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まずは密室を調べよう

「密室から消えた金貨。すばら……いえ、興味深いじゃない」

「今、素晴らしいって言いかけましたよね。アイリーン様」


 ミミックから消えた金貨の謎を聞き、アイリーンは高揚した顔でうなずく。

 それにアイリーンの執事・フィオネルは突っ込んだ。なくなったのは臣下のミミック・スズエの所有物である。


 自分のものでないとはいえ、ものがなくなったのに喜ぶのはさすがに不謹慎だ。

 ましてや、盗まれた可能性もまだ捨てきれていないのだから――と、フィオネルはもう一度ため息をついた。


 推理小説(ミステリー)に憧れて、探偵になりたいなどと言い出したアイリーンである。この状態はお目付け役として頭が痛い。

 探偵あるところ事件あり。事件あるところつまり、被害者の不幸ありである。


 先日の魔王城連続殺モンスター事件のように、また妙な誤解を生むことにもなりかねない。

 今回もしっかりお守りせねば、と主に倫理的に決意して、フィオネルはアイリーンとともに解決に乗り出すことにした。


「……分かりました。この密室を破る手段を探しましょう」


 胃が痛いことだが、それが事件の現場でアイリーンを守れる唯一の手段なのである。

 危ないことにならなければいいが、とミミック・スズエの牙を見てフィオネルは思う。


「スズエ。たとえば、だが。気づかれずにおまえの自動防御をかいくぐって、中の金貨を持ち出す方法はないのか?」

「ううーん。ないことはないけれど、相当高度な幻惑魔法でも使わんと無理やろなあ。行きずりの犯行だとしたら、まず不可能な芸当やと思うけど」

「ふむ。普通の方法では気づかれずに中のものを盗むのは無理、か……」


 となると方法はかなり、限られることになる。

 箱を開けようとすると、寝ていようがいまいが襲い掛かってくるミミック。そんな存在から金貨を盗めるものだろうか。

 何か穴はないだろうか。文字通りの鍵穴は。

 首を傾げてフィオネルは、スズエの宝箱に見えるボディを見た。


「その……初めて見るのだが、おまえらの身体というのはどうなっているんだ? 一度ちゃんと確かめてもいいか?」

「かまへんよー」


 フィオネルの言葉にあっけらかんと答え、スズエががぱーっと口を開ける。

 すなわち、宝箱を開ける。蓋のふちには牙がずらりと並び、箱の内部には虚無が広がっていた。

 ありていに言って、取って食われそうな怖さがある。うっ、と思わず後ずさりするフィオネルだったが、隣で興味津々な顔をしているアイリーンを見て踏みとどまった。

 己が主人に、ミミックの中を確かめさせるわけにはいかない。


「ええい、ままよ!」


 意を決してフィオネルは、箱の中に上半身を突っ込んだ。

 ずぶり、と水に入るような感覚の後――

 ミミックの、内部の光景が見えてくる。

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