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異世界転移の王子様

掲載日:2020/06/28

異世界転移した王子様と、アラサーOLのおはなし。@短編その38

「え」


うちの庭に、コスプレの男が立っていた。

ぼーーっとしている。

王子様ルックだね、どうしてうちの庭にいるんだ。

入れないはずだよ?不法侵入だね、うん。

あたしは家に一旦入り、竹刀を取ろうとして、その隣の木刀にチェンジ、ぎゅっと握って庭に戻る。


「でええええぇ・・!!!」


小手面!!すぱぱーーん!!

だが男は腰に帯刀していた剣で、瞬時に反撃。

私の手の木刀が、ばらばらばらと輪切りになって落ちた。


「うわーーー!!十七年使い込んだ木刀がーーー!!」


名前は名刀に肖って『一期一振』、あたしの一期がーーー!!


「よくも斬ったなー。こっちは木刀で済ませるつもりだったのにーー」

「剣は剣だ。そっちが先に仕掛けて来ただろうが」

「うわああん、一期ぉ〜〜」

「お前、誰だ?」

「お前こそ誰だぁ、不法侵入しやがってぇ、あたしひとり、女だけの家に勝手に入ってるんだぞ!」

「・・・お前、女だと?」

「   」


声が、言葉が出なかったわ。ひゅ、と息飲む音しか出なかったわ。

髪、長いじゃろ?ピンクのモコモコルームウエアじゃろ?

女じゃん。

どこ見たって女じゃん。

今日は日曜だから、ノーメイクでグータラしてるだけ、いつもはキリッとしたOLだよ。

胸は分かりにくいけど、着痩せする体質だから分かり辛いけど、Fなんじゃぞ。たゆんたゆんじゃぞ。

言っておくがデブではない。身長166、体重56、ウエストは58、で、F。

見事じゃろ?年齢は・・・聞かんでくれぃ・・・アラサーだよ・・・

25まではもうスッゲーモテてたんだよ。

その頃は仕事人間でな、婚期を逃してしまったんじゃ・・・泣くぞ。

今では、デートしてくれる奇特な人もいないよ。男の友人はみんな既婚だよ。

いいんだよ、管理職で、結構な収入もあるし。

・・・・親の遺産もあるし。

両親が生きてるうちに、結婚して孫を見せられなかった事が、心残りくらいだよ。

まさか両親が乗っている車に、トラックが後ろから突っ込んで押し出して、谷底に落とすとは思わないよ。

やっと1周忌、ようやく気持ちも落ち着いたところだよ。

保険金、家、遺産と金は潤沢だけど、それがどうした。

あたしはひとりになっちゃったよ。

4LDKにひとりきりだよ。

お父さんも、お母さんも・・・


・・あ、涙出て来ちゃった・・


「・・・えぐっ」

「お前?」

「コスプレ男、何しに来やがった・・・出て行け・・・」

「こすぷれとはなんだ?」

「現代日本人か?あ、銀髪じゃん。ウィグ?」


おもわず男の髪をむんずと掴んで引っ張る・・

なにぃ?と、取れない!!

パァン!!

良い音の後、手がじわっと痛くなった。

ああ、あたしの手を払い落としたんだ、遅れて認識した。


「手を離せ、無礼者が!!」


無礼者。

まさかね?


「王子様かな?」

「ゼブライ王国第一王子、ギルリアンだ」

「どこの国だ??」


思わずスマホで検索しちゃったよ。

無いわ・・・あ。出た。現存する国なのか〜、知らんかったぁ。


『ドラゴン舞う国より愛を込めて』

()()()()()()では王位継承で国の中枢が・・・


ん?

んん?

『ドラゴン舞う国より愛を込めて』

・・・ゲーム、だわ。


登場人物の中に、いた。ギルリアン王子(26)


へええ。ゲーム登場人物にしては年齢が高いね。まあ、あたしより年下だねぇ。

他の登場人物は、16歳から21歳。うん、乙女ゲーならこのくらいの年齢層かな?

ということは、この王子、彼にとっては異世界に来ちゃったの?

