045 ウエストシティの内戦Ⅷ
「いえ、すみませんでした……」
「そうか。本来、二葉だけにがしたいところだが不本意ながらも主であるこいつの頼みだ。お前も特別に逃がしてやる」
「へいへい、それはどうも……」
「うれしくないのかぁ?」
「いいえ、それはもう感謝しております。はい、うれしいですとも」
銃口は裕也の額にピッタリとつけ、引き金を引けば一瞬で死ぬ。
スナイパーやガンナーは決して心臓を狙わない。心臓を狙えば、打たれた人間でもせいぜい十秒弱は生命活動があり、その間に相打ちになってしまう可能性が高くなる。
だから、眉間より少し上の額、つまりは脳を貫けば、人間は一発で活動停止となり、死亡するのだ。
「さて、ここから抜け出したいのは大体カードの向こう側で聞いていた。あの男から逃げ切れればいいのだろ?」
「できるのか?」
「私は魔術師だ。こんなの容易く抜けられる。さすがにこの建物に穴をあけるわけにはいかない。つまり、男の前を通って逃げなければならないとするならば、透明海外に他が無いだろ?」
「透明化。その手があったか……」
「それに奴派まで気づいていない。二葉、私の合図に合わせて先に出るぞ。貴様は私の魔法をかけた後、自分一人で来い」
「分かった。マーキュリー、ありがとう」
「例には及ばん」
二葉はマーキュリーに礼を言うと、恥ずかしそうに目を逸らしながらまだ、不服そうな表情をしている。
「じゃあ、透明化の魔法をかけるぞ。トランスペアレント」
マーキュリーの魔法によって二人の体は次第に透明になり、姿形が無くなり、マーキュリー自身も姿を透明化にさせた。
「言っておくが魔力の方までは隠すことは出来ない。そこのところは慎重に外に出ろ。二葉、私の手を握れ。タイミングを計って一気に外に出る」
マーキュリーは二葉の手を握り、呼吸を整えてその瞬間が来るのを待つ。
扉の向こうに来客してくる人物がいる。
「カウントダウンに合わせて走る。三、二、一……」
と、カウントダウンした後、いきなり手を引っぱり一直線に扉の前までたどり着くと、扉が開くと同時に二人は店の外に飛び出す。
勢いのあまりそのまま道端に倒れこみ、すぐに立ち上がって店の向かい側の建物の陰に隠れる。