04.第1ゲーム③:ルール説明
ルール説明回です。
ストーリーはあまり進みません。ご了承ください。
(第2ゲーム目からが本番です)
「『チャージフレーム』……?」
「そ。よーするに、各ゲーム初めの3フレームは妨害魔法の使用が禁止されてるの」
第1ゲームも終盤となる中、俺はいまだ魔法ボウリングの独自ルールが理解しきれず、サラから借りた『よくわかる! 魔法ボウリング入門』なる本とにらめっこしていた。
ちなみに現在控えベンチにいるのはキノアと俺だけ。
サラは飲み物を買いに席を外している。
通常のボウリングなら、この間次の投球者がボールを投げて待っていることが多いが、魔法ボウリングでは妨害戦術があるため勝手に試合を進めるのはマナー違反らしい。
というわけで現在は一時休戦となっている。
「さっき魔法の使用にはスコアを消費するって言ったでしょ?
だから各ゲームの序盤、第1~第3フレームは魔法に必要なSPのチャージに専念する期間って、ルールで決まってるワケ。
で、第4フレーム目以降からSPを消費しての妨害・補助魔法でガンガン戦いつつ、スコアを競い合う、ってのが魔法ボウリングの大きな流れね」
「いや、そういう大事なことは先に言えよ……」
ルールを確認しなかった俺が悪いのかもしれんが……いやでも普通確認しなくね?
「ボウリングやろう」って誘われたら、実はボウリングを使った魔法バトルでしたとか、考えつくわけないだろ。
「あとSPの計算方法だけど、ちょっと気をつけた方がいいかも」
「計算方法?」
「んー例えばさ、こんなスコアを取ったとするじゃん?」
言いながら、キノアは人差し指に魔法の光を宿し、空中に表を書いた。
キノア
8◢|7-
17|24
これはつまり、
第1フレームで「一投目:8本、二投目:2本」、
第2フレームで「一投目:7本、二投目:0本」を取った状態だ。
一方、下段の数字はスコアを表わしている。
第1フレームは10本倒しきったから10点、プラス、スペアの効果で第2フレーム一投目の7点も加算され、「17」点。
第2フレームでは7本倒したので、さらに7点追加で「24」点になっている。
「さて問題。このときSPを2消費する魔法を使ったら、スコアはどうなるでしょう?」
「そりゃあ、スコアを2引くから……第2フレームの「7」が「5」に変わって、総合点は20か?」
「と思うじゃん? でも魔法ボウリングのルールだとこうなるの」
8◢|5-
17|22
「あるいは、こう」
6◢|7-
15|22
「……んん? なんか違和感あるな。どっちも上下段で計算が合ってないし……」
「お、鋭いねヨウ。
実はさっき魔法にはスコアを消費するって言ったけど、正確には“スコア表上段の数値”が魔法に使えるポイント――SP値になるの。
この例だと、魔法使用前のSPは8+7で15だね。
で、SPを消費したらその分総合点も減るんだけど、このときストライク・スペアで加点した分は変化しないんだ」
「あー……だから計算がズレてるのか。上段も下段も、引く量は共通で「2」なのな」
でもそれだと後で計算するとき混乱しそうだが……まあ細かいことはいいか。
計算は機械に任せて、スコア表は「上段の数値(SP値)」と「総合点」だけ注目すれば十分だろう。
「ちなみにSPはあくまで“スコア表上段の数値”だから、☒や◢みたいなマークはSP扱いされないから注意ね。
でももちろん、高い総合得点を取るにはストライク・スペアは不可欠! そこの駆け引きも魔法ボウリングの醍醐味なのさ!」
「……そういうことか」
ふむ……。少しずつこのゲームの性質が分かってきたぞ。
☒や◢を取り続ければ総合点は一気に伸びるが、SPは貯まらず魔法が使えない。
逆に7本とか8本みたいな倒し方だとSPは貯まるが、総合点の伸びは悪い。
純粋に多く倒せばいいってワケではなく、戦況や場面次第で頭を使う必要があるってことか。
となると……。
「第3フレームまでのチャージ期間中は、あまりストライク・スペアを取らない方がいいのか? 妨害が解禁されたとき、SPが溜まってないと不利になるし」
「そこはご心配なく。チャージ期間中は例外として、スコア処理も特別なので」
と、そこでサラの声。
「お、サラお帰り」
「結構かかったね。飲み物買うのにどこまで行ってたのさ」
「ごめんなさい、自販機を探すのに苦労したもので。はい、キノアさん」
「ん、ありがと」
サラから飲み物(オレンジジュース)を受けとったキノアは、お礼もそこそこに次の投球準備を始めてしまった。
続きの説明はサラに任せる気らしい。
「確かヨウさんは烏龍茶でしたね。はいどうぞ」
「おうサンキュ。んで、チャージ期間中は例外ってのは、具体的にどう例外なんだ?」
「それは実際スコア表を見ていただければすぐ分かると思います。
例えば私のスコアですが」
と、サラは正面モニターに映った自分のスコア表を指差した。
【第1ゲームスコア表(第7フレームまで)】
サラ
G-|5-|10-|☒ |☒ |G◢|9◢|
0| 5|15|35|55|74| |
ちなみに彼女の第1、第2フレームのスコアは初め「9-」「10-」だったが、その後魔法によりSPを14消費したため、「G-」「5-」に変化している。
またよく見ると、第3フレームまでの枠の色が他と若干異なっていた。
「第3フレームまでのストライクは「10-」と表記されてますでしょう?
