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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

義理の兄に殺されたりするものですか!

作者: 巫はな

こんな義理の兄が欲しい人生だった……。(匿名希望 学生)

義理の兄、青木研あおきけんに冬のプールに突き落とされる。

冷たい、死んでしまう、そういえば今朝、兄にカッターナイフで手を切られたんだっけ。傷口からじわじわと痛みが増し、心臓の鼓動がドクドクとはやくに打つのがわかる。




誰か助けて、と言ったって、誰も聞いてくれない。兄は私と違って『優秀』だから。皆んなが私の言葉に見て見ぬ振りをする。

もしかしたら、今まで生きていたのが奇跡だったのかもしれない。いっそのこと、さっさと楽にしてほしい。死にたい。自分で死ぬのは怖いから、いっそこのままで良い。凍え死んでしまいたい。



ゆっくりと目を閉じる。もう諦めだ。息が出来ない。私は泳ぐことができない。このまま楽に逝くほうが絶対に楽。今まで散々虐められたし、許されて良い。






◆◆◆◆◆






「この小説、面白〜い! 作者さん神!!!」

私がスマホを弄って、ネット小説を読んでいる。

……あれ? 私は青木葵あおきあおいだし、そもそも何で『私』が持っているものが『スマホ』だとわかるの? それから、ネット小説を読んでいるって……あれ? ネット小説って……あれ?




『私』はスマホの電源をカチッと鳴らしてベッドに入る。電気を消してから、

「『きみいら』本当にありがとう! 面白い! 最&高!」

と言ってから、スヤスヤと寝息を立てる。

次の瞬間、『私』の頭に陶器が落ちる。そして、『私』の記憶がおしまい。




因みに『きみいら』とは『君以外は要らないから』という現実風乙女小説で、重い愛が主題となる。そして、タイトル通りの小説となっており、主人公が青木研と出会い、青木研が主人公に徐々に心を開き、ハッピーエンドという王道。




で、記憶を整理しよう。もしかして、もしかしなくても青木葵が青木研のいる世界で生きているとすると仮定しよう。そしたら、私の立ち位置は恐らく記憶上では……「十三歳で青木研に虐められて自殺する義理の妹」……。




フラグ回収は……。えっと、その、うん。あーっと、うん。たしかに死にかけたよ。虐められてるよ。まったくもってその通りだよ。青木研はサイコパスであり、ドSであり、腹黒であり、……とにかく真っ黒な顔と生徒会長という立場だけ男。




……。




は!? 何しれっと虐めてる奴がヒーローになって主人公とイチャコラしてんの!? しかもかなり過激だよねこの虐め! ねぇ! 確か、青木葵はお父さんのお財布からお金抜き取ろうとしてる所を見られて脅されてるんだぞ! しかも、それお父さんの指示で、勝手にとってって言われたんだよ!?




青木研、許さない。決めた。絶対死なない。青木研、主人公とイチャコラなんて百億年はやい! 今までの行いは行き過ぎだし、青木研に謝罪を求めたい。……無理。諦めよ。あの青木研だ。無理無理無理無理。

……それよりも目を覚まそう。流石にこれでぽっくり逝くのは嫌だ。





◆◆◆◆◆






「あら! 目が覚めたのね!」

保健室の先生が目を見開いて私を見る。え、まぁ、はい、死にたくないので、とも言えないし……にしても、何故そんな反応をする?




「もしかして、そんなに危なかったのですか?」

「えっと……生徒会長の青木くんが貴方を連れて来た時に『もしものことがあったら直ぐに伝えてください』と言っていたものだから」

あいつ……。あの糞、死ぬ前提で話進めるのやめろ。絶対許さない。ゴキブリ並みの生命力を持った今の私はそう簡単に死なないぞ、ふはははは。




「あ、良かった。目、覚めたんだ」

私を見て、足を近づかせる青木研。いつからいたのか。

「はい、ご丁寧に運んでくださる生徒会長は優しいと、周りが関心しますね」

すごい深い笑みを浮かべて言い返す(自分はそう思っていないと圧をかけてな!)と、青木研は一瞬目を見開き、保健室を後にする。




「では、私も失礼します。今、授業は何限ですか?」

「えっと……今は放課後ね」

「そうですか、では失礼します」

私も保健室を後にして、家に帰ろう。うん、部屋に一刻も早く引きこもって青木研対策をしなくては。




ふんふふーん、記憶の戻った私は最強だもんねと思って保健室を出ると、青木研がいる。よし、素通りしよう。関わりたく無い。これはフラグでは無い。そう、決してフラグなんぞでは無い。

