084 新たな旅立ちⅣ
「はぁ？ 何がもう少しなんだよ……」
裕也は窓から下を見下ろして、少し笑みを取り戻した。
思わぬ偶然に会ったリサが、残していった言葉の重みが一つずつ残っている。
もしかすると、姉弟子はわざわざここに会いに来てくれたのかもしれない。
そう思うと、可笑しくて笑ってしまいそうだ。
そんな器用な真似が彼女にできるわけがない。
「さて、リサ姉の言う通り、あいつらに謝りに行くか……」
と、裕也は部屋を出ようと一歩目を踏み出すが、なぜか、足が止まる。
――――一週間、ずっと引っ込んでいた俺にあいつらが簡単に許してくれるとは思えねぇ。
――――それよりも殺されるんじゃないのか？
――――二葉はそこまでないが、一花の蹴りや殴りは痛いからな……。
――――はぁ……。明日、生きているといいな。俺……。
裕也はそう思いながら重たい足を動かして、同じ階に泊まっている三つ子の部屋へと向かった。
「おい、誰かいるか？ 俺だ。扉を開けてくれ……」
扉をノックしながら叫んだ。
すると、扉が少し開き、隙間から三つ子の誰かの顔が現れた。
「誰ですか、あなたは？」
「いや……その……すまなかった……」
「何が済まなかったのですか？」
質問攻めにあう。
「あー、一週間引きこもりだったり、色々と馬鹿な事をしていたことかな……」
扉が開き、三久が姿を現す。
「本当にそうですね。一人で考え込んで、一人で全てを抱え込んで、一人で落ち込んでいた。本当にあなたって言う人は、馬鹿ですよ。いいえ、大馬鹿者です。そして……私も大馬鹿者ですよ」
三久は深々と溜息をつく。
「立ち話もなんですし、中に入ってください」
「ああ」
裕也は部屋の中に入った。
部屋には三久の他に二葉がいた。一花はどこかに行っているようだ。
裕也はなぜか、ひとまず安心していた。
暴力を受けずにすんだのだ。
「それで、あの人に何か吹き込まれたのですか？」
