第27話 情報が欲しい
更地にした後は住居を建てる必要がある。
作業をするのは、ベェルが生み出したゴーレム達だ。
ゴーレムはその数を30に増やし、新たに細かい作業を行う者としてスケルトン40体を召喚した。
スケルトンには死体が必要なのだが、それをどこで手に入れたか、など気になる事はあったが、アベルは気にしない事にした。
世の中には知らなくて良い事もある。
ゴーレム達が樹を切り倒し、それを運び、それ以外の細かい作業はスケルトンや人狼達が行う。
一方でクシュには集落に一度戻って貰い、移住の準備を進ませた。
水の事はベェルに任せた。
ベェルは沼地を、地下に水源を作る事で造り出した。
全ての準備を終えたのはそれから2日経っての事だ。
前言通り、アベル側の準備は1日……ではなく2日で終えたが、リザードマン達側の準備に時間が掛かったのである。
「こんなモンか」
人狼の村に隣接する様に生まれたリザードマン達の新しい集落を見て、トロスが額に浮き出た汗を拭いながら呟く。
住居の数は60程。
総勢約100匹という大所帯を迎えるにはそれ位の数が必要だ。
「リザードマン達は?」
アベルが訊ねると、トロスは頷き返した。
「あぁ、向こうの準備も整ったらしいぜ。今日来る手筈になってる」
それに満足気に頷いたアベルは、間を置いて溜息と共にトロスに別の事を訊ねる。
「……サキュバス達は?」
アベルの問い、トロスも呆れと諦めの表情を浮かべ、答える。
「既にのんびりしてるよ。……同胞が食われてないか心配だ」
「大丈夫だろ……多分」
準備を終えるのに時間が掛かったのは、ベェルが連れて来たサキュバス達の住居を作らなければならなかったからである。
性に奔放なサキュバス達である。
今頃雄の人狼達を誘って行為に耽っているだろう――勿論アベルやトロスも時々誘われる――が、それが彼女達サキュバスの在り方である。
ベェルが連れて来たサキュバスの数は20。これでもサキュバス達の中でもほんの一部だという。
これから更に増えるのか、と思うと頭が痛いアベルである……が、アベルは既にサキュバス達の事に関しては匙を投げていた。
なるようになれ、である。
太陽が丁度真上に昇った頃、リザードマン達がぞろぞろとやって来た。
約100匹の大所帯である。
その先頭にクシュを見つけ、アベルとトロスは駆け寄る。
「よぉ、全員無事か?」
「あぁ、問題ねぇぜ。道中は平和なモンだ。……これから宜しく頼むぜ、旦那」
最初は「アベル様」と呼んでいたクシュであるが、アベルからの頼みによりこの呼び方に落ち着いた。
やはり様付けには慣れないアベルである。
「人狼が約30、リザードマンが約100、サキュバスが20。大所帯になったな、大将」
「あぁ。それでもまだ足りない位だ」
ヴァルミラにどれ程の冒険者がいるのかはわからないが、最終的にはその全員を敵に回す事を考えると、もっと仲間が欲しいと考えているアベルである。
「こうなってくると、人間側の情報が欲しいな」
今必要なのはヴァルミラの情報だ。
どれ位の数冒険者がいるのか、その強さは、ギルドに自分達の情報がどれ程伝わっているのか。
知りたい情報は山ほどある。
とはいえ、自分達は魔族の集団である。人間に混ざって情報収集するのは無理だろう……と考え、アベルは一つの答えに辿り着いて笑みを浮かべる。
「悪い顔してるぜ、大将」
「――まぁな」
早速役に立って貰おう。
アベルは指示を出す為に、足早に村に戻ったのだった。