041 ウエストシティの内戦Ⅳ
「二葉、食事は外で食べるぞ。それが終わり次第、すぐに行動を始める。支度を十五分以内に終わらせられるか?」
「分かった。すぐに準備する。何か必要な物は?」
「それはこっちで準備しておくから必要ない」
「分かった。すぐに準備しておく……」
二葉はそう言って、左手を上から下にスライドさせ、今日着る服を取り出す。
「おまっ‼ 着替えるなら俺の見えないところで着替えろ‼ そこにバスルームがあるだろう。そっていで着替えてくれ」
「う、うん……」
二葉は小さく頷くと、そのままバスルームに行った。
――――賢者の石は赤く、その形態は様々だったな。俺が知っているのは石か……。
賢者の石は不老不死、つまりは死者を蘇らせることができ、永遠の命を得ることができる。
黒魔法は死の魔法と呼ばれ、全ての命を奪い去る魔法。終わりの魔法と呼ばれている。
白魔法は全てのものを無とし、全ての命を生まれ変わらせる魔法。始まりの魔法と呼ばれている。
だが、多くの錬金術師、魔導士がこの研究を長年続けてきたが、解読できたのはここまで。
そもそも三つの関係性が『命』であることは限りなく適合しており、そこから先に何があるのかも分からない。
この三角関係を軸とし、限りある可能性を挙げるとするならば生命の樹。
生命の樹は、旧約聖書の創世記にエデンの園の中央に植えられた木として知られている。命の木とも訳されており、生命の樹の実を食べると、神に等しき永遠の命を得るという言い伝えがある。
だが、それは一つの仮説であり、真実、真理ではない。
「この街で一番大きい教会は、アルブレヒト教会か……」
裕也は地図を確認すると、潜入するためのルートを考える。
――――本当だったら三久に色々と手伝ってほしいところだったが、今は仕方がないか。
――――二葉には、後で色々と仕掛けてもらうとして、この教会の教主とウエストシティ司令部が手を組んでいるという噂があったよな。
アルブレヒト教会の教主とウエストシティ司令部の大佐レベルの軍人が手を結んでいる話を前々からデミトロフ大佐から聞いていたのだ。
つまり、禁忌に触れている可能性は大であり、危険である。
――――群に見つからずにさっさと終わらせれば楽なんだけどな……。
――――大佐、せめて誰かをこちらによこしてきてくれれば人員不足は解消されるんだが……。
裕也は準備を終えると、装備した必需品をもう一度確認しておく。