私は王子を見る。

彼は不愉快そうな顔をしている。だろうね。

彼はこの世界で、ひとりなんだ。

私と同じだ。


「王子。あんたは異世界に来ちゃったのよ。意味、分かる?」

「・・・ここは異世界だと?」

「その格好じゃ、じろじろ見られるから、着替えなさいよ」

「分かった」


で、父の服を取り出した。まだ遺品整理していないから、服も色々残っている。

うちの父は、結構ダンディでハンサムでスタイルも良かったからね。王子と体格も同じくらいだ。


「スーツならいいでしょ、はい」

「・・・」


スーツ、シャツ、ネクタイ、靴下と出して王子を見ると・・・立ったまま。

着ろよ。


「着せないのか?」

「は?」


そうか。王子様は、ご自分で着脱しないと。


「上着ぐらい自分で脱ぎなさいよ」

「どこに仕舞うのかわからん」


あー、使用人が脱がせたら、埃や汚れをとってハンガーに掛けて仕舞うのですね。


「はいはい。仕方が無いですねぇ。あたしがやってあげましょうねぇ。そこ腰掛けて」


椅子に座らせて、靴下を脱がせる。


「ちょっと立って」


立たせて上着、クラバット、シャツ、中の下着を脱がせて上半身を裸にした。

うわ、腹割れてる。結構筋肉質ぅ。涎が出ますなぁ!おっといけない。無心無心。

アンダーシャツを着せて、カッターシャツを着せて、いったん上半身は終了。

・・・・・・下半身か。困ったな・・・ええいっ!

ベルトを取り、ズボンの・・あ。ファスナーじゃ無い。触れちゃうね、股間。


「ここのボタンくらい自分で取ってよ」

「気にするな」

「気にするわ!!」

「使用人がする事に、いちいち反応などせぬ」

「なんだとぅ、デカイ態度だな。着せてやらないぞ」

「全く・・・ほら」


ボタンをとってくれたので、ズボンを脱がそうとカパッとウエスト部分を広げたら・・ぎょ?!

ひ。紐パンだぁ!!い、いや落ち着け、これは・・・褌!!そうだ褌だ、うんうん。


「し、下着も替えますか?」

「そうしよう」


王子はあっさりと下着を目の前で脱いだ。私の顔から30センチと離れていない・・・そのときあたしは脱いだズボンを畳もうと、しゃがんだところだった・・・

ぎょおおおおおおおおお

悲鳴は声にならなかった。おおよそ30秒は凝視してしまった。

おろおろオタオタしながら、下着を探して手渡した。

右手にボクサーパンツ持ったまま、王子は首を傾げている。


「どう履くのだ?」

「ばかーーーー!!か、片足、ここに入れて!」


まず右足をパンツに通し、


「左足を入れてーー!!」


そして左足を通したので、一気に引き上げて履かせようとして、あそこに前部分の布が引っかかった。

あれがぶるんと跳ねた。ついでに触ってしまった。


「うっ」

「きゃあーーーーー、じ、自分で納めてぇ!!!」

「もう少し優しく出来んのか」

「出来ませんーーー!!ぎゃああ・・」

「ズボン」


その上、ズボンを履かせよと。もうあそこは見えないから、落ち着けあたし。


「その前に靴下。椅子座って」

「うむ」


靴下からは、なんとか落ち着いて着せ替えが出来ました。今ネクタイを締めてあげてます。よし完成!!

ん?今思ったんだけど・・・

着替え、毎回私が着せるの?


