026 三年後の世界Ⅲ
「そう言えばこの街の住人の様子がおかしいのは気のせいじゃないよなぁ?」
「はぁ? あんた何言ってんの? そんなわけないじゃん」
一花は首を傾げる。
「いいえ、そうとも限りませんよ。今は安全かもしれませんがなんだか誰かに操られているというか、この街自体がおかしい気がしますね……」
「やはりそうか……。三久、これって魔法と錬金術、どっちだと思う?」
「そうですね……はっきりとはしませんが……。これは嫌な予感しかしません」
「だろうな。今日は早めに宿舎に戻った方がいいらしいな」
裕也が、最後の一滴まで飲み終えると、立ち上がった。
この三つ子を見分けるのに三年かかった。今では、一花は髪留め、二葉は背中の方まで伸ばしており、何も結んでいない。三久は腰の位置まで髪を伸ばしており、前髪を右斜めにして、ヘアピンで留めている。
三つ子の場合、潜入捜査や変装技術に特化しており、始めのうちはそうした情報収集に役立っている。
「それにしても大佐から話があった通りだな。それにしてもその当の本人は一体どこにいるんだよ。さすがにもう、この街にいるんだろ?」
「その事だったら手紙を預かってる」
二葉がポケットから手紙を取り出して、俺に渡した。
「いつからだ!」
「ええと、四日くらい前から……」
「誰に?」
「ほら、あの人の部下の綺麗な金髪の人」
「あの人か……。二葉、なんでこの事を早めに言わなかったんだ?」
「聞かれなかったし、忘れていたから……」
二葉、マイペースすぎる。これはいつもの事であり、いつになっても治らないのだ。
――――ったく、大佐もお使いを頼むならもっとマシな人をよこしてくれよ。なんで、俺に渡してくれないんだ? 二葉がこういう性格だと知っているだろうが!
裕也はそう思いながら封を開け、中身を開いた。
ごめん――――
「はぁ? これだけ?」
手紙にはたった一言だけしか書いてなかった。
「『ごめん――――』……って、他に掛ける言葉もねぇのかよ!」