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学校へ行こう

「たまには学校にでも行ってみるかしらね」


 魔王の娘・アイリーンの言葉に、フィオネルは渋い顔をした。

 基本的に魔王城で帝王学を受けるアイリーンは、学校に行く必要などあまりない。しかし体面上いちおう学校には籍があり、気が向いた時にはアイリーンも登校している。

 年の近い者もいるだけに、フィオネルも執事としてお目付け役として、学校に行って友達でも作ればいいと思っていた。なので常であれば彼女の発言は、歓迎すべきものである。

 が。


「アイリーン様、お言葉ながら今は無闇に外出されない方がよろしいのでは?」


 ただ、今は通常の時期ではない。

 間近で炎が巻き上がり、危うくアイリーンも巻き込まれそうになったのは少し前のことだ。

 魔法による火は明らかに事故ではなく彼女を狙っていた。なのでフィオネルとしては、うかつにアイリーンを城の外に出したくはない。

 魔王の娘だけあってアイリーン自身も途方もない魔力を持っているが、それでも万が一はある。

 心配そうに言ってくるフィオネルに、しかしアイリーンは不敵に笑ってみせた。


「大丈夫よ。大抵の狼藉(ろうぜき)なら私だけでなんとかなるわ」

「しかし」

()()もあるしね」


 そう言って、彼女が触れたのは以前にフィオネルが贈った赤のリボンだ。

 月華(げっか)の魔術師の魔法がかけられている、守護のリボン。金色の文字は魔法の力で淡く輝いており、確かな魔力を感じさせる。

 それなりに信用はおけそうである。だが、ひとりで行かせるにはやはり抵抗がある――そんな面持ちで押し黙るフィオネルに、アイリーンは言う。


「しばらく待ってみても相手から何のアクションもないのだもの。だったらこっちから打って出るわ」

(おとり)、ということですか」

「そうよ。尻尾を出さないならこっちから掴みにいってやろうということ」


 いつまでも魔王城の一室にこもりきりというわけにはいかない――まあ元から城に引きこもり気味ではあるが、いつ狙われるか分からない状態で部屋にいるのと、自由な身で過ごすのには雲泥の差がある。

 もしものことなど気にせずこちらから動くというのは、状況打開策としてアリである。事件解決の目処が立っていない以上、自分の足で手がかりを探すべきだ。

 そしてアイリーンは一度言い出したらきかないのである。ワガママともいう。執事になってからそれを嫌というほど思い知らされてきたフィオネルは、根負けして盛大にため息をつく。


「分かりました。学校に参りましょう」

「ふふ。当然よね」

「ただし」


 勝ち誇るアイリーンにフィオネルはびしりと言い放った。

 むすっとした仏頂面で執事は、お嬢様にある条件を突きつける。


「私も同行させていただきます」

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