074 咎人の罪Ⅳ
三久がそう言うと、裕也は小さく頷いた。
数日間鎖手錠に繋がれた裕也の手首は、少し痕が残っていた。
ロクにまともな飯を食べずに外がどんな状況になっているのかも分からずまま、この地下深くにあるこの場所は薄暗い電気とたまにネズミやゴキブリが床を走り回っている。
その上、魔法も錬金術も一度たりとも使おらず、体がなまっている。
「中将、すべて整いました」
三久が裕也の鎖手錠を壁から放し、牢獄から引きずり出すと敬礼する。
「よし、中尉はそのまま昨日案内された祭壇に彼を連れて行きなさい。私は教主様と一緒に後で向かう。逃げられぬようにしっかりと見張っておくのだぞ!」
「はい」
短くはっきりと返事をして、三久は裕也を連れていく。
「さて……教主様、少し私とお話をしませんか?」
総司はマーロスと二人っきりになった地下牢で静かに殺気を漂わせた。
アルブレヒト教会四階・神の聖域――――
祭壇があるこの部屋は広く、天井が高い構造になっており、祭壇がある中央のステージの上には錬成陣と魔法陣が書かれてあり、目の前にはガラス張りの透明な大きめの窓があり、そこから月の光が射し込んでくる。
祭壇の周りには関係者である軍の幹部が四、五人、儀式が始まるのを心待ちに立っていた。
――――ここが例の祭壇がある部屋か。
――――軍の連中が……なるほど、魔導士が一人、錬金術師が一人か……。
裕也は三久の後ろを歩きながら祭壇に上がり、錬成陣と魔法陣が重ね合わされた陣を見た。
相当高度な技術によって作られ構築された陣であり、裕也は息を呑み込む。
――――おい、これを奴らが創りだしたって言うのかよ……。
その隣で心配そうに見つめる三久は溜息を漏らす。
――――総司さん、本当にこれで大丈夫なんですか?
ちらちらと、何も言わずに堂々と立っている軍人を見るたびにこれがバレないか緊張が走り、心臓の鼓動が速く感覚がする。
――――大丈夫だと思う。たぶん……。
二人は総司とマーロスが来るまで祭壇で待ち続けた。
総司とマーロスの二人しかいなくなった地下牢――――
総司は柵に寄りかかって、腕を組みながら右足を上げて、後ろの柵に重心を傾ける。