049 ウエストシティの内戦Ⅻ
「意外と近いな。向こうが近づいてきているというよりも俺達の方が近づいて行っているって言った方が早いな」
「どういう事?」
「つまり、奴は俺達が向かう目的地周辺にいるって事だ。見てみろ。俺達は動いていないのに向こうの発信機はこっちに移動している様子が無いだろ? それにさっきから耳から電波をキャッチして盗聴しているんだが、なかなか聞こえづらいんだよ」
「それは地下だからじゃないの?」
「あ、うん……。そうだな」
裕也は二葉に機械を返して、再び歩き出す。
天井を照らすと、光に当てられたコウモリたちがびっくりして飛び回る。
地図の方向だともう少し北西に進めばたどり着くルートになっている。
だが、近くまで来ているのに教会に繋がる通路が一向に見つからない。
腕時計を確認すると、午前九時ちょうどを指している。
「やばいな……」
「どうしたの?」
「教会に繋がる道が無い……」
「え?」
「地図は正確で俺が歩いているところも間違ってはいないんだが、どう歩いても教会にたどり着く道が一つもないんだ」
「それって、錬金術で道が塞がれているとかそういう事じゃないの?」
「それだったら今頃その残りに気づいている。錬金術と言ってもその後が残るものだ。だが、その後すら残っていない。だったら……壊すか、この壁ごと」
「やめなよ。こんな事でもしたら……」
二葉は壊そうとする裕也を止めにかかる。
「嘘だ。そんな事でもしたら地盤沈下して、俺も二葉もあの世行きだ」
「良かった……」
二葉はホッとする。
――――ま、俺一人だったらやっていただろうけどな……。
と、裕也は心の中でそう思った。
水の流れも壁の感触のどこにも不自然さは残っていない。
――――どうなっている。どこもおかしい所が無いのはおかしすぎる。確かにこの設計図には教会へとつながる道が記されているはずだ。なのにどうしてたどり着かない。
「仕方がない。作戦変更するぞ。ここの近くの穴から地上へと抜けだす。そして、近くの店でこの街の住人に変装できる服に着替える」