055 ウエストシティの内戦XVIII
「どうやら、苦戦しているのは俺の方らしいな……」
裕也は戦いの中で笑いながらマーロスを見る。
手首につけてあるブレスレットが赤く光っている。
そのブレスレットは生きているかのように中で何かが心臓のように動いている。
「なぁ、そのブレスレット綺麗だな」
「ほう、このブレスレットの価値が分かると?」
「ああ、もちろん。それが賢者の石だろ? それに今の魔法はただの衝撃波。それを作り出したのがその賢者に石ってわけだ」
「なるほど。これが賢者の石であると……。だったら、賢者の石と黒魔法の力、じっくりと味わうがいい!」
ブレスレットが赤く光り、近くにいたウェスト形が変形していく。
「やばっ!」
人から四体の獣に変形し、四方を囲まれる。
そして、獣の口から黒い光が輝き、裕也に向ける。
黒魔法だ。
死を呼ぶ黒魔法は、どんな命でも奪い去る。
「私の僕達よ、解き放て! 黒き死の魔法!」
マーロスが叫ぶと同時に獣たちから黒魔法が裕也に向かって解き放たれる。
――――おいおい、黒魔法は完成していたって言うのかよ!
錬金術と魔法を同時に発動させ、地面から自分たち位置を石の塔を創りだし、火の魔法を四体の獣にぶつける。
だが、獣たちの素早さは尋常ではなく、あっという間に攻撃を避けきる。
裕也は石の塔から飛び降り、そのままマーロスに近づく。
だが、近づく前に視界が次第に暗くなっていく。
――――えっ‼
足が鉛のように重く、動きが二部なっていくのが分かる。
「一体何をした……」
意識を保つのがやっとで、マーロスを睨みつけながら訊く。
「ふふふ……。ようやく毒が回ったみたいだな」
「毒だと?」
「そうだ。君が右腕で庇った時、魔法と同時に毒を放っていたのだよ」
「なるほど。それで傷口から毒が体内に入ったわけか……」
「大丈夫。死にやしない。君は私にとっていい研究材料だからねぇ。大切に扱わせてもらうよ」
「くそやろ……が……」