「パンツと靴下は自分でやってもらおう、じゃない。全部自分でやらせなければ」


そして椅子にもう一度腰掛けてもらい、肩にケープを巻いて、髪を梳いてキラキラな銀髪を整えた。


「そこで待っていて」


あたしも部屋に戻ると着替え、手早くメイクをして、さて行くかと振り返ると、王子がドアに寄りかかっていた。

着替え、見られた・・・


「見るんじゃないいっ!!」

「ほう。こうして着替えれば、なかなか見られるじゃ無いか」

「お褒めいただき光栄ですーー」


そして王子に腹パン『弱』を喰らわせた。




その後車を出して、王子に異世界ドライブを楽しんでもらう事にした。


王子、それはもう、大喜び、驚嘆でしたよ。

そして質問攻め。

なんかこうしてドライブなんて久しぶり。ちょっと楽しいかな。

ドライブスルーでバーガーセットを注文して、王子に振る舞ったらおいしいおいしいって。

よし、夜は銀座でディナーだ。


夜景を望めるレストランで、イタリアンですよ。

私はドライバーだから、王子だけにワインを飲んでもらった。

ふふ。デートみたいだ。

何年ぶりかなぁ。まあ、彼氏いないし、仕方ないね。


この後展望台で夜景を堪能してもらう。

多分異世界では、ここまですごい夜景は見られないだろうからね。


「すごい世界なのだな、ここは」

「あたしも働いているんだよ」

「おなごも働く世界なのか」

「そうそう。だから、女一人でも生きていけるんだよ」

「剣を持っているものはいないのだな」

「この世界は、剣で戦わないよ。スポーツとして楽しんでいるよ」

「そうなのか。お前が使ったのは剣だな」


ああ、一期を斬られたね。木刀が鋼に敵うものかよ、うう。


「私の国の武術、剣道の木刀。剣じゃなくて、刀っていうんだよ。もちろん、鋼で作った物もあるよ」


スマホで画像を見せると、画像よりもスマホに驚いていた。


「すごいな!まるで『時』を切り取ったようだ!!」

「王子はさすが、詩人だねぇ」


王子が上機嫌、あたしも上機嫌でディナーを終え、車でライト瞬く道を走らせ・・




うちに一旦戻って、近所のコンビニに寄って、お酒やつまみを買って。


テレビをつけるとまた王子が喜んで。


お酒を呑みながら、おつまみを食べて、おしゃべりをして、テレビの番組を見て・・・


エッチなシーンが映って、あたしと王子は固まって・・ちょっと微妙な空気になって・・・






朝起きたら、王子が消えていた。


ベッドであたしの隣には、誰かいたであろうくぼみがあって、まだほんのり温かくて。

王子が着てきた服は残っていた。




3ヶ月後、具合が悪くなって、病院に行ったら・・・私に家族が出来た。



それからは、子供中心の生活となった。

今は未婚のママが多くて生きやすい。遺産など、お金もあって良かった。



生まれた子供は可愛い男の子で、パパ似だった。





そして、息子は14歳のある日、消えた。

私には分かった。

あの子はパパの世界に行ったのだ。


息子は留学したと嘘を言い、なんとか誤魔化す事にした。

もしかして、パパと同じで帰ってこないかもしれない。

それよりも、パパに受け入れてもらえるかが心配だ。そして生き残れるか。






「ただいま」


息子が帰ってきた。あれから何年経っただろう。

ああ、パパとそっくりだ。出会った時のパパと、同じくらいの歳格好になっている。

向こうとこっちでは、時間の流れが違うのだね。



「パパが待っているよ。ママも行こう」


返事をする間もなく、息子は私の手を取り、跳んだ。





あたしはパパが消えてから、ゲームのことが気になってプレイした。


ギルリアン王子は国の為に尽力する役で、彼の子供が勇者となって国を救うのだ。

魔術に長けた王子で、魔術を使って己の手で子供を作り、『勇者』にするとある。

だが禁断の術を使ったせいで、禁固刑を言い渡されるのだ。


その『作った』子供。それがあたしの息子だ。

14歳で異世界に行った彼は、パパと同じ27歳になって戻ってきた。


息子はすでにこの世界の人間で、好きな人が出来て、子供もいた。

ひえええ、孫とか!!

息子の家に行くと、お嫁さんと孫、そして、彼がいた。

牢獄に十年以上囚われていたそうだけど、窶れていなくて相変わらずハンサムだった。美ダンディ。


「今いくつだ」

「今47よ。おばさんどころじゃ無いわよ」

「私の方が年上になったな。51だ」

「全然見えない!!ずるい!!」

「いや、お前はあの時と変わらず綺麗だ」


ふふふ。当然です。

もしかして、また帰ってくるかもと思って、毎日化粧も美容も欠かしませんでした!!

あたしの努力は無駄じゃなかった!!嬉しい!!

スタイルも、体重も、胸が垂れないようにと、全力でした!!

ご近所の皆様には「美魔女」と言われていました!!


息子は14歳でこの世界に来た時、パパは38歳だった。

あたしの元から息子が異世界に行った時間は2年。

随分、時差があるものですね。

本来なら、16歳ぐらいの年齢の息子が27歳では、もうあの世界では暮らせないね。

ママも何言われかわからん、いや犯罪かと思われるのも困る。

うん、ここにいよう。パパもいるし。



「お前がしてくれたように、我が国を私が案内しよう」


そしてあたしはパパと一緒に旅立ったのだ。


こうしてパパと一緒にいると、なんだか不思議。

離れて暮らしていたし、一度も会ったことがない息子はパパそっくりな性格に育ったのだ。

こういうものなのかな?

息子を育てるうちに、あたしはパパの性格を知って、パパを愛したのだ。


「なあ、お前。パパと言わず、ギルリアンと呼んでくれないか?」

「じゃああたしをお前と呼ぶのはやめてよ」

「・・・お前、名前教えてくれなかったじゃないか」

「そうだっけ??」


本当、そうだっけ?ですよ。

ようやく名前を教えて、あたしはギルに名前で呼んでもらって、うん。


やっと夫婦になれたんだ、そう思ったのでした。


息子の家族に、面倒を見てもらうような歳ではない。ばあばと言わせてなるか。

ギルも、もう国の為にすることはしたと、引退です。


あたしとギルは、のんびりと国内行脚と洒落込むのでした。


ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。連載もあるよ!

どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。

https://www.pixiv.net/users/476191

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