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差し伸べられるは救いの手

「……フィオネル?」


 いるはずのない存在を前に。

 アイリーンは、状況も忘れて目をぱちくりさせた。

 毒で動けなくなっているはずの執事フィオネルが、なぜか自分の前にいる。

 犯人のアジトで絶体絶命の危機に陥っていたこちらを、助けてくれている――奈落に落ちそうになっていたアイリーンの手を掴み、引き上げつつフィオネルは言う。


「中和剤を作っていただき動けるようにはなりました! それよりもアイリーン様、早く上がってきてください!」

「え、ええ」


 理解の追い付かない展開に言われるがまま、アイリーンは浮遊の魔法で穴を抜け出す。

 中和剤、といったか。

 解毒剤なら確かに、こちらの手の中にあるが――きょとんとした表情のままアイリーンは、こちらの無事を確認し胸をなでおろす執事を見た。


「中和剤って、誰に作ってもらったの? そんなもの」

「『月華(げっか)の魔術師』です。話せば長くなるのですが」


 以前アイリーンの守護のリボンを作った、魔術師の名前。

 それをフィオネルは口にした。どうやってかの魔術師に助けを求めたのか。そしてどうやって中和剤を作ってもらったのか。

 その説明をアイリーンが求める前に、あたりに底冷えのする声が響く。


「……あなた、何してるの?」


 毒の黒百合が。

 冥界の姫、ユリアが。

 硬い表情でフィオネルを見ていた。


「わたしの作った毒は、そう簡単に解けるものではないはずなのだけど。どうして動けているの――?」

「連携プレーがありまして」


 ただならぬ空気を醸し出すユリアから、アイリーンをかばうように立ちつつフィオネルは答える。


「事情を知ったミミックが魔術師の下へ走り、特殊な花を対価に要求され、精霊界にしかないその花を赤鬼がドラゴンに乗って摘みに行きました!」

「……は?」

「だから、月華の魔術師にスズエがかけあって、精霊界にしかない花を対価に中和剤を作ってもらったんです。移動はダクラネル様が。実際に探して摘むのはイアンナが。精霊界への往来と花を摘む許可はミラベル様が快く出してくださいました!」

「あのキラふわ精霊姫……ポイント稼ぎにご執心じゃない……」


 どうも前回の事件で、この執事が気になりだした感のある精霊姫である。ここぞとばかりに恩を売りに来たらしい。

 密かに拳を握るアイリーンに対して、フィオネルは「ちなみにムラゾウはずっと私に付き添ってくれていました!」と見当違いのフォローをかましていた。


 ともあれ、中和剤を投与された執事はその足で、急ぎ犯人のアジトまでやってきたのだ。

 場所はユリアからの招待状を受け取ったときに一緒に聞いている。暗黒竜が付いているとなれば移動方法も申し分ない。

 そして、提示された謎についても。


「『探偵と犯人の違い』について。私なりに考えてみたんです」


 助手執事はアイリーンに、解決の道筋を示してみせた。

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