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op. 神様は世界の全てを知っている。

新連載です。

前に投稿していた「アルテミシアのくじら植物園」を大改編したものになります。

よろしくお願いします!

 金銀の星達はいつもよりずっと近いところにあって、手を伸ばせば届きそうだった。綿菓子のような雲は、既に自分の真横を流れている。このままもっと高く、高く飛んで。そうしたら、彼方で瞬く星を抱くこともできるかもしれない。


「ねえ、そう思わない? アル」


 小枝のように細い脚をぷらぷら揺らす少女が、鮮やかな緑柱石エメラルドの瞳で遥か上空を見ながら問いかける。


「いくら高く飛んだとしても星には届かないと思うよ、ミーシャ」


 アルと呼ばれた少年の声が聞こえるのは、()()()()。彼の声はいつも通りで、ミーシャ――もとい、アルテミシアは少しつまらない。


「もしかしたら、行けるかもしれないじゃない。私とアルなら」


 腰掛けた合歓の木に咲く綿毛のような薄紅の花を手に取り、アルテミシアは囁く。


「どこにだって行けるわ。そこに、エリュシオンがあるのなら」


 雲散らしの風が吹く。膨らみかけた弦月の銀光に、陽だまりをそのまま紡いだかのような彼女の金髪が煌く。

 未だ明けぬ東の空を見つめ、アルテミシアは強い決意のこもった声で呟いた。


「私はエリュシオンに帰らなきゃ。たとえ何があっても、どんな状態になっていたとしても、あそこが私の居場所だから」


 星降る夜の空、巨大な一頭のクジラが小さな少女の決意を乗せて泳いでいく。長い長い道のりの、その向こうへ。

 全てを知っていると伝えられる神様。けれど彼らの旅路の果ては、未だ神様も知らないこと。

 世界の誰も知り得なかった、――これは、彼らの物語だ。


 思いを尽くした小さな少女と、彼女を支えたクジラの少年の、彼らのための物語だ。



                        * 


 ”それは、世界の始まりの物語。

 

 この世界の一番最初に、一人の神様がいました。

 彼女の名前はティルテリア様。

 天の玉座にて世界を見つめる、とても美しい女神様です。

 

 彼女はこの世界に魔力という不可視のエネルギーを生み出して、それでもって世界の全てを記録することにしました。

 

 世界に生み出された生物と無機物、知識と技術と記憶の全ては魔力に記述されているといいます。

 

 今もなお、魔力は世界の全てを記録し続けているのです。”

 

 ――ホーラノア大陸中央局「天空塔情報誌」の序文より抜粋。

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