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ヒワイのヒ  作者: 老狼
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5 お姉ちゃんのブラジャー

 風呂上がりに半裸のまま、いつものようにパックに口をつけて牛乳を飲んだ。こっちに来いとカズマにいわれて入った部屋は、カズマのお姉ちゃんの部屋だった。


 カズマのお姉ちゃんは、高校を卒業すると近郊のスーパーに就職した。


 おじさんは「うちの娘は、有名スーパーで商売と人生経験を積んで、この吉田マートを再建する。カズマはあてにならないからな」と、近所にふれ回っていた。おじさんは、うちの父と違って軽薄さがないし、年中配達に回っているし、なにより、毎日のように会っているボクに「大きくなったな」と毎日言ってくれるし、腰が低いし、働き者だし、父のようなスケベなことは言わないし、というか、インテリ風じゃないけど情があるというか、父はインテリ風だし、本棚にはたくさん本があるけど、本を読んでいるところを見たことないし、休みの日には家でゴロゴロしているし、テレビを見てゲラゲラ笑っているし、母に甘えてばっかりだし、えーと、おじさんの話だった。おじさんは娘を愛していたし、誇りにおもっていた、と、ボクはおもう。


 カズマのお姉ちゃんは失跡した。と、ボクはおもっている。いつしか、おじさんの自慢話も消えて、週末帰ってくることもなくなった。姉ちゃんを崇拝して、怖がっているカズマでさえ「姉ちゃんは死んだ」と言ったことがあった。でも、それはカズマの精一杯の強がりだということを、ボクは知ってる。仕事が忙しい両親にかわって、幼いカズマの面倒をみていたのはお姉ちゃんだった。



 「おまえブラジャーって知ってるか」とカズマが聞いた。ボクはあきれて、ぽかんとしていると、お姉ちゃんの洋服たんすの小さな引き出しをあけた。そこには、色鮮やかな下着がぎっしりつまっている。

 「かあちゃんのパンツと違うぞ。女のショーツだ。きれいだろう」、女のショーツじゃなくて、お姉ちゃんのショーツだけどと、おもったけど、カズマはハイテンションで、つっこむ余裕もない。となりのちょっと大きめの引き出しを引いた。

 「おまえのスマホをオレによこせ。オレのもここに置くから。こんなところをパシャとされて、クラスのSNSに流されたら、オレは一生、変態扱いにされる。」

 カズマは、ボクのスマホを奪って、自分のスマホとならべて洋服たんすの上に置くと、お姉ちゃんのピンクの花柄ブラジャーを取り出し、風呂上がりの自分の胸につけだした。


 「おまえもやってみ」じゃないって、こいつ狂ったのか。もともと、ちょっと変態で、脳みそには蜘蛛の巣がはっているけど、こんな姿はみたことないし、というか、勉強はできないけど、えーと、結構硬派だし、中学の新クラスでほかの小学校からきた生意気なやつが、ボクにつっかかってきたときも、ボクはひとりで大丈夫なのに、「オレの親友にちょかいだしたらオレがゆるさい」とか啖呵きっていたし、お姉ちゃんは大好きだし、ていうか、これって、おかしいよ。


 「なんか女の大変さがわかるよな。おまえ、前の席の子のブラジャーが透けてみえて、気になったことない。」

 答えたくなかったけど、「そりゃ。あるさ。平坦だった胸がいつのまにかふくらんで、女の子もなんか気にしているような感じがあって、でも、それって、小学生のころじゃない。」

 「あまえは馬鹿か。今だから、ブラジャーの線が気になるんだろ。小学校の女の子はたいがいスポーツブラっていって男のTシャツにオッパイがついたやつだから。 でも、中学生の女子は、これと同じのつけているんだぞ。」、馬鹿に馬鹿といわれてしゃくにさわったが、カズマの、こういうたとえ方は、なみたいていのセンスではないとおもってしまう。

 「いいか、前の席の女の子の透けたブラジャーの反対側には、〇〇ポストと同じモノがあるんだぞ。」

 「おまえの前の席っていったらミナじゃないかよ。おまえ、ミナにそんなこと想像しているのか。」、とボクがいうと、カズマは突然にたじろいだ。いそいでブラジャーを外して、元のようにきれいにたんすにしまうと、「だれがだよ。あんなブス、興味ねえよ。」といった。


こいつ、もしかしてミナがすきなのかも、とボクはおもった。




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