073 咎人の罪Ⅲ
二葉は新聞を畳みながら一花といがみ合うのが面倒くさそうな表情をし、少しずつ冷えていく紅茶を飲む。
そう言われると、三久は黙って椅子に座り、サンドイッチ無言で食べる。
二人の雰囲気に温度差があり、話が全く続かない。
感情的になりやすい一花とほとんど無口の二葉。
三久がいないと、二人の会話はいつも通りになれない。
「二葉、時間までどこか行かない?」
「どこに?」
「ここ周辺をぶらりと歩かない?」
一花がそう提案すると、三久は数秒間考え、小さく頷く。
「分かった……。でも、もう少しだけここでゆっくりとしていたい」
「そう……。それなら少ししたら行くわよ」
「うん……」
一花はなぜか頬を赤らめて、空を見上げた。
× × ×
午後九時二十分前――――
アルブレヒト教会・地下牢――――
「さあ、時間だ。炎の魔導士、祭壇に一緒に来てもらおう。中将殿、祭壇までよろしくお願いしますぞ」
「分かりました。私がしっかりと連れてきますのでどうかご安心ください。中尉、彼の鎖手錠を慎重に解除してくれ。くれぐれも気を付けろよ」
「は! 分かりました!」
中尉に変装している三久が、仮上司である総司に敬礼をした。
三久が裕也の鎖手錠を解除している間、総司はマーロスと話をする。
「教主様、儀式の開始時間は午後九時でよかったのかな?」
「ええ、彼が生きるのも残り二十分というわけですよ。いやー、これも軍の助けがあってのものです」
「いえいえ、我々はただ、この三原則の向こう側に興味があるのです。では、先に教主様はご準備をしてください。すぐにこの者を持ってくるとしましょう」
総司が話をしている間、三久が裕也の鎖手錠を解除している時に小声で話をし始めた。
「何も言わずにただ聞いていてください。儀式が始まる前に私たちが動きます。裕也君は、その動きを察して、マーロスをお願いします。いいですか、くれぐれも怪しまれるような行動をギリギリまで控えておいてください」