「偶には一緒に帰ろうよ、葵」

「ふふふ、私は早くに帰らなければならない用事があるので……生徒会長は居残りが御座いますでしょう? ですので私は失礼します」

「ははは、書類は全部終わらせた。放課後といってももう殆ど生徒も残っていない時間だ、一緒に帰ろうか、葵」




もうそんな時間なのか……。え、でも一緒に帰りたくない。よし、こうなったら……

「左様ならっ!」

ダッシュ以外の方法はないよね!!!






◆◆◆






「で? 何、さっきの態度。あの写真をバラせって?」

青木研の部屋にて、只今拘束されている。一部からは黄色い声が聞こえそう……因みに、私にはそういう趣向はない。




「こんな風に義理の妹である私を扱う方がバレたらヤバいと思いますが?」

「そんなの、だれも信じない。馬鹿なの? 阿呆なの?」

「私は馬鹿でも阿呆でもないです。何故です? 生徒会長さん」

「は? 小さい脳味噌で考えなよ」

兄がそう言って私の足を叩く。ぺっちーんと音がなり、結構痛い。対する私は拘束されているため、身動きが取れない。




「俺がまだ性交渉とかしてないだけマシだろ?」

「そのときは全力で拒否しますからね、今もさっさとこの鎖を外してくだされば逃げたいくらいですけれど、生徒会長が鎖を外してくれないので」

「そう言うと思った。それに、ずっと思ってるけれど、何で俺の事『生徒会長』って呼んでるの? 命令したよね? 研兄様って呼べって」

「呼び方なんぞどうでもいいでしょう?」

「はぁーあ。何言ってんの? これは命令なんだよ?」

「で?」

「チッ」

青木研が清々しい顔をしながら体をパーで叩き続ける。その度に顔が少し歪むが、絶対に屈しないし、暴力なんて慣れてる。……ッツゥ。ウッ……痛い。なんか……頭がふわ……ふわしてき……た?






◇◇◇◇◇






俺は目の前の記憶を手放した少女、義理の妹が愛おしく、髪を撫でる。目の前にいる義理の妹、葵と会ったのは十歳の時だ。初めて会った時、「よろしく」と俺に笑いかけてくれた。それで一目惚れしてしまった。それからというもの、大変だった。葵の部屋に監視カメラを付けたり、盗聴器やGPSを仕込んだりした。




イヤホン越しに伝わる葵の声が愛おしい。会いたい。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き。




そんなある日、葵が葵の友達と遠出することになった。その時、葵は義父に千円を頼んでいた。そして義父が「財布から千円とれ」と言った。俺はそれをチャンスだと思った。もしかしたら脅し材料になるかもしれない。そこで、葵が義父の財布から千円をとる写真をゲットした。




葵に、写真を誤情報としてばら撒くと言うと、命令を聞いてくれた。記念すべき1回目は三回回ってニャー。可愛かった。そこで俺の奥に眠る何かがゾクッと反応した。そんなこんなで命令はヒートアップしていって、いつのまにか虐めのようになっていた。けれど、俺は自分のせいで傷つく葵が愛おしくて仕方がない。ねぇ、葵。これは葵が招いた事なんだよ。葵のせいだ。だから、責任、とってくれるよね?




葵が俺以外を選ぶ前に壊してしまえば、俺のものになってくれるかな? 愛してるよ、葵。だから、自殺なんてしちゃダメ。死なない程度にしておくから。






◆◇◆◇◆






「葵、俺の事好き?」

「うん、好き。大好き。研と結婚したい」

「そっかー、嬉しいなぁ」


三年後、

壊れて故障した妻と、歪んだ愛を持つ夫の結婚式が開かれた。

閲覧有難うございました。


解釈とか考え方で良かったのか悪かったのかは変わると思います!

是非感想にでも考えをぶち込んでくだされば!


星評価やブックマーク登録など、お待ちしております!


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12/4 18:50 一部誤字訂正

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