この期間のストライク・スペアは純粋に倒した本数だけがスコアになりますの。
ストライク・スペア特有の得点加算はありませんが、SP値には反映されますので、ここでどこまでSPを“チャージ”できるかが勝敗の鍵を握りますわ」
「ああ、あれって機械のバグじゃなかったのか」
俺が説明を受けている間に、キノアは準備を終えボールを構えていた。
なるほどな。チャージ期間中は妨害魔法は使えずSPのチャージがメインで、総合点を伸ばすのは妨害と☒・◢の解禁からってことか。
「なので全フレームストライクだった場合、フルスコアは240点になります。
と言ってもほとんどの試合は100点を超えるのが精一杯ですけどね。
相手にもよりますが、130点程度を維持できればまず負けはないかと」
「ふぅん、その辺の得点感覚は普通のボウリングと違うんだな」
「そうなんですか? 確かに妨害がなければ200点超えも不可能じゃありませんが。
…………失礼、《水沫壁》っ!」
突然、会話を切ったサラが立ち上がり、妨害魔法を展開した。
いつの間にか投げていたキノアの《火球》に、水流の壁が立ちはだかる。
「……ちぇっ、気づいたか。《炎暴》!」
「甘いですわね、《蒸気搦手》!」
ボールの火力が瞬時に増大し、水壁を蒸発させる。が、瞬間、サラの目が光った。
多量に発生した蒸気がボールを絡め取ろうとする。
「ふふ、残念でしたわねキノアさん。力づくで突破できると思ったら大間違い――」
「《加速》! からの、《魔式道》!」
「っ!? させません、《障壁》!」
「《防御破壊》! 間に合えぇっ!!」
そこでキノアのボールが急加速。蒸気の捕縛から脱出する。
続けて魔法のレールを作り出し、その上を通ってボールがピンに向かう途中、サラがピン手前に防御魔法を張るも、キノアの解術魔法が間一髪でそれを破壊。
そして勢いを保ったままボールがピンに突っ込み――10本すべてを蹴散らした。
「ぃよっしゃぁぁああっ! ストライクいただきっ!」
「……やられました。まさかキノアさんの突破力がここまでとは……。
っと、すみませんヨウさん。話の続き、なんでしたっけ?」
「いやもう話とかどうでもいいから。まずいろいろツッコませろ!」
とりあえず、これだけは言わせてほしい。
ボウリングってなんだっけ?
「大げさだなぁヨウ。この程度で驚いてちゃ、あと残り2ゲームも持たないよ?」
「まだこれ以上暴れる気かよ!?」
だがキノアの言うとおり、ボウリングとは名ばかりの魔法バトルはこのあと第1ゲームの終わりまで苛烈を極めたのだった。
え? 俺の成績?
もちろん、元からボウリングが得意な上に、ルールもきちんと覚えたんだから、
「《強制歪曲》!」
「《側溝誘導》です」
「ああああっ!? ようやく☒取れたのにぃいっ!!」
そりゃあもう見るも無惨にボッコボコでしたとも、ええ。
【第1ゲームスコア表(最終結果)】
キノア
G-|G-|G-|☒ |G◢|☒ |G◢|☒ |6-|9◢☒|
0| 0| 0|20|33|53|65|84|90|110|
サラ
G-|G-|G-|☒ |☒ |G◢|G◢|☒ |6◢|G◢☒|
0| 0| 0|20|40|59|70|90|97|117|
ヨウ
G-|G-|15|7◢|G9|53|G-|☒ |G-|⑧1 |
0| 0| 6|16|25|33|33|43|43| 52|
【第1ゲーム目結果】
1位:サラ 2位:キノア 3位:ヨウ
【勝ち点】
キノア:1
サラ :2
ヨウ :0
スマホで読んでいる方は、スコア表は画面を横にして見ることをおすすめします。
(縦だと入りきらない場合があるので)




