異世界転移の王子様
異世界転移した王子様と、アラサーOLのおはなし。@短編その38
「え」
うちの庭に、コスプレの男が立っていた。
ぼーーっとしている。
王子様ルックだね、どうしてうちの庭にいるんだ。
入れないはずだよ?不法侵入だね、うん。
あたしは家に一旦入り、竹刀を取ろうとして、その隣の木刀にチェンジ、ぎゅっと握って庭に戻る。
「でええええぇ・・!!!」
小手面!!すぱぱーーん!!
だが男は腰に帯刀していた剣で、瞬時に反撃。
私の手の木刀が、ばらばらばらと輪切りになって落ちた。
「うわーーー!!十七年使い込んだ木刀がーーー!!」
名前は名刀に肖って『一期一振』、あたしの一期がーーー!!
「よくも斬ったなー。こっちは木刀で済ませるつもりだったのにーー」
「剣は剣だ。そっちが先に仕掛けて来ただろうが」
「うわああん、一期ぉ〜〜」
「お前、誰だ?」
「お前こそ誰だぁ、不法侵入しやがってぇ、あたしひとり、女だけの家に勝手に入ってるんだぞ!」
「・・・お前、女だと?」
「 」
声が、言葉が出なかったわ。ひゅ、と息飲む音しか出なかったわ。
髪、長いじゃろ?ピンクのモコモコルームウエアじゃろ?
女じゃん。
どこ見たって女じゃん。
今日は日曜だから、ノーメイクでグータラしてるだけ、いつもはキリッとしたOLだよ。
胸は分かりにくいけど、着痩せする体質だから分かり辛いけど、Fなんじゃぞ。たゆんたゆんじゃぞ。
言っておくがデブではない。身長166、体重56、ウエストは58、で、F。
見事じゃろ?年齢は・・・聞かんでくれぃ・・・アラサーだよ・・・
25まではもうスッゲーモテてたんだよ。
その頃は仕事人間でな、婚期を逃してしまったんじゃ・・・泣くぞ。
今では、デートしてくれる奇特な人もいないよ。男の友人はみんな既婚だよ。
いいんだよ、管理職で、結構な収入もあるし。
・・・・親の遺産もあるし。
両親が生きてるうちに、結婚して孫を見せられなかった事が、心残りくらいだよ。
まさか両親が乗っている車に、トラックが後ろから突っ込んで押し出して、谷底に落とすとは思わないよ。
やっと1周忌、ようやく気持ちも落ち着いたところだよ。
保険金、家、遺産と金は潤沢だけど、それがどうした。
あたしはひとりになっちゃったよ。
4LDKにひとりきりだよ。
お父さんも、お母さんも・・・
・・あ、涙出て来ちゃった・・
「・・・えぐっ」
「お前?」
「コスプレ男、何しに来やがった・・・出て行け・・・」
「こすぷれとはなんだ?」
「現代日本人か?あ、銀髪じゃん。ウィグ?」
おもわず男の髪をむんずと掴んで引っ張る・・
なにぃ?と、取れない!!
パァン!!
良い音の後、手がじわっと痛くなった。
ああ、あたしの手を払い落としたんだ、遅れて認識した。
「手を離せ、無礼者が!!」
無礼者。
まさかね?
「王子様かな?」
「ゼブライ王国第一王子、ギルリアンだ」
「どこの国だ??」
思わずスマホで検索しちゃったよ。
無いわ・・・あ。出た。現存する国なのか〜、知らんかったぁ。
『ドラゴン舞う国より愛を込めて』
ゼブライ王国では王位継承で国の中枢が・・・
ん?
んん?
『ドラゴン舞う国より愛を込めて』
・・・ゲーム、だわ。
登場人物の中に、いた。ギルリアン王子(26)
へええ。ゲーム登場人物にしては年齢が高いね。まあ、あたしより年下だねぇ。
他の登場人物は、16歳から21歳。うん、乙女ゲーならこのくらいの年齢層かな?
ということは、この王子、彼にとっては異世界に来ちゃったの?
