035 三年後の世界Ⅻ
男はアルカナに訊く。
「いいのよ。楽しみは後に取っておいた方がいいじゃない?」
「そうだな。獲物は一匹ずつより一気に狩った方が面白いと言うからな……」
「じゃあ、またどこかで会いましょう。ジョン・デミトロフ大佐」
二人は闇の中へと消えていった。
「待て! 貴様らには訊きたいことが!」
デミトロフが叫んだ頃には、二人の姿はどこにもいなかった。
辺りは静かで凍える風が吹いており、デミトロフ以外誰もいない。
「ちっ、奴らが動き出したか。急いで戻らなければ!」
デミトロフは中央司令部に向かって走り出した。
早く戻って、彼らの対策を立てなければならない。
ウエストシティの事は、裕也に任せておけば何とかなるだろうと思った。
――――なんで、こんな時に限ってこう易々と立て続けに厄介ことが起きるのだ!
デミトロフは、夜の街を駆け抜けていった。
デミトロフと連絡を取り終えた裕也は、一度部屋に戻った。
「ただいま……っ!」
裕也が部屋に戻ると、三つ子が揃って一階の浴場から戻っていた。
三人とも髪を下ろしており、同じ服を着ていた。
やはり、三人揃って同じものを身に付けて、同じ形をしていると見分けが付きにくい。
「ええと、お前、二葉だろ?」
目の前にいる一人に訊いてみる。
「違います。三久です。いつになったら三人の見分けが付くんですか……」
「え? お前三久だったのか? じゃあ、お前が二葉か?」
「違うわよ。一花。髪の短さを見ればすぐに分かるでしょ!」
と、椅子に座り鏡を見ながら櫛を使って髪を整えていた。
「私ならこっち……」
いつの間にか三人目の同じ顔が隣に立っていた。
「おお、こっちが本物か……」
「それで何の用?」
「ああ、後でエミリー大尉と会った時の事を話してくれるか?」
「うん。分かった……」
「じゃあ、俺は風呂に行ってくる」
裕也はそう言い残すと、部屋から出て行った。