表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/60

フィオネルの災難・お茶会は再び

「いやまさか、またミミックの中に入ることになるとは思ってませんでした……」


 謎が解け、再びお茶会を始めた魔王の娘の部屋で。

 執事のフィオネルは、げんなりとつぶやいた。


 推理の披露が終わった後、証拠を見つけるためにフィオネルは、もう一度ミミックの倉庫に入ったのだ。


 消えた金貨――と思われていた、コインチョコレート。


 その金色の包み紙を見つけて、ほうほうの体で外界に戻ってきた。肉を溶かす、つまり身体の成分を溶かすミミックの体内にいたのだ。生きた心地がしなかった。


 山ほどある金貨の中で、ペラッペラになったチョコレートの金紙を探すのも、それはそれで大変だったけれども。

 ちなみに当のミミックであるスズエは、「こんな偽物に騙されおって、ワイ恥ずかしいー!」と持ち帰ってきた包みを見て叫んでいた。


 文字通り、金貨を食べてしまった――食いしん坊のミミックのことをクスリと笑い、アイリーンは言う。


「いいじゃない。おかげでまたひとつ、楽しい時間が過ごせたわ。やっぱり推理っていいものね」


 お茶会の途中でやってきたミステリーは、探偵を目指す彼女にとってみれば、いい休憩のおやつだったかもしれない。

 また温かく淹れなおしたお茶を片手に、アイリーンは笑う。


「じゃあ、やっぱり最初のお話に戻りましょうか。フィオネル、私お茶に合うお菓子がほしいわ」

「……そのお菓子、というのは、言葉どおりの意味ですか。それともまた謎を持ってこいということですか」


 お嬢様の再びの小さなワガママに、さすがのフィオネルといえども憎まれ口が出た。

 今回は推理の実証に、軽く命の危機を感じたのだ。いくら忠実な(しもべ)といえど、そんな態度に出たくもなる。

 だがアイリーンは、「あら、ご挨拶ね」とカップを両手に包んでおかしげに言うばかりだ。


「まあ、両方――と言いたいところだけど。今回の件の働きに免じて、お菓子だけで許してあげるわ。今日のところは」

「恐ろしい答えですね……。分かりました。では何かお持ちいたしましょう」


 無邪気に笑うお嬢様に一礼し、フィオネルは部屋を出る。

 クッキーにしようか、スコーンにしようか。

 あるいは、今の彼女の気分的にはやはり、チョコレートケーキだろうか――そんなことを、考えながら。

金貨はどこへ消えた? ~完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=189428228&s
― 新着の感想 ―
[良い点] 「金貨はどこへ消えた?」拝読。  この謎は面白くて、アイリーンの推理にも「なるほど~」と感心してしまいました。ミミックが相談にくるという展開も楽しいですね。 [一言] 「生き物を溶かす物質…
[一言] フィオネルさん、再びミミックの中に入っていくとは、ご愁傷様です。 さすがに、アイリーンお嬢様の執事とはいえ、憎まれ口を叩いてしまうのは仕方ないですよね。結果的には、見事アイリーンお嬢様にやら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