私は王子を見る。
彼は不愉快そうな顔をしている。だろうね。
彼はこの世界で、ひとりなんだ。
私と同じだ。
「王子。あんたは異世界に来ちゃったのよ。意味、分かる?」
「・・・ここは異世界だと?」
「その格好じゃ、じろじろ見られるから、着替えなさいよ」
「分かった」
で、父の服を取り出した。まだ遺品整理していないから、服も色々残っている。
うちの父は、結構ダンディでハンサムでスタイルも良かったからね。王子と体格も同じくらいだ。
「スーツならいいでしょ、はい」
「・・・」
スーツ、シャツ、ネクタイ、靴下と出して王子を見ると・・・立ったまま。
着ろよ。
「着せないのか?」
「は?」
そうか。王子様は、ご自分で着脱しないと。
「上着ぐらい自分で脱ぎなさいよ」
「どこに仕舞うのかわからん」
あー、使用人が脱がせたら、埃や汚れをとってハンガーに掛けて仕舞うのですね。
「はいはい。仕方が無いですねぇ。あたしがやってあげましょうねぇ。そこ腰掛けて」
椅子に座らせて、靴下を脱がせる。
「ちょっと立って」
立たせて上着、クラバット、シャツ、中の下着を脱がせて上半身を裸にした。
うわ、腹割れてる。結構筋肉質ぅ。涎が出ますなぁ!おっといけない。無心無心。
アンダーシャツを着せて、カッターシャツを着せて、いったん上半身は終了。
・・・・・・下半身か。困ったな・・・ええいっ!
ベルトを取り、ズボンの・・あ。ファスナーじゃ無い。触れちゃうね、股間。
「ここのボタンくらい自分で取ってよ」
「気にするな」
「気にするわ!!」
「使用人がする事に、いちいち反応などせぬ」
「なんだとぅ、デカイ態度だな。着せてやらないぞ」
「全く・・・ほら」
ボタンをとってくれたので、ズボンを脱がそうとカパッとウエスト部分を広げたら・・ぎょ?!
ひ。紐パンだぁ!!い、いや落ち着け、これは・・・褌!!そうだ褌だ、うんうん。
「し、下着も替えますか?」
「そうしよう」
王子はあっさりと下着を目の前で脱いだ。私の顔から30センチと離れていない・・・そのときあたしは脱いだズボンを畳もうと、しゃがんだところだった・・・
ぎょおおおおおおおおお
悲鳴は声にならなかった。おおよそ30秒は凝視してしまった。
おろおろオタオタしながら、下着を探して手渡した。
右手にボクサーパンツ持ったまま、王子は首を傾げている。
「どう履くのだ?」
「ばかーーーー!!か、片足、ここに入れて!」
まず右足をパンツに通し、
「左足を入れてーー!!」
そして左足を通したので、一気に引き上げて履かせようとして、あそこに前部分の布が引っかかった。
あれがぶるんと跳ねた。ついでに触ってしまった。
「うっ」
「きゃあーーーーー、じ、自分で納めてぇ!!!」
「もう少し優しく出来んのか」
「出来ませんーーー!!ぎゃああ・・」
「ズボン」
その上、ズボンを履かせよと。もうあそこは見えないから、落ち着けあたし。
「その前に靴下。椅子座って」
「うむ」
靴下からは、なんとか落ち着いて着せ替えが出来ました。今ネクタイを締めてあげてます。よし完成!!
ん?今思ったんだけど・・・
着替え、毎回私が着せるの?
「パンツと靴下は自分でやってもらおう、じゃない。全部自分でやらせなければ」
そして椅子にもう一度腰掛けてもらい、肩にケープを巻いて、髪を梳いてキラキラな銀髪を整えた。
「そこで待っていて」
あたしも部屋に戻ると着替え、手早くメイクをして、さて行くかと振り返ると、王子がドアに寄りかかっていた。
着替え、見られた・・・
「見るんじゃないいっ!!」
「ほう。こうして着替えれば、なかなか見られるじゃ無いか」
「お褒めいただき光栄ですーー」
そして王子に腹パン『弱』を喰らわせた。
その後車を出して、王子に異世界ドライブを楽しんでもらう事にした。
王子、それはもう、大喜び、驚嘆でしたよ。
そして質問攻め。
なんかこうしてドライブなんて久しぶり。ちょっと楽しいかな。
ドライブスルーでバーガーセットを注文して、王子に振る舞ったらおいしいおいしいって。
よし、夜は銀座でディナーだ。
夜景を望めるレストランで、イタリアンですよ。
私はドライバーだから、王子だけにワインを飲んでもらった。
ふふ。デートみたいだ。
何年ぶりかなぁ。まあ、彼氏いないし、仕方ないね。
この後展望台で夜景を堪能してもらう。
多分異世界では、ここまですごい夜景は見られないだろうからね。
「すごい世界なのだな、ここは」
「あたしも働いているんだよ」
「おなごも働く世界なのか」
「そうそう。だから、女一人でも生きていけるんだよ」
「剣を持っているものはいないのだな」
「この世界は、剣で戦わないよ。スポーツとして楽しんでいるよ」
「そうなのか。お前が使ったのは剣だな」
