待っても皆が見付けてくんないから全員を見付けないと終わらないルールなのかと思って呼んだのに、酷くない?まぁ、全員見付けたしちゃんと連れて帰ってよね』
―――昨夜、子供と連絡が付かないと両親から依頼が出され警察が探していた所、数十年前に閉園した遊園地で遺体となって発見されました。更に、メリーゴーランドの2階から別の遺体も発見され先程、7年前に行方が分からなくなり捜索願が出されていた当時17歳の少年と判明しました。事件の因果関係は不明との事で、犯人の目撃情報も無いとの事です。では、次のニュースです……―――
苗字で呼ばれた男が主犯で正樹は親友(だと思ってた)。奈々は女の主犯で由良は幼馴染だったが何時も見て見ぬ振りでしろと言われたら、助けを請うても真顔で遂行するので、彼からすれば同罪。恋心もあったから通報してたらもしかしたら彼女だけは助かってたかも?