086 新たな旅立ちⅥ
「あ、うん……。お前がそう言うなら……」
裕也は二葉から言われると、それ以上の事は言わなかった。
「それにしても一花はいつ戻ってくるんでしょうね」
「行先も聞いていないのか?」
「はい。あの子は何も言わずに怒ったまま出て行きましたから……」
「それって……俺は明日になれば全治一週間とかなっているんじゃないよな?」
「それどころか、一ヶ月じゃ済まなくなっていると思いますよ」
「マジかよ……」
三久が微笑みながらそんな物騒な事を言うと、裕也は苦笑いをする。
「まぁ、一花の事は置いといて……明日、急だがセントラルに向かうぞ」
「分かりました。それで次はどんなことをするんですか? また、暴れるんですか? 厄介ごとを持ち込むわけではないですよね?」
「なんで俺が厄介ごとを巻き込んでくるような言い方をするんだよ……」
「だって、そうじゃないですか。いつもどこかの街に行くたびにいろんなことに巻き込まれるんですから……」
「あはは……。言い訳できねーぜ」
裕也は今までの旅の事を思い出しながら反論が無いと思った。
「じゃあ、一花が帰ってきたら謝るよ。その時は教えてくれ……」
「分かりました。くれぐれも死なない程度に明日を迎えてくださいね」
三久にそう言われて、裕也は部屋を後にした。
× × ×
翌日――――
ウエストシティ中央駅構内――――
セントラルに向かう列車は二番ホームに停車していた。
裕也達はその中の三番目の車両に乗っていた。
発車するまで後少し時間が残っている。
窓側の席に座っていた裕也は、なぜか体のあらゆる所に包帯を巻いていた。
「いてぇ……」
「我慢してください。動いたら包帯が巻けないでしょ!」
「しょうがないだろ。痛いものは、痛いんだから……」
発車するまでの時間で、裕也は三久に怪我したところを処置してもらっていた。
昨日、夜になった頃に帰ってきた一花に謝ったところ、最終的にこうなった次第である。