034 三年後の世界Ⅺ
「誰だ! そこにいるのは分かっているぞ!」
デミトロフは右手を握りしめ、左手に添えて構える。
「流石、氷結の魔導士。感は鋭いらしいわね」
と、暗闇から一人の女が出てくる。
「貴様は……」
「お久しぶりね。一年前くらいかしら?」
「やはり、生きていたのか……アルカナ」
デミトロフは険しい顔をしながら目の前にいる女を改めて睨みつけた。
漆黒に染まった黒長髪に魔女がかぶっている帽子、黒のドレスに黒の長めの手袋、黒ニーソに黒靴。
女はゆっくりとデミトロフの方へと近づいてくる。
「デミトロフ、あなたはこんな所で何をしているのかしら? 後ろ、危ないわよ?」
「何ぃ!」
一瞬後ろを振り返ると、襲い掛かってくる男がいた。
「氷の盾!」
床から氷の盾が飛び出した。
「それくらいで俺が倒れるかよ」
男はデミトロフの氷の盾を蒸発させ、そのまま接近戦に持ち込んでくる。
「ちっ、貴様も生きていたか!」
デミトロフは氷の床を造り、そのまま氷の道を滑り距離を置く。
「浄化の錬金術。面倒な奴が生きていたものだ」
男は女の隣に立ち、ニヤッと笑う。
男は鋼色のバンダナを撒き、黒の半袖に薄黒い緑の長ズボンを履いていた。
「氷と俺の浄化じゃ相性が悪い。ましてやこの錬金術は全ての物質を浄化し、気体や液体に変える」
「それでお前たちが現れた目的は……そうだろうな。互いに目的は同じって事か……。そのためにはここで俺を潰しておくか? いつでも相手になるぞ」
「いいえ、今日はそのために来たんじゃないわ。これから先、私達の邪魔をして欲しくないから忠告しに来たのよ」
アルカナはふっ、と笑い、そう言った。
「邪魔だと? 笑わせる。俺は貴様らの邪魔をした覚えはないけどな!」
「そう、あなたはそう言い張るのね。それならいいわ。だったら、近いうちに会いましょう? その時はもう少し力をつけておくべきね」
「アルカナ。こいつをやらなくてもいいのか?」