ああ、一期を斬られたね。木刀が鋼に敵うものかよ、うう。
「私の国の武術、剣道の木刀。剣じゃなくて、刀っていうんだよ。もちろん、鋼で作った物もあるよ」
スマホで画像を見せると、画像よりもスマホに驚いていた。
「すごいな!まるで『時』を切り取ったようだ!!」
「王子はさすが、詩人だねぇ」
王子が上機嫌、あたしも上機嫌でディナーを終え、車でライト瞬く道を走らせ・・
うちに一旦戻って、近所のコンビニに寄って、お酒やつまみを買って。
テレビをつけるとまた王子が喜んで。
お酒を呑みながら、おつまみを食べて、おしゃべりをして、テレビの番組を見て・・・
エッチなシーンが映って、あたしと王子は固まって・・ちょっと微妙な空気になって・・・
朝起きたら、王子が消えていた。
ベッドであたしの隣には、誰かいたであろうくぼみがあって、まだほんのり温かくて。
王子が着てきた服は残っていた。
3ヶ月後、具合が悪くなって、病院に行ったら・・・私に家族が出来た。
それからは、子供中心の生活となった。
今は未婚のママが多くて生きやすい。遺産など、お金もあって良かった。
生まれた子供は可愛い男の子で、パパ似だった。
そして、息子は14歳のある日、消えた。
私には分かった。
あの子はパパの世界に行ったのだ。
息子は留学したと嘘を言い、なんとか誤魔化す事にした。
もしかして、パパと同じで帰ってこないかもしれない。
それよりも、パパに受け入れてもらえるかが心配だ。そして生き残れるか。
「ただいま」
息子が帰ってきた。あれから何年経っただろう。
ああ、パパとそっくりだ。出会った時のパパと、同じくらいの歳格好になっている。
向こうとこっちでは、時間の流れが違うのだね。
「パパが待っているよ。ママも行こう」
返事をする間もなく、息子は私の手を取り、跳んだ。
あたしはパパが消えてから、ゲームのことが気になってプレイした。
ギルリアン王子は国の為に尽力する役で、彼の子供が勇者となって国を救うのだ。
魔術に長けた王子で、魔術を使って己の手で子供を作り、『勇者』にするとある。
だが禁断の術を使ったせいで、禁固刑を言い渡されるのだ。
その『作った』子供。それがあたしの息子だ。
14歳で異世界に行った彼は、パパと同じ27歳になって戻ってきた。
息子はすでにこの世界の人間で、好きな人が出来て、子供もいた。
ひえええ、孫とか!!
息子の家に行くと、お嫁さんと孫、そして、彼がいた。
牢獄に十年以上囚われていたそうだけど、窶れていなくて相変わらずハンサムだった。美ダンディ。
「今いくつだ」
「今47よ。おばさんどころじゃ無いわよ」
「私の方が年上になったな。51だ」
「全然見えない!!ずるい!!」
「いや、お前はあの時と変わらず綺麗だ」
ふふふ。当然です。
もしかして、また帰ってくるかもと思って、毎日化粧も美容も欠かしませんでした!!
あたしの努力は無駄じゃなかった!!嬉しい!!
スタイルも、体重も、胸が垂れないようにと、全力でした!!
ご近所の皆様には「美魔女」と言われていました!!
息子は14歳でこの世界に来た時、パパは38歳だった。
あたしの元から息子が異世界に行った時間は2年。
随分、時差があるものですね。
本来なら、16歳ぐらいの年齢の息子が27歳では、もうあの世界では暮らせないね。
ママも何言われかわからん、いや犯罪かと思われるのも困る。
うん、ここにいよう。パパもいるし。
「お前がしてくれたように、我が国を私が案内しよう」
そしてあたしはパパと一緒に旅立ったのだ。
こうしてパパと一緒にいると、なんだか不思議。
離れて暮らしていたし、一度も会ったことがない息子はパパそっくりな性格に育ったのだ。
こういうものなのかな?
息子を育てるうちに、あたしはパパの性格を知って、パパを愛したのだ。
「なあ、お前。パパと言わず、ギルリアンと呼んでくれないか?」
「じゃああたしをお前と呼ぶのはやめてよ」
「・・・お前、名前教えてくれなかったじゃないか」
「そうだっけ??」
本当、そうだっけ?ですよ。
ようやく名前を教えて、あたしはギルに名前で呼んでもらって、うん。
やっと夫婦になれたんだ、そう思ったのでした。
息子の家族に、面倒を見てもらうような歳ではない。ばあばと言わせてなるか。
ギルも、もう国の為にすることはしたと、引退です。
あたしとギルは、のんびりと国内行脚と洒落込むのでした。
ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。連載もあるよ!
どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/users/476191




