03.第1ゲーム②:洗礼という名の暴力
※スコア表について
マーク・数字は以下を表しています。
☒:ストライク、◢:スペア、〇&数字:スプリット
その後もゲームは順調(?)に進んでいった。
俺が慣れないボールの制御に四苦八苦する中、キノアとサラは着実にスコアを伸ばしていく。
そして、ようやくコツをつかみ始めた矢先、第5フレーム目、俺の番。
ゲームが一気に動き出した。
【第1ゲームスコア表(第5フレーム途中まで)】
キノア
10-|9-|⑧1|☒ |7◢|
10|19|28|48| |
サラ
9-|10-|10-|☒ |☒ |
9|19|29| | |
ヨウ
G-|G2|15|7◢| |
0| 2| 8| | |
スコア画面を見ると、機械のバグだろうか。
なぜか第1~第3フレームの☒が反映されていないようだ。
まあどうせ俺はストライク取ってないし、あえて気にしないけど。
それよりも、今は自分の次の投球だけに集中する。
なぜなら俺は第4フレームで、不格好ながらなんとか◢をもぎ取ることに成功したからだ。
ボウリングのルールでは、◢をとるとその次の第一投で得られた点数は◢を出したフレームにも加算される。
要するに、今から投げる一球は得点計算が実質二倍になるってことだ。力を入れずにはいられない。
背後で固唾を呑むキノアとサラ。
俺は二人の気配を意識から外し、一息に足を踏み出した。
さあここが勝負どころだ! 一球入魂!
「《風射》っ!!」
得意の風魔法をボールに込め、全力で投げ出す。
ボールの回転は旋風を生み、勢いを増してピンに迫る。
感触でわかる。これは……イッタ! 間違いない、今度こそストライクを!
と、そのとき、
「今だっ! 《側溝誘導》ッ!!」
背後からキノアの声が飛んできた。
それと同時、強力な魔力がレーン上を駆け抜ける。
結果、一体どんな魔法が発動したのか。
まっすぐ転がっていたはずのボールは、突如直角に曲がってガターに転落した。
「へへーんやったね! 妨害大・成・功☆」
「ってうぉおぃっ!? 何しやがったんだキノアぁぁああっ!!」
「何ってもちろん妨害魔法だよ。
《側溝誘導》。自分のスコアポイントを2消費して相手のボールをガターに誘導する技さ!」
「さ! じゃねえよ! てかスコアを消費する魔法ってなんだよ!」
「だから、あれ見なよ」
と、キノアが指差すスクリーンに目を向けると、確かに彼女のスコア表、その第1フレーム目に変化があった。
【第1ゲームスコア表(第5フレーム途中まで)】
キノア
8-|9-|⑧1|☒ |7◢|
8|17|26|46| |
「いや自分のスコア落としてまで妨害するなよ! 嫌がらせか!? 嫌がらせのつもりかっ!?」
「文句言うなよ~。ボウリングってそういうゲームじゃん」
「初めて聞いたわ! もはやボウリングの名を騙った別ゲーだろこれ!」
「落ち着いてくださいヨウさん。魔法ボウリングでは相手の妨害やその防衛とかもルールで認められていますよ」
…………マジかよ。
ルールに則っていると言われては、これ以上突っかかるワケにもいかない。
要するに「妨害を許したおまえが悪い」ってことなのだから。……釈然とはしないが。
にしてもせっかくのスペアが……! スクリーン上に新たに書き込まれた「G」の文字が恨めしい。
……二投目で気持ちを切り替えるか。
結果はガターだったとはいえ、先ほどの軌道は完璧なコースだった。魔法の制御に慣れてきた証だろう。
この投球で感覚を完全に会得したいものだ。
「さっきと同じイメージで……いけぇっ!」
今度こそ、風を発生させながら転がるボールは、先ほど通るはずだった軌道をたどり。
見事1ピンも残すことなく、すべて倒しきった!
だが、
「っしゃ! 文句なしのスペア!」
「甘いですね。《復活》!」
間髪入れず、サラが魔法を発動。
何も残っていないレーンの先で、倒れたはずのピンが1本、生き物のようにぴょこっと立ち上がる。
そしてスクリーンには、◢マークではなく「9」の文字が!
「なんでじゃぁぁああああっ!!」
「ダメじゃないですかヨウさん。邪魔されたくなかったら《防衛》の魔法でレーンに結界を張らなきゃ」
「知 ら ね え よ! つーかなにおまえら! 俺になんか恨みでもあんの!?」
俺のツッコミに、キノアとサラが目を合わせる。
そしてあっけらかんとした態度で、
「だって、負けたら罰ゲームもあるわけだし」
「見たところヨウさんって、普通のボウリングなら結構な腕前でしょう? ですから」
「「ルールに慣れていないうちに徹底的に潰しておこうかと思って(思いまして)」」
「鬼畜かおまえらっ!!」
二人からの手厚い歓迎に、涙が止まらない!
【第1ゲームスコア表(第5フレームまで)】
キノア
8-|9-|⑧1|☒ |7◢|
8|17|26|46| |
サラ
8-|10-|10-|☒ |☒ |
8|18|28| | |
ヨウ
G-|G2|15|7◢|G9|
0| 2| 8|18|27|