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第25話 決闘後

 リザードマン達を従える事になったアベルは、一先ずリザードマン達との話し合いを行う為、先程いた長の住居へと戻って来た。

 今部屋にいるのはアベル、そして人狼を代表してトロス。リザードマンからはクシュと、先程もいた雌のリザードマン、そして年老いたリザードマン2匹に、屈強な身体付きのリザードマンが1匹の合計七人だ。


「改めて自己紹介をしよう。俺が族長のクシュ・リュクシス。そしてこちらが――」

「アム・シャスと申します。祖霊を祀る【呪術師(シャーマン)】です」


 雌のリザードマンがアベルに向けて頭を下げる。


「彼女は祖霊を視る事が出来ると同時に、相手の魔力を――実力を見極める特殊な眼を持つ者だ」

「へぇ、”異能持ち”か」


 アベルは興味深そうにアムと名乗ったリザードマンを見る。

 人間にも時折、そういった特殊な能力を持つ者が現れる事がある。

 例えば『触れた者の傷を魔術を使わずに癒す』、『身体の一部を硬化出来る』、『相手の動きを止める眼を持つ』等様々だ。

 そういった者達を総称して、”異能持ち”と呼ぶ。


「そして前々族長ザザ・ジザと長老会のンザム・ゾーズ」


 年老いたリザードマン達が小さく頭を下げる。

 片方は歴戦の顔付きをした胸に大きな切り傷のあるリザードマン。

 もう一方は年老いた雌のリザードマンだ。


「で、この者が戦士長の――」

「テザン・アリュウだ。さっきの戦いは凄かったぜ、旦那」


 屈強なリザードマンがアベルを見て笑う。


「ハハ、有難う。……じゃこっちも自己紹介しないとな。俺はアベルだ。それと」

「この近くの森に棲む人狼族の戦士、トロスだ」


 アベルとトロスも自己紹介すると、クシュが口を開く。


「先も聞いたが森というのは近くにあるンジャの森……という理解で構わないのか?」

「ンジャ?」

「我が一族では近くにある森をそう呼ぶのだ」

「あぁ……成程、それで合ってると思うぜ」


 人間からはマルクトと呼ばれている森の事で合ってるらしい。


「……ではアベル……様。早速だが我等を支配下に置いて何をするつもりなのか聞いても良いか?」

「様はつけなくて良いぜ。……ま、世界征服って奴だ」

「せかいせいふく?」

「そうか、リザードマンにはそういった言葉がないのか。……つまり、全ての生き物の長になる、って事だ」


 リザードマン達が驚いた様に口をあんぐり開ける。


「――!! なんと! 大言壮語……とは言えまい。あれ程の力であるならばそれも可能なのやもしれん」

「えぇ、私もそう思います」

「クシュに勝ったアンタなら出来るかもな」


 クシュに――長に勝つ、というのがリザードマン達の中でどれだけ凄い事なのかを、アベルは理解する。

 まぁ井の中の蛙、と言えなくもないが。


「で、今は仲間を増やしている状況なんだ。……そこでだ」


 アベルは本題へ移る為に口を開く。


「そのンジャの森に住居を移す事は可能か?」


 本題とは、住居の移転である。

 リザードマン達が”ンジャの森”と呼ぶマルクト大森林とこの湿地帯では、少しばかり距離が離れている。

 それでは人間達が攻めて来た時、互いに助け合う事が出来ない。

 それなら、どちらかが住居を移すしかない。


 アベルの問いに、リザードマン達は顔を見合わせる。


「私は不可能かと思います」


 最初に意見を言ったのはアムだ。


「我等が此処に棲むのは此処が他の生き物が立ち寄らない場所だからです。ここ沼地は天然の要害ですから」

「儂もそう思うのぉ……それに長年此処で暮らして来たのだ。幾ら我等が支配者の言葉だとて、別の土地に移るのはのぉ……」


 長老会のンザムもアムに同意する。


「俺は移っても構わねぇと思うぜ」


 そう言ったのは戦士長のテザンだ。


「俺もこの土地に愛着があるが、別に俺達リザードマンは獲物がいるならどこでも暮らしていける。俺達は土地が変わって死ぬ程、軟弱じゃねぇだろ」


 テザンの言葉に、前族長ザザが頷く。

 リザードマン達の意見は完全に分かれていた。


「クシュ、手前はどう思うんだ?」


 暫く考える様に瞑目していたクシュがアベルに促され、口を開く。


「――ふむ。確かにアムの言う通り、この場所は天然の要害、他の生き物も余り近寄らぬ土地だ。なるべくならば此処から移りたくはない。……が」


 そこでクシュは閉じていた眼を開く。


「支配者の――強者の言葉に従うのが我が種族の掟。その掟に従うのならば、我等はアベル様の要請に従い、移住するのが道理だ」


 それを言ったっきり、クシュは黙ってしまう。

 他のリザードマン達もどうするかと深く考え込む。


「……ウチの近くに沼地があれば良いんだが」


 ポツリと呟いたトロスのそんな言葉に、


「なら作れば良いじゃん」


 そう答えたのは、聞き馴染んだ声。

 アベル達が声のした方を向くと、いつの間にか住居の入り口近くにベェルが立っていた。




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